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第133話 怪しき依頼者

 2019年7月22日、月曜日。特課に捜査協力があった頃、同じぐらいの時間に電話が掛かってきた。電話を受けたのは、探偵業を営む青年、斑鳩川(いかるがわ) (ひょう)。かかってきたのは仕事用のスマホだが、電話番号は公にしておらず、すでに一回依頼を受けた相談者か、どこからか知った新規の依頼者、あとは間違い電話がかかってくるぐらいだ。

 スマホの画面には、公衆電話と書かれている。昨今、設置数が減りつつある公衆電話だが、仕事の依頼を受ける際、自分の携帯電話に発信履歴を残したくないのか、最初だけ公衆電話から連絡する依頼者は過去にもいたし、そう珍しくもない。

「もしもし?」

 電話の相手は、30代の男性。少し焦っているような声だった。

「はい。斑鳩川です」

「探偵さんですか?」

「そうですが、何かお困りでしょうか?」

「電話ではあまり話せないような内容なので……、北千住(きたせんじゅ)の東口でお待ちしております。和装ですので、分かりやすいかと」

 足立区(あだちく)の北千住駅まで来て欲しいという依頼者の希望に添い、このあとの予定もないため、飃は手早く支度をして向かった。


    *


 北千住駅東口。西口にあるロータリーとは違い、東口は建物が多く、通りが狭い印象だ。パチンコ店やラーメン屋、コンビニなどが並ぶ中、電話で聞いた和装の男性が東口の方を見ながら待っていた。

 飃が声をかけると、男性はすぐ近くのカフェへと移動する。カフェの店員とは知り合いなのか、事前に話を通していたのかは知らないが、2階の個室席へと案内された。

「ご挨拶が遅れました。私、綾瀬川(あやせがわ)神社の権禰宜(ごんねぎ)樋渡(ひわたり) 直太(なおた)と申します。お忙しいところ御足労いただき感謝致します」

 神職の職階は、宮司(ぐうじ)から権宮司(ごんぐうじ)禰宜(ねぎ)、権禰宜、出仕(しゅっし)の順となる。宮司と禰宜は各神社に1名であり、権宮司と権禰宜はそれぞれ補佐をする役目である。

「斑鳩川 飃です」

「存じております。お噂は兼々(かねがね)

「樋渡さんは何かお困り事でも?」

 飃は依頼内容を聞くと、樋渡権禰宜は深刻な表情を見せつつも、複雑な心情で

「すでに何人かに相談したのですが、誰もが馬鹿にして……。このままでは取り返しの付かないことに……」

「樋渡さん、落ち着いてお話しください。どんなご依頼でも内容については最初から最後まで伺っておりますので」

 樋渡権禰宜は水を飲み、順を追って話し始めた。

「綾瀬川神社には、いくつか分社が点在しています。よくイメージされる規模の神社から、小規模な神社、道端に小さな祠のような大きさまで、様々ございます。今回、困ったことに公園の近くにある祠のような小さな分社が何者かに荒らされまして……」

「荒らされた、と。それはどのような状態でしょうか?」

「お札が剥がされた上に、御神体を封印した瓶が倒され、蓋が開いておりました」

「樋渡さん、そのときの写真などはありますか?」

「いえ……。そこまで気が回らず、慌てておりましたので……。急いで神社に戻り、禰宜と宮司へ報告いたしました。しかし、事の重大さを理解しておらず、対策は実施されず……」

 樋渡権禰宜から、宮司と禰宜に関する話を詳しく聞くと、どうやら宮司は世襲であり、禰宜も宮司の知り合いで経験が少なく、過小評価どころか、今回の件を一切気にしていないそうだ。権禰宜には、事の重大さを理解する者もいるが、禰宜は別の割り振りをしており、どうすることもできずにいるそうだ。

「つまり、樋渡さんからの依頼内容は、宮司の理解を得ることでしょうか?」

「確かに、理解を得られればそれも1つですが、今となってはそんな悠長なことは」

「では、荒らした犯人の捜索でしょうか?」

「それができれば……」

 樋渡権禰宜の依頼内容がハッキリせず、飃は先走りせずに最後まで聞くことにした。

「元々、あの場所に封印されていたのは神様ではありません……。詳しく知っていた権禰宜から聞いた内容ですが、あそこには悪さをする悪霊、妖怪や怪物の類いが封じられていたそうです。その昔、悪霊により神隠しが多発し、帰ってこなかった人もいるそうです。すでに被害が出ている可能性もあり、一刻も早く悪霊を止めねばなりません。しかし、被害者を調べるにも……」

「なるほど。ちなみに、帰ってこなかった人もいるとのことですが、実際に被害に遭って戻ってきた人はいるのでしょうか?」

「戻ってきた人はいますが、今はお亡くなりになっており、お話を聞けてもお孫さんから……ですね」

 聞くところによると、50年以上前の話らしい。

「現状、被害が出ているかどうかやどこにいるかも分からず、誰がどうして、意図的なのか事故で封印を解いたのかも分かりません」

「樋渡さん、1つ確認したいのですが、そんなに危険なものを何故道端の祠、分社に封印されていたんでしょうか? 事故で分社に被害が出るリスクはかなり高いと思われますが……」

「その昔、分社の周辺は大きな公園だったらしく、住宅街があとからできました。前回の騒動の際、分社から綾瀬川神社の境内に、という話もあったそうですが、そのときは場所が無く先延ばしにしたのではないかと……。お恥ずかしい話ですが……」

 当時、境内で管理することができず、そのまま判断が延びて忘れ去られたのだろうか。

 その後、一通りの情報を樋渡権禰宜から聞いた結果

「依頼内容については、把握しました。1つだけお伺いしたいのですが……」

 飃はフィクションのような依頼内容だが、どのように受けるつもりだろうか……


To be continued…


2021/08/12 改訂。


探偵の斑鳩川(いかるがわ) (ひょう)が登場し、こちらからも物語が進むのか……

それ以前に、次話投稿20分前に前話追記改訂で、首の皮一枚……

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