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第144話 豪雨の救助活動

 警視庁のトップは警視総監であり、その次に警視監、警視長、警視正、警視、警部、警部補、巡査部長、巡査長、巡査と続く。副総監は階級ではなく、警視監の階級である人物から1人が割り当てられる。

 現着して早々、倉知(くらち) 音弥(おとや)副総監はインカムを付けて指示を飛ばす。

特課(とくか)藍川(あいかわ)達に合流。SIT及びSATは校舎を包囲。相手は牛乳瓶に入るサイズだ。アリ一匹さえ包囲網から逃げ出さないように、厳戒態勢を敷く。大まかな指示はこちらから出すが、人員の配置や細かな指示は隊長に任せる。頼んだぞ。被害者の救助は堀切綾瀬(ほりきりあやせ)警察署及び東京消防庁が指揮を執る。こちらは犯人確保を全うする。絶対に確保しろ。これ以上、ここを長引かせるわけにはいかない。相手を封じる手立てについて、埼玉県警は引き続き情報収集を願う」

 埼玉県警への指示は、悠夏(ゆうか)を経由して与野(よの)巡査長へ展開する。これ以上得られる情報があるかは分からないが、笠鷺(かささぎ) 義徳(よしのり)が残した冊子も調査する。

 悠夏と鐃警(どらけい)、さらに指示を出しつつ高城(たかしろ)中隊長も、会議室から急いで、各々の配置へと向かう。倉知副総監は会議室を出る前に

榊原(さかきばら)。任せて問題ないか?」

「はい」

 (すばる) 千弦(ちづる)のことを榊原警部に任せると、宮岸(みやぎし) 真岐(まき)教諭に声をかけて

「宮岸さん、お力添えをお願いします」

「こちらこそ。できる限りのことを」

 榊原警部と宮岸教諭が会議室を出て校庭へと向かった。会議室に残った榊原は、千弦と同じ目線になるように少しだけ屈んで

「みんなを助けに行こうか」 

 千弦はうんと頷いた。2人は、井村(いむら) 八太郎(やたろう)北澤(きたざわ) ことみの救出へと向かう。会議室に残った丸開(まるひら)教頭と猫平田(ねこひらた)校長は、青戸(あおと)警部補と現場を見守る。


    *


 警視庁の投光車と消防庁の照明電源車、何カ所かに設置した投光器が現場を照らす。

 第六消防方面本部消防救助機動部隊の遠距離大量送水装備、スーパーポンパーが荒川(あらかわ)からの水を吸い上げる。さらに吸い上げた水は、大型ホース延長車を経由して、ポンプ車へと送られる。邪神に直接当てることなく、空高く放水されて人工的に雨が降り始めた。

 地面では吸水できないほどの豪雨となり、排水用として土嚢で固めて造られた小さな川が出来上がった。土嚢の土手により、水は綾瀬川(あやせがわ)へと流れている。なお、綾瀬川と道路の境には1メートル程の堤防があり、土嚢で囲んだ中に溜まった水を数台のポンプで吸い取って綾瀬川へ放水している。これらは浸水被害が出ないような対策である。

 局地的な豪雨が降り続く中、邪神が一回り小さくなったように見える。消防庁の指揮系統では、人命救助の捜索指示が飛び交う。邪神に喰われるリスクは承知で指示を出していたが、邪神による新たな被害は報告されず、気を失った生徒や学校関係者を数名発見。第六消防方面本部及び第三消防方面本部の機動救急救援隊と消防署の救急隊が手早く処置を施す。

「大きな怪我は見当たりません」

 救急隊の報告では、第一段階で死傷者はゼロ。しかし、第二段階にて、1人低体温症の疑いが出た。

「雨に濡れて体温が奪われ、低体温症となった可能性があります」

 救急隊の報告で機動救急隊の人員を増やして捜索人数を増やすが、第三段階から状況が変わった。

「報告です。瓦礫に挟まれており、救助には時間がかかります」

 校舎の瓦礫に埋もれており、瓦礫を退かすために救助用重機を投入する。消防庁が保有するクレーン車やショベルカーなどが校庭へ入り、雨の中瓦礫の除去作業を行う。

 雨は止めることができない。川や井戸の自然水によって、邪神が弱体化していると考えられ、放水を止めると邪神が暴れ出すおそれがある。暴れるとは、(すなわ)ちまた喰われるということだ。


 必死の救助活動が行われる中、悠夏と鐃警は藍川巡査に合流し、確保の準備を行っていた。トラックの荷台一杯に空き瓶や空き缶があり、色付きや無色透明、さらにはプラスチック製やペットボトル、魔法瓶など様々な容器も載っている。そこから使えそうなものを選定していた。

「実績のある安心安全の牛乳瓶と、これはジャムの瓶ですかね? 蓋があれば確保しやすい気も……」

 と、鐃警は使い勝手の良さようなものを選んでいた。

「封印できるのならば、どの容器でも問題ないですか?」

 悠夏は、綾瀬川(あやせがわ)神社の権禰宜(ごんねぎ)である樋渡(ひわたり) 直太(なおた)に確認すると

「密閉性の高い物であれば問題ないかと」

 笠鷺の残した冊子にも容器についての明記は無い。斑鳩川(いかるがわ) (ひょう)は荷台の瓶を触って、コンコンと音を確かめながら

「どの容器でも問題なければ、耐久性の高い物を選ぶのが筋ですね」

 と、ガラス製やステンレス製をピックアップしている。鐃警の隣で悠夏もいくつか容器を見ていると

「一応、あるんですね……」

「何か見つけました?」

 鐃警は悠夏の指差す方を見ると、

「電子ジャーのくだりは1回やったんで、もういいですよ」

 白の保温電子ジャーと炊飯器が2つ並んでいた。ちなみに、電子ジャーは保温のみでご飯は炊けない。電子ジャーの隣には、茶色いひょうたん水筒もあった。

「漫画ネタ、多くないですか?」

 探せば他にもありそうだが、それ以上は触れずに、真面目に選定して、確保の作戦を練る。邪神が全員を解放しても、雨は継続するため、雨合羽を着用。

 救急隊の方は、重機投入で慌ただしく動いている。それを遮らないように、SITとSATが包囲網を作る。雨水の逃げ場や救急隊の往来により、完全に塞ぐことは出来ないが、邪神から目を離さぬように気合いを入れて待機する。

 邪神は2メートルほどまで小さくなり、怪我人は出ているが死者はまだゼロだ。救急車で近隣の病院へと怪我人を搬送すると、病院の前で記者やカメラマンが集まり始めた。報道協定によって、中継などリアルタイムの情報発信はしていないが、SNSでは負傷者どころか死者が出ていると騒ぎになっている。実際には、死者がいないにも関わらず。

 放水を継続し、邪神は50センチほどまで小さくなった。重機で瓦礫を撤去すると、八太郎が気を失っていた。遠くから気付いた千弦だが、榊原警部に「救助が終わったら、一緒に行こう」と言われ踏みとどまった。さらに、別の場所からことみが見つかった。2人を担架に乗せて、救急車へ。榊原警部と千弦もそれを追いかけて、同じ救急車で病院へと向かっていった。

 悠夏は無事を祈りつつ、犯人確保に集中する。確保の判断は、邪神が5センチになったとき。樋渡から邪神が封印されていたときの大きさを聞き、5センチ程度と推定されることから、判断基準となった。もうすぐ、事件が幕を下ろす……


To be continued…


2021年最後の更新です。今年1年ありがとうございました。

副総監のフルネームは今回初出しですね。今まで名字だけでしたので。それと、消防庁側に名前と役職を与えて台詞回しすることも考えましたが、すでにかなりの話数に渡って展開しているので、さっさと先に進めて、けりを付けましょう。何かあればアフターストーリーなどに回すかな。

来年は、『黒雲の剱』と同時並行で進めることが目標かな。しばらくはこのまま隔週になりそうです。

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