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第236話 狸火

 最大手の動画配信共有プラットフォーム”TubeLiving(チューブリビング)”。約200がサイクリングの生配信を視聴していた。メインはヘルメットにくっ付けた小型カメラの映像で、ワイプは後輪横のフレームに設置された映像である。

 島々に架かる吊り橋を渡り始めて10分。最初の橋の中間までやってきた。視聴者のコメントは自動読み上げの機能で読まれ、配信者は気持ちよさそうにサイクリングを楽しんでいる。

「今日は良い天気で、瀬戸内海の島々が綺麗に見えます。ライ君、ついてきてる?」

 配信者のサグは19歳の男性で、全国各地でサイクリングを楽しんで、配信や動画投稿を行っている。

「まだ、大丈夫……」

「ホントに? まだ最初の橋だよ?」

 ライと呼ばれた人は、”体力がない自分が挑戦するだけのチャンネル”というチャンネルを1年前に開設し、体力作りをすると意気込むも、なかなかその成果が現れず、いつも序盤から辛そうにしており、視聴者からは序盤からラストスパートと言われている。だが、決してその姿を見て笑う者はおらず、コメントは応援が多い。たまに冷たい声のコメントを見かけても、誰もそれに触れずに応援のコメントが多く書き込まれて流れていく。

 今日は、サグとライの所謂コラボ配信である。愛媛県と広島県を結ぶ西瀬戸自動車道に併設する”しまなみ海道サイクリングロード”。最初の橋、 来島海峡(くるしまかいきょう)第三大橋を渡っている。全長1570メートル。第一から第三の3つの橋をまとめて、”来島海峡大橋”というそうだ。このしまなみ海道には、愛媛側から広島側にかけて、来島海峡大橋、伯方(はかた)大島大橋(おおしまおおはし)大三島橋(おおみしまばし)多々羅大橋(たたらおおはし)生口橋(いくちばし)因島大橋(いんのしまおおはし)新尾道大橋(しんおのみちおおはし)の計7つの橋がかかっている。一部はまとめて名称が付いているため、実際の橋の数は10らしい。

 先は長いのだが、ライはいつものように、序盤でラストスパートみたいな雰囲気で

「風が気持ちいいけど、もう最後の橋ですかね?」

「いや、まだ最初だよっ」

 なんて冗談を言いつつ、サイクリングを楽しんでいる。サグの配信に、”隣を走る車早いね”というコメントが自動で読み上げられ

「そうだね。隣が高速道路だから早いね」

 なんて言って、道路の方をチラリと見るとヘルメットに固定しているため、カメラの映像も高速道路の方に追従する。

 すると、けたたましいクラクションが鳴り響く。

 サグとライは何事かと、自転車を漕ぐのをやめて、その場に止まるとクラクションが二重に、それも長時間鳴る。

「なんだ!?」

 コメント欄も異様な光景にざわつき始めると、ドンという衝突音が聞こえてきた。

「ぶつかった?! 事故?」

 衝突音が1回ではなく、2回。視界に入ったのは、燃え上がる何かだ。すぐに何が燃えているか分かった視聴者がコメントと打ち込み、それが自動読み上げで読み上げられる。”高速バスが燃えてる?!”

 さらに、ライの配信では間近にいる2人に対して、”早く避難した方がいいかも”や”逃げて”というコメントが流れる。自分達がいる反対車線であり、”助ける”という選択肢はまず出ない。そもそも事故のあった高速道路の車道へは出られない構造だ。

 高速バスが横転してガードレールに衝突すると、吊り橋が横に揺れる。自転車で走るのは危険だし、揺れている間は歩けそうにもない。

 事故の様子、その一部始終が、2人の配信者の映像を切り取ってSNSなどで瞬く間に広がる。視聴者数は、いつの間にか1000人を超えていた。


    *


「番組の途中ですが、ここで臨時ニュースをお伝えします」

 お昼のワイドショーで海鮮丼の特集をしていたが、報道デスクの映像に切り替わった。

「四国各地で爆発事故が連続的に発生し、交通や道路に乱れが発生しています。全日本高速道路団体によりますと、高速バスの車両火災および追突事故により、兵庫と徳島を結ぶ大鳴門橋が全面通行止め、岡山と香川を結ぶ瀬戸大橋が全面通行止め、広島と香川を結ぶしまなみ海道が全面通行止め。全日本旅客鉄道東京株式会社によりますと、四国縦断新幹線の車内にて火災が発生し、瀬戸大橋線と四国縦断新幹線が全線で運転見合わせ、同様に車内にて火災が発生してリニア四国縦断新幹線が全線で運転見合わせ。徳島と和歌山を結ぶ紀伊興産(きいこうさん)オーシャンフェリーや高神運航(こうしんうんこう)フェリーをはじめ、多くのフェリーでも火災が発生して、運航を見合わせています。現在、四国の各鉄道や道路、海の便にて、相次いで火災が発生し、いずれも通行止めや見合わせが発生しています。消防や警察から正式な発表はありませんが、同時多発的に各地で火災が発生しております」

 ニュース番組を見ている京内(きょうない)内閣情報官は、リモコンでテレビの音量を消音にすると

「これはどういうことだ? テロではないか」

 呼び出されていたのは、(くれない)警視長と小渕(おぶち)警視正である。2人は黙っており、京内内閣情報官は

「犯人に目星はついているのか?」

「主犯についてはまだ……。誘拐犯については逮捕しており、聴取を」

 それを聞いた京内内閣情報官は深いため息をした。早く捕まえろと言ったところで情報がなさすぎる。立場上、言わざるを得ない。

「早急な犯人逮捕。官房長官の記者会見で今回の件について、マスコミから質問で触れられるだろう」

 政府として何らかの見解を述べる必要がある。四国の出入り口、残すは空路のみ。橋による陸路と海路は塞がれた。

「……それで、秋田の方は?」

「それについては進展があり、バスの車内で発見。バス会社の駐車場に止めており、繁忙期以外は使用しないバスとのことで、車両点検を行っていたところ、車内に祖母が」

「大丈夫なのか?」

「えぇ。一命を取り留め、病院へ搬送されました」

 紅警視長の祖母が見つかり、多少の受け答えならできるそうで、最悪の事態は免れたようだ。犯人については、残念ながら分からないと答えているそうだ。


To be continued…


事件が大きく動いています。橋や船が使用できなくなり、孤島になりそうです。

大きな事故が発生したということは、怪我人や死者がどうか。

さて、多忙により毎週更新が最近途絶えているのが少し悔やまれるのですが、今回の隔週も怪しくなりかけました。

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