表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/295

第134話 交わる捜査(前編)

 2019年7月22日。警視庁刑事部捜査一課のデスクに特課(とくか)の2人が訪れると、藍川(あいかわ) 桑栄(そうえい)巡査が気付き

「こちらに来るのは珍しいですね。ついに、捜査一課の自分に協力依頼ですか?」

榊原(さかきばら)警部はどちらに?」

 佐倉(さくら) 悠夏(ゆうか)は藍川巡査には触れず、榊原警部の居所を聞いた。

「自分は?」

 藍川巡査が自分を指さしながら聞くも、またスルーして長谷(ながたに) 貞須惠(さだすえ)警部補が答える。

「今、外に出ている。電話をすればすぐに協力できると思うが……」

「ちなみに、どちらに?」

日暮里(にっぽり)の方だな」

「それなら現地で落ち合った方が良さそうですね」

「本人にはこちらで連絡するが、待ち合わせはどこがいい?」

「では、葛飾区(かつしかく)綾瀬水門(あやせすいもん)で」


    *


 午後2時20分。東京都葛飾区、綾瀬川と荒川を結ぶ綾瀬水門。近くには上りと下りで二層構造の首都高中央環状線C2があり、多数の車が走っている。丁度、首都高速6号三郷線(みさとせん)と分岐する小菅(こすげ)JCTと、向島線(むこうじません)と分岐する堀切(ほりきり)JCTの間で、行き先によって車線変更が大変なところでもある。2車線同士で合流するところを、1車線は小菅出口となり、3車線で捌いていたため、渋滞が発生しやすかった。しかし、昨年2月に同区間の4車線化工事を終え、渋滞発生の頻度は下がったらしい。しかし、初見だと迷いそうだ。いや、そもそも首都高に限らず、高速道路のJCTは迷うことが多いかもしれない。

 綾瀬水門付近の土手は、サイクリングやランニングをしている人が多い。

「そろそろお集まりですかね?」

 堀切綾瀬(ほりきりあやせ)警察署の青戸(あおと)警部補は、時間を確認する。集まったのは、警視庁刑事部捜査一課の榊原警部と藍川巡査、同じく警視庁特課の悠夏と鐃警(どらけい)

「本件は、人海戦術である程度情報をかき集めていますが、学校側で被害が急速に拡大しており、こちらで把握しているだけでも少なくとも被害者は16人を超えており、事態は一刻を争います」

「16人もですか!?」

 今朝の情報では8人だった。このまま被害が拡大すれば、世間にも知れ渡り、手が付けられなくなる。

「すでに文科省へ報告していており、警察で対処できるうちになんとかしないといけない状況です……」

 青砥警部補によると、堀切綾瀬警察署は警視庁へ応援要請を依頼すると同時に、文部科学省へも報告したそうだ。状況によっては、国が対処せねばならない相手になる。もしかすれば、石川県五月雨(さみだれ)村の五月雨島であった事件のように、特殊部隊のSATやSIT、自衛隊を派遣し対処することもあり得る。さらにマスコミへは報道規制を実施し、事件情報の流出を抑えている。

 ただし、今回は離島ではなく東京という日本の首都のど真ん中だ。大事になれば、報道規制も意味をなさず、葛飾区だけでも人口は約44万人。日中は、仕事で近隣の県から通勤する人も多く、葛飾区の昼間人口は80万人を超える。騒動になれば、今の時代SNSで爆発的に拡散され、本当の情報だけでなく、デマにも踊らされ大混乱に陥るだろう。

「我々、堀切綾瀬警察署としては日没が限界と踏んでいます」

 悠夏はスマホで日没時間を調べ、

「日没って、あと4時間ぐらいですよ」

 日没は18時53分頃。およそ4時間半だろうか。

「相手は教室に居座っていますが、いつまで捜査ができるか……。相手は、自分に関わろうとする者を狙っており、封じる方法を探す必要があります」

「封印の方法を探れば良いんですよね。言うのは簡単ですけど」

 鐃警は目的をハッキリとさせるが、難しいことだろう。しかし、それをなさねばならず、短時間でできることとして人海戦術で情報収集を行っている。

「それで、我々としては、どの捜査を重点的に?」

「お願いしたいのは、最初の被害者である2人が帰宅するルートを重点的に捜査していただきたく」

「直近の帰宅ルートの詳細は?」

 榊原警部が情報を確認すると、悠夏がタブレットを出し

「資料でいただいてます。男子高校生は、ここから堀切橋を渡って、堀切駅から乗車して普段は帰るとのことですが、7月18日と19日、改札を抜けずに徒歩で帰宅しています」

「徒歩で?」

 藍川巡査が驚くように反応すると、青砥警部補は手帳を開いて情報を確認し

「被害男子は、同じ高校の先輩女子と破局し、精神的に落ち込んでいたらしく、電車を使わずに歩いて帰ったことが考えられます。さらに、友人が被害女子に告白するということを聞いて、さらに傷心したのではないかと」

「自分は振られて、友人の告白を応援したいけれど……。確かに、難しいですね」

 被害に遭った男子生徒の井村(いむら) 八太郎(やたろう)と、女子生徒の北澤(きたざわ) ことみ。特課と捜査一課の4名は、2人の足取りをもとに聞き込み捜査を行うことに。

 堀切橋を渡り、足立区へ。堀切駅で駅員に確認するが、1日に何千人と乗降する駅で、生徒1人を覚えているはずも無く、空振りだった。

 二手に分かれることにして、藍川巡査と鐃警は、ことみの足取りをもとに捜査へ。悠夏と榊原警部は八太郎の足取りをもとに捜査へ。

 堀切駅から狭い路地を選んで南方向へ歩く。路地裏は人通りが少ないどころか、誰とも出会わない。周囲を見渡しながら歩くと、公園に出た。

「あれ? 公園にいる人って……」

 悠夏は見覚えのある人物を見つけた。榊原警部は誰か分からず

「知り合いか?」

「京都で会ったことがあるんですが、柊哉(しゅうや)君の兄、斑鳩川(いかるがわ) (ひょう)さんです」


To be continued…


[2021/08/19追記]

ストックが尽きて、毎週更新が間に合わない状況のため、週間更新をやめて、隔週ないしは何週間かおきの更新で進めようと思います。8/19分の更新では、135話は更新せずに先週中途半端な形だった134話を更新し、135話は1週あけて9/2の更新目標で考えています。

更新頻度はしばらく落ちますが、ストックに余裕が出てくれば、週間更新に戻すつもりです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ