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第286話 深夜の国道1号線

 2019年8月13日午前2時。警視庁より1台のパトカーが静かに出動する。東京都とはいえ、この時間は終電を逃した人が乗るタクシーやトラックが少し走っている程度で、交通量は非常に少ない。警視庁の目の前、国道1号線の桜田(さくらだ)通りを走り、皇居方面へと進む。国道1号線に沿って、皇居を反時計回りで走るつもりだ。地下鉄の桜田門(さくらだもん)駅がある桜田門交差点を右折し、皇居のお堀沿いに走る。この時間を走る皇居ランナーは数人程度。日中は日差しが強く気温も高いため、この時間に走る人もいるようだ。

 途中の祝田橋(いわいだばし)交差点は直進し、お堀の角まで走ると、日比谷(ひびや)駅がある日比谷交差点を左折する。左折レーンは交差点から少し離れ、常時左折可能である。左折するとき、目の前には建て替え中の(まる)(うち)警察署が見える。丸の内警察署は、狭く耐震性の問題から2017年から2024年まで建て替え工事中である。再びお堀を左手に、日比谷通りを進む。先程の交差点も日比谷駅だったが、次の交差点も日比谷駅であり、馬場先門(ばばさきもん)交差点を直進する。二重橋前(にじゅうばしまえ)駅近くまで走ると、交通量の少ない通りに、後方から2台の外国車が同じレーンの後方についた。直進は2車線、右折が1車線(交差点では2車線)なので、後続になるのは不思議ではないが。それに、パトカーを自然に左車線から追い抜くことや、並走するのを嫌がる人も多いだろう。

 信号待ちしている交差点を右折すれば、目の前には東京(とうきょう)駅が見える。こちらは丸の内側なので、有名な赤レンガの外観が特徴的だ。この時間でもライトアップされている。国道1号線は、次の大手町(おおてまち)駅がある大手町交差点を右折する。パトカーも四方を高層ビルに囲まれた交差点を右折する。対向車や横断歩道を渡る歩行者はいないため、確認だけ待つことなく右折。後続の外国車も2台続けて右折する。

 山手線(やまのてせん)東北新幹線(とうほくしんかんせん)などの高架が横切る(まる)(うち)一丁目(いっちょうめ)交差点を直進。パトカーが左車線に寄ると、後続の外国車も左車線へ。

 国道1号線が左折する日本橋(にほんばし)交差点で信号待ち。外国車2台のさらに後方、丸の内一丁目交差点で信号待ちをする2台の覆面パトカー。パトライトは出しておらず、偶然走るタクシーと共に一般車両として偽装する。

 日本橋交差点は、地下鉄の日本橋駅があり、左折すると引き続き国道1号線。右折すると国道15号線で銀座(ぎんざ)方面へ。直進すると都道10号線で茅場町(かやばちょう)門前仲町(もんぜんなかちょう)方面へ。

 信号が変わり、パトカーと後続の外国車が左折。目の前には国道1号線の起点となる日本橋が見えてくる。日本橋の上空には、首都高環状線があり2024年から2035年頃を目標に地下化する工事が行われるらしい。そんな気配はまだ感じられないが。日本橋より先は国道4号線となる。日本橋は国道1号線の起点として有名だが、実際には7つの国道の起点らしい。明治時代に装飾として設置された麒麟(きりん)像は、翼が生えている。日本の道路の起点となる日本橋から飛び立つイメージから、翼が採用されたらしい。

 パトカーが日本橋に差し掛かると、後続の外国車が加速を始め、うち1台は後方、もう一台は右車線に出る。さらに後続の外国車が加速を始めると、パトカーに衝突する。衝撃でパトカーのテールランプが破損。道路に散らばる。さらに後続の外国車は2度目の加速をしてやや斜めに追突し、パトカーが日本橋の歩道へ乗り上げる。さらに追突して、パトカーは日本橋の欄干に衝突し左側のドアが変形。右車線を走っていた外国車が急カーブと急停車をし、この夜中だというのにサングラスをかけた屈強な男が3名下りてくる。パトカーの後方の扉を開けると、そこにいたのは(くれない)警視長だ。助手席に乗っている長谷(ながたに)警部補は頭を殴打したが、意識はある。しかし、助手席のドアが変形して外に出られない。足と体で無理矢理開けようとするが、開かない。

 紅警視長は降車を拒否するが、サングラスをかけた男はパトカーを力任せに変形させ、ドアの開口部を広げる。

「怪我をしたくなければ、従え」

 腕を(つか)まれ、紅警視長は已むなく車外へ。

 運転席の小渕(おぶち)警視正は気を失っている。長谷警部補が揺すっても起きない。紅警視長を襲撃することを想定していたが、何か異常があった場合、特に最初の追突でパトカーを加速させて、後続の覆面パトカーとチェイスする計画だった。しかし、小渕警視正は最初の追突前後で気を失い、操作不能に。何が起こったのかは分からない。

 日本橋を囲むように、待機していたパトカーや覆面パトカー、ワンボックスカーの遊撃車などが臨場する。その中にはSITも含まれる。

「犯人に告ぐ! 全員両手を挙げて投降せよ」

 静かな日本橋周辺に拡声器による声が響く。男たちは聞く耳を持たず、紅警視長を外国車の後部座席へ乗せようとする。

 すぐさま警察無線で指示が飛んだのか、警察官が一斉に犯人確保へ動く。男達は懐からナイフを取り出すが、警官はナイフの攻撃を避けて腕を掴む。柔道のように、袖を掴んだまま巴投(ともえな)げへ。

 犯人グループは40代から60代くらいと思われる男5人。1台目の外国車に3人。2台目には2人。いずれも身元は分かっていないが、写真を撮影した警官がすぐに身元の照合を本部へ依頼する。身元が判明するまで、そう時間はかからないだろう。

 SITの隊員たちが防護盾を構えたまま、ナイフを持つ男へ突撃する。男はナイフを振るが防護盾に阻まれ、警官には届かない。そのまま防護盾と車のボンネットに挟まれ、ナイフを押収される。残るは3人。

 1人は運転席。残る2人は紅警視長を車に乗せようとしている。ナイフを向けて、人質をアピールする。

 駆けつけた捜査一課の警官によって、小渕警視正が運転席から下ろされ、長谷警部補が運転席側から急いで出る。男は長谷警部補の方にもナイフを向けて、近づくなと脅迫。声を発さずに、静まりかえる周囲。

 紅警視長が長谷警部補に一瞬目配せすると、紅警視長は男の腕を掴み、長谷警部補はもう一人の男へ体当たりし、引き離す。すぐに防護盾を持ったSITが駆け寄り、紅警視長が腕を掴んだ男を包囲する。

 長谷警部補が体当たりした男は、舌打ちをして自分だけ車に乗り込む。運転席で待機していた男によって、外国車は急発進。日本橋を北方向、神田方面へ走らせる。日本橋北詰交差点にはパトカーとバリケードで包囲されており、突破は困難だが衝突してでも突き進むつもりだ。

 無謀な挑戦は犯人グループだけではない。日本橋北詰交差点の角に止まっていたパトカーの運転席に、1人の警官が乗り込み、こちらも急発進。メーターを見る余裕は無く、加速するパトカー。犯人グループが乗る外国車に側面から追突する。外国車は1回転横転し、ハンドル操作を失い日本橋北詰交差点の角にある日本橋陸奧越(むつこし)本店のデパート方向へ。入口の柱に正面衝突し、エンジンルームから煙が上がる。

 一方、体当たりしたパトカーは交差点でぐるりとスリップして停車。両方の車に警察官が駆けつける。車に乗っていた男2人も確保。車から火の手が上がる前には、消防車が駆けつけ、迅速に初期消火。

 紅警視長の誘拐を阻止。紅警視長が囮になり、確保までの作戦を立てていたが、危うく取り逃しになりかねない状況だった。

 おおよそ想定外の出来事は起きず、結果としては数分で犯人を制圧した。


 犯人グループの男5人の身元は、逮捕した順番で次の通り。

 氷堂(ひょうどう) 隆樹(たかき)、46歳。喰応(くおう) 智朗(ともあき)、62歳。眞壁(まかべ) 昇真(しょうま)、39歳。赤埜(あかの) 進悟(しんご)、43歳。鳴倉(なるくら) (じん)、53歳。全員が倒産した建設会社で働いていたそうだ。

 伊島(いじま) (しょう)甲森(かぶともり) 英丈(ひでたけ)と同様に、秘匿性があるアプリを使用し、ダイレクトメールで指示役と連絡を取っていた。指示役について、新しい情報は何もなかった……。


To be continued…


秋田の事件同様に秘匿性のあるアプリでやりとりしていた模様。

犯人はこれまでと同じルールとして、第二の誘拐を企てており、警視庁のメンバーで紅警視長の誘拐を阻止しました。しかし、これまでの事件を起こした犯人の情報は得られず。

地名と人名は可能な限り振り仮名を設定してます。明らかに読めそうなものでも一応。

裏で操る犯人にまでは繋がらないが、こちらも一段落でしょうか。

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