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第159話 東京の夜空を彩る花火が打ち上がるとき、拾

 隅田川(すみだがわ)花火大会の会場周辺にある監視カメラを眺める。キーボードのEnter(エンター)キーを押して、複数のカメラを切り替える。何処(どこ)彼処(かしこ)も人混みで、人の目で確認するのは難しいだろう。昨今の技術革新により、AIによる人物検知技術が飛躍的に上がっている。

「警視庁管轄の監視カメラだけとは言え、大通りの人物はほぼほぼ検知してるようだな」

 警視庁生活安全部サイバーセキュリティ課所属の伊與田(いよだ) 武章(たけあき)は、眼鏡を掛け直して、隣のモニターの検知結果を見る。検知率は89%ほど。

「科捜研にも似たような技術ってありません?」

 マグカップのコーヒーを片手にそう言ったのは、同じくサイバーセキュリティ課所属の女性巡査長、瀬戸堂(せとどう) 鈴奈美(すずなび)。瀬戸堂はコーヒーを一口飲むと、「まだ苦っ」と言って、ミルクと砂糖を微量ながら追加する。

「科捜研にあるのは、過去の映像を解析する技術。これはほぼリアルタイムの映像を解析している」

「それって、違うんですか?」

「全然違うな。過去の映像ならば、解析に時間がかかっても問題は無いが、リアルタイムの映像は解析の処理時間が」

「へー」

「まだ最後まで説明してないぞ」

 伊與田はため息をつく。瀬戸堂はサイバーセキュリティ課に配属されたが、IT技術に関する知識は偏っているし、話は最後まで聞かない。

「赤白のボーダー服を着た人とかを探すのも早そうですね」

「唐突に、どこの絵本の話をしている?」

 赤白のボーダー服を着た人物を探す例の絵本だろうか。他の捜査官と違い、瀬戸堂のマイペースには調子が狂う。

「これって、警察官がどれかも分かるんですか?」

 急に普通の質問が来た。伊與田は

「警察官のデータはサーバーにあるから、警察官を検知対象外にするこもできる」

「つまり、これがあれば、警察官がどこで潜んでいるか誰でも分かるってことですね」

 たまに鋭いところを突いてくる。

「そうだな。同じデータとシステムがあれば出来なくは無い」

「あとはハックされない限り、ですか?」

「ハッキングだけではない。例えば、ここに警察官に扮した協力者がいれば、知らせることも出来る。その辺りのリスクは、このシステム導入時に課題を整理しているから、あるとすれば映画やドラマの話だな」

 システム稼働中に検知結果を閲覧できる人間は限られている。そんな会話をしていると、人物検知結果からアラートが上がった。伊與田と瀬戸堂が人物検知結果のモニタを見ると

電田(でんだ) 心斗(しんと)が現れた。場所は浅草(あさくさ)駅か」

 伊與田はすぐに捜査官へ情報を転送する。浅草駅は隅田川花火大会の打ち上げ地点の丁度真ん中であり、非常に混雑している。打ち上げ場所となる桜橋(さくらばし)厩橋(うまやばし)の距離は、およそ2キロ。

「受け子は別じゃ無いのか」

 中武(なかたけ) 芯地(しんじ)に対して指定した受取場所は、混雑する隅田(すみだ)公園の一角。時間は19時40分。第一会場と第二会場の両方で花火が上がっている時間だ。人々が花火を見上げている中、取り引きを行うようだ。


    *


 警視庁刑事部捜査二課の新野(あらたの) 隼佑(しゆんすけ)警部のもとに、電田が現場付近に現れたという情報が伝わった。すでに私服捜査員や警備員に扮した捜査員を配置させている。取り引きを確認した時点で、尾行して足取りを掴めれば良いが、その作戦は少し前の打ち合わせのときに自然と()かれてしまい、結果見失った。そのため、今回は取り引きを確認した時点で、声をかける。あくまでも偶然通りかかって不審に思って声をかけたという(てい)で。

声をかけるのは、管轄の台東区(たいとうく)浅草警察署の捜査員だ。警視庁の人間や本件に関わっている捜査員の場合、打ち合わせの捜査時にバレている可能性があると考えた結果だ。

 時計を見ると、18時45分。第一会場の花火打ち上げまで30分。取り引きの時間まで55分。


    *


 警視庁刑事部捜査一課の榊原(さかきばら) 岾人(やまと)警部と藍川(あいかわ) 桑栄(そうえい)巡査、警視庁特課(とっか)佐倉(さくら) 悠夏(ゆうか)、3名は墨田(すみだ)区の東京スカイツリーにいた。4階の入口フロアは、スカイツリーから花火を見ようとする観光客でごった返している。榊原警部が受付から戻ってくるのを見て

「どうでしたか?」

 と、藍川巡査が結果を急がせる。名前や役職を呼ばないのは、警察官であることを隠すため。3人とも私服であり、スーツや制服ではない。

「待て、場所を変えるぞ」

 東京スカイツリーの外も人混みとなっており、少しの距離でも時間がかかる。目の前の川沿いにあるベンチは全て埋まっており、人の少なそうなスペースへ移動する。

「受付で伝言を子連れの父親から預かったそうだ。内容は、”桜橋で待ち合わせ”」

「あれ? 桜橋って通行止めになりますよね?」

 藍川巡査は不思議に思って、スマホですぐに確認する。すると、総合案内図の画像が出てきた。

「やっぱり。午後1時から9時半まで通行止めですよ」

 隅田川花火大会開催に伴い、会場周辺の公園や桜橋に歩行者通行禁止のエリアが設定される。さらに、歩行者の進行方向が決まっている場所もある。

「必ず第三者を介して、警察に伝えているようだが、直接言わないのは何故だろうな」

「真っ先に考えられるのは、犯行グループのメンバーに密告がバレないようにしている、とかですかね?」

 藍川巡査の考えに榊原警部と悠夏も賛同する。だが、非常に回りくどい。最初の新聞社のプリンタを使ったときに、詳細を残せばこんなことにはならず、手間がかかる。

「密告者は、事前に計画できず、行き当たりばったりって可能性はどうですか?」

 悠夏が自分の考えを伝えると、榊原警部は「そうだな。それなら、東京スカイツリーの受付に行けと伝えるタイミングで、受付の伝言内容を言えば良かったと考えるべきでは?」

「先に受付で伝えて、警察が気付かないから、後からフォローしたとしても、確かに直接言えばいいですね……」

 密告者からは、”東京スカイツリーの受付にて情報を残す”という内容で、機械音声の匿名通報があった。機械音声は、入力された文章を機械が読み上げるもので、公衆電話の場所や通報者の人相は周辺のカメラから判明しているが、やはり第三者である。それも伝言ゲームのように、直接指示した人物も第三者だ。

 密告者は無関係な第三者を2人以上介して、伝言を残している。警察には伝えたいが、自分の素性は明かせないと言うことだろうか。

「いずれにせよ、桜橋周辺で張り込むが、引き続きこちらの捜査で問題ないのか? 二課の捜査は?」

「新野警部から連絡があれば戻ることになりますが、話を聞く限り19時40分ごろですね」

「では桜橋に向かい、東側を藍川が担当。西側を俺と佐倉巡査が担当し、二課から要請があり次第、佐倉巡査はそっちに向かってくれ」

「分かりました」


To be continued…


今回の話も10話目、序章があるので実際は11話目です。もうじき花火が打ち上がりそうですが、事件は大きな動きが無く、花火が打ち上がっている最中に展開がありそうです。舞台は2019年の隅田川花火大会。今年はどこか花火大会行きたいなと思いつつ、気付けば9月が終わり、来年こそは。

今回の話はあとどのくらいで終わるかなぁ……。打ち合わせから花火大会まで、時間を飛ばしているのですが、途中で機械音声でスカイツリーの受付に行ってという通報があったようです。回りくどいですよね。そこまでするなら、そのときに全部言えばいいのに。伝言ゲームになるから、長い文章は正しく伝わらないから、短い言葉を何回もという理由も説明不十分です。結局、密告者の稲蔵(いなくら)が不器用というか、焦って余計なことをしてますよね。単純に「桜橋で立和名(たちわな) 言葉(ことは)の保護を頼む」と伝えればいいのに……。

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