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第59話 渡川総合病院

 西阿波市駅で、リニアから四国縦断新幹線に乗り換え、高知駅へ。高知駅の改札口で、渡川(わたりがわ)警察署所属の佐川(さかわ)巡査と待ち合わせ、ミニバンで渡川市を移動する。佐川巡査は女性で、年齢は悠夏の2つ上らしい。

「ここからだと、どのくらいかかりますか?」

 2列目に座る鐃警が、運転手の佐川巡査に目的地までの時間を聞くと、

「だいたい1時間半ですかね。帰宅ラッシュの時間ギリギリですが」

 時計を確認すると午後4時前。東京から高知まで、リニアと新幹線で4時間もかかっていない。とはいえ、やはり飛行機の方が早いのだが。

「現状について、確認してもいいですか?」

 鐃警の隣に座る田旗(たばた)巡査が、前のめりに聞いてくる。

「警視庁で、どこまで聞いているのか分からないですが……、あらましは、吾桑(あそう)警部のところに、警視庁の田口(たぐち)警視正から連絡があり、『2名の警察官と連絡が取れないので、現場付近を確認して欲しい』と。吾桑警部と私と鑑識の入野(いりの)警部補が現場へ向かい、指示のあった周辺を調べました。犯人の潜伏先が近いとの情報もあり、時間をかけて警戒しながら捜査したのですが、残念ながら争った形跡や、犯人の潜伏先の建物から物音をはせず、警視庁へそう報告しました。ですが、今朝、住民からの通報で、負傷した榊原さんと、あと川喜多さんですかね? おふたりを総合病院へ搬送しました」

 思わぬ話に驚いたが、佐川巡査は話を続け、

「発見した場所は、捜索していたところから600から700メートルほど離れたところにある崖の下で、四万十川の河川敷でした。お昼ごろに、榊原さんが目覚めて、当時の状況を振り返り、その話によると……。真っ暗な中、川喜多巡査が誤って、転落しそうになり咄嗟に腕を掴んだけれど、そのまま転落したそうです。幸いなことに、河原の石の上ではなく、木々の生い茂った所だったので、大事には至らずに済んだみたいです」

 それを聞いて、ホッとしたが、かなり危なかったのでは……

「ただ、川喜多巡査は骨折しており、しばらくは起き上がれないかと。まだ目を覚まさないと聞いてます」

 悠夏は、川喜多巡査の痛みを想像し、

「それって、どの位の高さの崖から……?」

「おそらく、15メートルとかですかね。被疑者の潜伏場所から近いので、大事(おおごと)には出来ず、検証が出来ていません」

 佐川巡査の言う高さは、おそらく現地にいた人の目算だろう。正確には、もっとあるかもしれない。



 渡川(わたりがわ)総合病院。6階建ての病棟。入院している部屋があるのは5階で、4人部屋だった。しかし、患者は榊原警部と川喜多巡査だけで、残りの2つの病床は空いていた。

 扉を開けてすぐに、鐃警は

「お見舞いに来ましたよ」

「すみません。特課と……あと……、えっと、その方は?」

 榊原警部は田端巡査と面識が無いみたいだ。田端巡査は、一歩前に出て、

「組対五課の田端です。巡査です。宇野沢警部の下で捜査にご協力させていただいております」

「組対五課ということは、”廃忘薬”の件か」

「はい。そうです」

 と、返事して一歩下がり、もとの位置へ。佐川巡査の電話がマナーモードで震え、断りを入れて

「吾桑警部から電話ですので」

 病室を出て、携帯電話が使用可能な場所へと移動する。

 悠夏は、ベッドに座って元気そうな榊原警部を見て

「榊原警部。最初に聞いたときは、驚きましたよ……」

「いや、すまない……。ちょっと想定外なことがあって、油断していた」

「想定外ですか……?」

「結論から言うと、川喜多が物陰から飛び出した狸に驚いて、仰け反った。そしたら、滑ってそのまま転落しそうになり、慌てて腕を掴んだんだが、一緒に落ちてしまって……」

 榊原警部は説明の際、こちらに目を合わさずに、頬を掻いている。真っ暗な中で、物陰から飛び出してくるとなると、驚くのは無理もない。ただ、場所が悪かった。

 鐃警は少し怒るような表情で

「警視庁のトップから藍川巡査まで、皆がふたりのことを心配してたんですよ」

 まるで、藍川巡査が末端みたいな言い方だなと思ったが、言うのはやめた。そういう意図で言ったわけではないとも思ったから。

「それで、川喜多巡査は……?」

 向かいのベッドで眠っている川喜多巡査の話に。

「全治3ヶ月。医者が言うには、しばらくは松葉杖の生活だろうと」

 榊原警部によると、骨折は右脚らしく、奇跡的に他は軽傷ですんでいる、と。話し込んでいると、佐川巡査が急いで戻ってきて

「動きがあったみたいです。これから、急行して吾桑警部に合流します」


    *


 建物から出てきたのは若そうな男。右手にはランタンを持っており、歩き出す。

「どこへ向かっているのでしょうか?」

 具同(ぐどう)巡査は物音を立てないようにしながら、吾桑警部に確認を取る。

「付近の道端に、盗難車が1台放置されていた。その車に乗る可能性は十分にあるな」

「買い出し……ですかね?」

「警視庁と徳島県警からの情報だと、複数人グループだ。何人か建物の中に残っている」

「追いますか?」

「車で待機している香我美(かがみ)警部補に連絡しろ。赤野(あかの)巡査と盗難車の件で職質」

 交代で張り込んでおり、吾桑警部は待機組に任せるようだ。

 具同巡査は「分かりました」と言って、電話をかけても問題ない位置まで、足音を立てないように気をつけて移動し、電話をかけようと思ったが、ふとショートメールで問題ないではと思い、ショートメールで連絡する。少しして返信が無ければ、電話すればいい。二度手間だろうか……。



 ショートメールでで連絡を受けとった女性警部補の香我美は、すぐに”了解”と返信し、睡眠をとっていた男性巡査の赤野を起こし、車を発進させる。わざと、盗難車から見える位置にまで移動し、若い男性が車に近づくのを確認。

「職質かけるぞ」

 車から出て、若い男がこちらに気付いた。逃げる素振りはせずに、

「なんでしょうか?」

「ちょっと、お話を聞いてもいいですか?」

「はぁ。急ぐので、短くお願いします」

「この車は、あなたのもので間違いないですか?」

 会話は若い男と香我美警部補のみで、赤野巡査は黙って見守る。

「そうですよ。中古で買ったんです」

「なるほど。中古販売ですか。実はですね……、盗難届が出てまして。詳しく、お話を伺えないですか?」

「すみません。どちら様ですか?」

「申し遅れました。私は渡川警察署の香我美です。必要であれば、警察手帳を確認されますか?」

「ドラマでしか見たこと無いから、本物かどうか分からないですよ」

「では、渡川警察署に連絡して、私の名前を照会していただいてもかまいませんよ」

 自身の携帯電話で渡川警察署に連絡して、香我美という名前の警官が所属しているか確認しますかと提案したところ、若い男は諦めて

「で、どうすれば?」

「お名前と身分を証明できるものを見せていただけませんか?」

 若い男はポケットの財布から、運転免許証を取り出し、香我美警部補に渡す。

「お名前は、伊上(いがみ) 彰代(あきよ)さん。19歳ですね」


To be continued…


2話分書き終わって、気付く。またサから始まるキャラだと。無意識にも程がある。

登場人物の名前は、結構無作為に決めているので、そのときには気付かないという……

投稿前の振り仮名を振るときに、気付くことが多々。

架空の地名は、現在は無い昔の地名とかから決めています。西阿波市とか。今回だと、四万十川は昔(といっても、結構最近らしいが)、渡川という名前だったので、渡川市という架空の地名に。市だと存在しないので。まぁ、2話の伊下町といった例外もありますが。

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