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第13話 怪奇現象

 2019年1月2日。変な初夢を見た悠夏は、双子の妹と弟が通う中学校へ来ていた。何でも、怪奇現象が起きているらしい。警察に連絡しようにも、笑い話だと馬鹿にされると思い、通報はしていないらしい。

「警視庁 特課、佐倉 悠夏です。といっても、休暇中のため、公式の捜査とは少し勝手が違うのですが……」

 悠夏が最初に訪ねたのは、職員室である。こんな正月でも部活動などで出勤する先生方。やはり、先生という職も大変そうだ。今回は、捜査というよりも、子ども達の不安を解消すべく立ち上がった。

遙華(はるか)ちゃんと遙真(はるま)君のお姉さんですね。担任の西原(にしばら) 木岐(きき)です」 女性の先生だ。若そうに見えるが、多分自分より年上だろう。今回、先生と直接会うのは初めてだ。でももう1月だから、次は会うとしても卒業式だろうか。

 妹と弟が産まれたのは、春の桜咲く時期。だから、二人とも春がキーワードになっている。つまり、私は夏に産まれたから、名前が悠夏になったのだろう。ホントかどうか知らないが、自分が産まれたときに、最初の泣き声は花火の音に驚いて、2秒で引っ込んだらしい。確かに、そのせいなのかは分からないけれど、昔から大きな音には敏感になっている。でも、花火は見られる。小学生の頃に克服したから。


 さて、今朝に遡り、少し遅い朝食を食べているとハルハルが、勢いよくリビングに走ってきて、机を叩き、

「悠夏(ねぇ)、怪奇現象だ!」

 と、ハモって、純粋無垢な眼差しでこちらも見て、箸が止まる。

 ちなみに、私はふたりのことを”ハルハル”と呼んでおり、個別に呼ぶときは遙華を”カー”、遙真を”マー”と言っている。ただ、家族しかいないときのみで、外に出れば名前で呼んでいる。たまに、家で呼ぶときの名前になるけど。

 怪奇現象の詳細はふたりが言うに、

「知らない子の名前が名簿にあるの」「知らない子が写真に写ってる」

「ふたり同時に喋らないの。ハモらないときは、何て言ってるか聞き取れないからさ」

 悠夏は、朝ご飯の続きで、沢庵(たくあん)と赤飯を頬張る。今日の朝ご飯は、昨日に続き、おせち料理である。ちなみに、沢庵は自家製である。

 で、ハルハルはジャンケンでどっちが喋るか決めて、勝ったカーが

「知らない子の名前が名簿にあるの」

 そう言って、見せてもらったのは、冬休みのしおり。最後のページには、連絡網が掲載されている。しかし、電話番号は書かれていない。最近は、個人情報のあれやこれやで、次の人の電話番号ぐらいしか記載しないらしい。というか、電話を回すよりも、SNSで連絡することが多いだろう。

「ここの真ん中あたりに、”毛利(もうり) 貴之(たかゆき)”って名前があるけど、そんな名前の子がクラスにいないの」

 確かに、名前がある。しかし、悠夏はハルハルのクラスメイトの名前を全員知っているわけではないので、ピンとこない。母親なら知ってるだろうか?

「お母さん、毛利君って知ってる?」

 いらない情報だろうが、母親からの要望で、ハルハルからは”お母さん”って呼ばれたいからと、私も”お母さん”呼びである。台所でお皿を洗っていた母が、水を止めて皿洗いを中断し、エプロンで手を拭いてくる。

「そのエプロンで手を拭かないで……。てか、私のお気に入りなんだけど」

 高校のときに買ったお気に入りのエプロンである。実家に置き忘れた結果、母が使っている。

「終わったら洗濯回すから」

 悠夏は言いたいことがあるけど、一旦モヤモヤをゴミ箱に捨て、本題へ。母がしおりを見て、

「うーん。知らないねぇ。先生のミスじゃ無い?」

 その可能性はある。先生に聞けば、一発で分かるだろうから、次にマーの話に。カーは納得できないような態度だった。

「この写真に、知らない子が写ってる」

 母が写真を見てすぐ、

「あんた、誰とでも話してすぐ忘れるから、そこで会った子じゃないの?」

 そう言って、台所へ戻る。悠夏は写真を見るけど、マーと5人ぐらい写っており、その中の一人らしい。怪奇現象だなんて、言い過ぎだろう。

 名簿については、母親がミスだと言わなければ、私の推理は冬休み明けからの転校生だと思った。けれど、そもそもこの時期に転校してくるのか? もう卒業間近のこの時期に。でも、家庭の事情でということは十分考えられる。マーの写真はよく分からない。


 お昼過ぎに中学校を訪ねると、担任の西原先生が職員室でお仕事中だった。運動場では、野球部とサッカー部が練習しており、正月早々子ども達は元気だなぁと感じた。

 西原先生は、美術部の顧問をしており、年賀コンクールの結果を確認していたとのこと。

 悠夏は応接室に案内され、西原先生から事実確認を行う。

「この写真に写っている子、ご存じでしょうか? 遙真から、知らない子が写っているって言われて」

「修学旅行のときに撮った写真ですね。仲良く写ってますが……、分からないですね」

「遙華からは、名簿に知らない子の名前があるって言ってましたが、”毛利(もうり) 貴之(たかゆき)”君って、転校生ですか?」

 悠夏は遙華から受け取った名簿を見せて聞いたが、西原先生は

「ミスプリントだと思います。多分、昔の卒業生の名前か、テンプレートに記載された名前かもしれません」

「そうですか」

 カーの件は、母の推理通り、ミスプリントということで解決。マーの件は、本人が赤の他人を巻き込んで撮ったのかもしれない。修学旅行の集合写真には写ってなかったし、最初に撮るクラス写真にも写っていなかった。

 さて、ハルハルにはそう伝えて、帰ってゆっくりしようか。そんなことを考えていたら、西原先生が突然

「毛利君の件ですが、ここ最近のクラス名簿にも出てますね……」

「え?」

「ただ、自分の受け持つクラスにそのような子はいないですし……、最近チェックが甘かったのかなぁ」

 と、言って西原先生は首を傾げた。

 それがとても引っかかったが、このときは聞かなかった。


To be continued…

……正月早々からお仕事かな?

さて、貴之君の話は次回にも続きます。

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