表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/295

第17話 東京ハイウェイ

 最初の通報は、埼玉県の高速道路交通警察隊からである。

 悠夏と鐃警は、埼玉県内で発生した事件を解決した帰りだった。運転手の榊原警部は、後部座席の鐃警のシートベルトをセッティングし、悠夏は助手席でETCカードを機械に入れる。しかし、機械からはエラーと言われ

「佐倉巡査、多分、上下逆かと。機械が上下逆に設置されているので、逆で」

「すみません」

 と、悠夏はETCカードを取り出し、上下逆にして入れ直す。でも、またエラーと言われ、再度取り出し、上下逆さにすると、効果音が鳴った。認識した音だろう。鐃警は、悠夏があたふたする姿を見て

「まるで、パソコンにUSB繋げる時みたいですね。この前も、USBメモリーを2、3回、くるくる回してましたよね」

「あれって、なんで一発で入らないんだろう」

 なんて会話をしていたら、悠夏の持つ電話が鳴る。

「はい、もしもし?」

「警視庁の方から伺ったんですが、こちらは、特課の佐倉巡査の携帯でしょうか?」

「そうですが」

 ちなみに、個人携帯ではない。警視庁から借りている携帯電話である。

「私、埼玉県警高速道路交通警察隊の与野と申します。協力を依頼したいのですが」

 と、与野(よの)巡査長が事情を説明する。悠夏が電話を終えると、榊原警部は運転席に座って、シートベルトをしながら

「どうした?」

「埼玉県警高速道路交通警察隊から、高速道路で暴走している車があり、協力を願いないかって」

「どこだ?」

「車は、大泉ジャンクションから、美女木ジャンクションに向かっているそうです」

「ここからなら……、和光北から乗れば美女木ジャンクション方面に行けるな」

 榊原警部は、車の屋根にパトライトを出す。この車は、所謂、覆面パトカーである。


 埼玉県戸田市に位置する美女木ジャンクション。外環から首都高へ乗り換えるなら、ジャンクションの信号を通る必要がある。美女木ジャンクションは、平面交差しており、通常のジャンクションと異なり、交差点で信号による交通整理がされている。ちなみに、通常の信号機よりも、大きな信号機を使用しているらしい。

 時刻は夕暮れ。平日のため、交通量がこれから増えていくだろう。予定通り、和光北から外環へ乗ると、前方にパトカーが走っている。無線で、指令室から情報が飛び交う。

「白のコンパクトカーがスピードを上げ、走行中。Nシステムとオービスの写真から、高齢の女性であることが判明。焦っている可能性あり。ナンバーは現在照合中」

「本部。こちら、与野。現在、当該車両を追走中。車線変更時、ウインカーを出しており、予期せぬ暴走などは考えにくく。まもなく、美女木ジャンクション。首都高方面に車線変更。信号制御可能でしょうか? どうぞ」

「こちら、本部。美女木ジャンクションの信号機を全方面、赤に制御中」

 白のコンパクトカーは、車の間を縫うように走り、美女木ジャンクションの信号機を赤で右折。東京方面へ。続けて、与野が乗っているパトカーと、もう一台のパトカー、その後ろに榊原警部の運転する覆面パトカーが続く。

 埼玉県から東京都へ。

 車はさらに走行し、まもなく料金所へ。

「先行が、ETCを一時的に封鎖」

 無線でそれを聞いた榊原警部は、スピードを落とし待避所へ移動する。

「榊原警部、追わないんですか?」

 鐃警が言うと、榊原警部は

「もし逆走したときに備えて、待機する」

 そう言われて、確かにと思った。目の前を塞がれたとき、急旋回して逆走する恐れがある。

 しばらくすると、無線から

「こちら本部。運転手を確保。安全を確認後、規制線を解除へ」

 それを聞いて、一安心。

「事故なく、一安心ですね」

 悠夏はそう言って、携帯電話の履歴を見る。先ほどかかってきた番号に折り返せば、与野巡査長に繋がるはずだ。しかし、折り返す前に無線から

「こちら、与野。運転手は、自分が狙われていると言っており、体が震えている。至急、これから言う、自宅の住所へ急行願う」

 与野が住所を伝える。

「住所は、埼玉県北武蔵埼玉町(あざ)北玉(ほくぎょく)1丁目1番地。運転手の氏名は、濱千代(はまちよ) とし()。自宅には、息子と孫がいるらしいが、名前を聞こうとしても答えてくれなかった。それどころか、顔色が悪くなるばかりで……」

 そんな言い方だと、嫌な予感がする。榊原警部は、車を発進させ、最初のインターチェンジで降り、料金所をくぐるとUターンして、再度入口へ。カーナビには、悠夏が入力した住所の目的地が表示されている。

 目的地までの所要時間は、半時間ほどだろうか。


 北武蔵埼玉町。到着までに、埼玉県警から電話をかけるも反応がなかった。そうなると、ますます不安が募る。

 一戸建てで、インターホンを押すも反応がない。インターホンを押す前から気にはなっていたが、ドアは施錠されておらず、微妙に開いている。

「どうしますか?」

 と、開いているドアを指差しながら、鐃警が聞く。

「ひとまず、ドアを開けて声をかけてみましょうか?」

 悠夏が榊原警部に提案すると、

「そうだな」

 と、榊原警部がドアを大きく開ける。すると、

「玄関の奥……、血痕か?」

 榊原警部は、ドアを支えて、二人にも確認を促す。

「血に見えなくはないですけど……」

 悠夏も自信が無い。この距離だと、濃い赤色で、小さな点がいくつか廊下に落ちていることは分かるが、血だと断定できない。

 玄関から大きな声で叫ぶが、反応がない。

「埼玉県警に一度報告する」

 そう言って、榊原警部は携帯電話で連絡する。

 その間、悠夏と鐃警は、ぞろぞろと集まってきた近所の人たちに話を聞く。大声で何度も叫んでいれば、近所の人が何事かと家の前に集まってくる。一軒一軒、話を聞きに行くよりも、こんなときに聞いておけば、情報収集が効率的だ。ただ、信憑性は分からないが。

 榊原警部が連絡を終え、悠夏が近所の人から聞いた話を報告する。

「特に、悲鳴や大きな物音などは、今日一日なかったみたいです。あと、車で慌てて外に出る、濱千代 としゑさんを見た人がいました。かなり慌てていた様子で、声をかけても気付かなかった様子だったとのことで。あと、不審者情報も何件かありますが……」

「分かった。県警に問い合わせたが、別件で人が足りず、こちらへの到着が遅れているそうだ。帰宅ラッシュの時間で、かなり道が混んでいるらしい」

 鐃警は首を傾げ、

「てっきり、交番の巡査が最初に駆けつけるんだと」

「そちらも別件で立て込んでいるらしい」

 忙しいときは、同時に色々舞い込んで、捌ききれず、時間の空いたときに限って、何もないようなことはよくある。来られないのであれば、ここは我々が踏み込むしかあるまい。

「安否確認のため、声を出して様子を確認するぞ。鐃警はドア前で待機。佐倉巡査と自分で、確認する」

 榊原警部はそう指示し、悠夏と声を出しながら玄関を上がる。「警察です。いらっしゃったら、返事してください」

「濱千代さんの息子さん、お孫さん。いらっしゃっいますか?」

 でも、返事がない。廊下の奥、リビングへ向かい榊原警部が覗くとすぐに、悠夏の方を向いて

「佐倉巡査、慣れてないなら、あまり見ない方が良い。悪い予感が当たった」

 そう言われて、状況を理解した。実際、このような場面に遭遇したことはなく、見たことがないため、耐性があるのか分からない。ただ、確認しないといけないだろう。

 榊原警部は、悠夏に念押しで「家の物には触れるなよ」と言い、リビングの奥へ。そして、確認後、

「殺人事件だな……」


To be continued…

今回の話は、美女木ジャンクションを出したかった。ただそれだけです。

初めて通ったときに、なんで信号があるのか不思議に思ったジャンクション。

そして、鍵の開いた家での流れは、ドラマとかでよくある展開かと。

そういうのを詰め込んだ結果、こうなりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ