表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/295

第73話 事件鎮圧へ

 テレビでは、午後9時のニュースを放送していたが、字幕スーパーで速報が流れる。”石川県五月雨(さみだれ)村の五月雨島で 爆発的火災が発生。広浦村長が自衛隊へ災害派遣要請。島民全37世帯へ避難指示。”

 ゴールデンウイーク中の交通安全に関する活動を取材したVTRが途中で止まり、映像はスタジオへ。冨貴(ふき) 一成(かずなり)キャスターはすぐに切り替え、

「速報です。石川県の五月雨島で、爆発的な火災が発生し、()()()()村長が自衛隊へ災害派遣要請を出しました。島民の全37世帯へ避難指示が出ています。繰り返します」

 と、字幕スーパーを繰り返して読む。キャスターの手元に、原稿が渡り、映像は北陸地方の地図になった。しかし、離島の五月雨島が見づらい。報道部が慌てて映像を切り替えているようだ。

 画面の下には、”速報 石川県五月雨(さみだれ)島で爆発的火災。全島民に避難指示”と出ている。

「五月雨島は、石川県の北西部に位置する離島で、37世帯が住んでいます。さきほど、その五月雨島で爆発的な火災が発生しており、全島民の37世帯に避難指示が出ています。また、五月雨村の()()()()村長が」

 そこまで読んだとき、スタッフの声で「こううら!」と訂正の声が入る。

「失礼しました。広浦(こううら)村長が災害派遣要請を出しました。新しい情報として、石川県知事も了承しているとのことです」

 テレビに映らない報道部は慌てて、次の字幕スーパーを用意して、スタッフが叫ぶ。「警視庁から、テロ事件の可能性あり。速報出します!」

 立て続けに、字幕スーパーで速報が流れる。今度は、”五月雨島の爆発的火災は テロ事件の可能性あり(警視庁)”と流れた。

 キャスターは、新しい原稿を受け取り、映像は地図からキャスターを映す。わかりにくい地図は不評だったみたいだ。

「現在お伝えしている、石川県五月雨島の爆発的な火災は、テロの可能性があると、警視庁が発表しました。繰り返しお伝えします。警視庁によると、石川県五月雨島で発生した爆発的な火災は、テロの可能性があるとのことです」

 再び原稿を受け取り、

「新しい情報が入ってきました。現場は、石川県五月雨島の五月雨民営キャンプ場。爆発の規模や被害についての情報は、まだ入ってきていません」

 ディレクターからのカンペで指示が出る。

「ここでお天気カメラの映像があるとのことで、そちらに切り替えます」

 画質の粗い映像に切り替わった。

「画面は、お天気カメラで港から五月雨島にズームした映像をお届けしています。拡大しているため、粗い映像となっていますが、一部が明るくなっており、黒煙と時々赤い炎のようなものが見えます」

 画面が切り替わり、スマホで縦向きに撮影された映像が流れる。左上に視聴者提供とテロップが出た。

「こちらは、五月雨島に住む視聴者からの提供映像です。島民がパニックになっており、爆発音や発砲音らしきものが聞こえます」

 さらに切り替わり、今度は写真である。同じく視聴者提供のテロップが出ている。

「こちらの写真は、キャンプ場への道路が警察によって封鎖されている様子が確認できます」

 ほかにも、島民がSNSに投稿した映像や写真を視聴者提供として、いくつか流す。報道部は、SNSでユーザーからの使用許可を取ったり、警察発表の情報を整理したりと、慌ただしく動いている。

「新しい情報です。石川県知事は、避難用の船を準備し、五月雨島へ向けて出港したとのことです。また、島民からの情報によると、現地には石川県警のほかに警視庁や特殊部隊のSAT、SIT、自衛隊を見たという報告があります」

 テレビの左側には、テロップで”引き続きニュースをお送りします”と出て、放送を延長する。


    *


 午後10時15分。港近くの公民館まで移動して、機材をセッティングする。

「まるで怪獣映画そのものですね……」

 と、鐃警が公民館のテレビを見ながら言った。

「警部も手を動かしてください」

 悠夏はテレビを見る余裕などなく、モニタにケーブルを繋げる。

 しばらくすると、榊原警部と藍川巡査が現れ、藍川巡査が

「ここのシャワー借りて良いですか……?」

「藍川巡査? どうしたんですか? 炭まみれで……」

 鐃警が驚いて言うので、悠夏が藍川巡査の方を確認すると、服も顔も黒い炭だらけだ。

「僕らの配置……。花火の廃棄用ボックスから近かったので、爆発の時に、諸に灰を被って……」

 すると、長谷警部補は

「お前らふたり、あんまり動くな。灰が機材に付いたら壊れるだろ」

「長谷警部補……。ひどいですよ……」

「玄関で落としてこい」

 と、長谷警部補は鞄からタオルを取り、悠夏に渡す。

「えっ? 私ですか?」

「他に誰がいるんだ? あいつはロボットだから、無理だろ」

 長谷警部補からタオルを受けとり、悠夏はため息をついて、

「わかりました」


 玄関でふたりの灰を、湿らしたタオルで落としているころ、パソコンを立ち上げて、警視庁とテレビ電話が繋がった。

「やっと繋がった……」

「長谷警部補。お疲れ様です」

 と、モニター越しの田口(たぐち)警視正は缶コーヒーを飲んでいた。

「現状について、紅警視長から報告があります」

 と言って席を立ち、紅警視長と交代する。

「被疑者……という言い方が正しいかは分からないが、現在SATが対処している。で、改めて今回の事件に関してだが、20年前の事件と同一犯であると考えていいのか?」

「当時の似顔絵を砺波(となみ)さんに確認してもらい、”そうかも”と言っていました。ふたりを救出する際に、捜査員が何人か顔を確認しており、我々もSITのスコープ越しの写真で確認して、似顔絵と似ていると感じました」

「それなら、同一犯で処理して問題ないだろう。本件は、テロ事件の疑いがあったとし、実行犯は焼死で決着させる。爆発に巻き込まれて焼死した、と。それと、朗報だ。県立病院から連絡があった。被害者の沢崎(さわさき) ふみが意識を取り戻したそうだ」

「女子中学生の……。それは良かった。もう1人は?」

「まだ連絡は無い」

「そうですか……」

「それと、もうひとつ。あと30分もすれば、港に船が到着する。おそらく、慌てて乗ろうとして、混乱することが想定される。2人ほど、指示を出せないか?」

「2人ですか……」

 長谷警部補は玄関の方を見る。ただ、あの3人は、まだ終わりそうに無い。


To be continued…


6月中に終わらず、もう少し続きそうです。いつまでゴールデンウィークが続くのか。

炭よりも爆風による被害はないのでしょうか……。投光器も何台か倒れて壊れてそうな気もしますが……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ