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第125話 公私混同せずとも職業病?

 2019年7月13日土曜日、お昼12時の少し手前。

 双子の弟妹、遙華(はるか)の元気がないと、母親から悠夏(ゆうか)へ心配するメッセージが送られ、遙真(はるま)に状況を確認した。

 整理すると、遙華が視聴していた彪牙(ひゅうが) 琉偉(るい)というバーチャルライバーが引退を表明。しかも、発表したライブ配信を最後に活動終了とのこと。引退の素振りは見せず、通常のゲーム実況を行い、その配信の最後で引退を発表したそうだ。SNSでトレンドを見ると、多くの彪牙のファンが悲しみに暮れているとか。所属しているブイラバ株式会社からの正式なコメントは公表されておらず、同じく所属しているメンバーからのコメントもない。

 悠夏はそこまで調べて手を止めた。時計を見ると、12時半。すでに30分ほど経過していた。

「違う」

 悠夏は開いていたブラウザを全て閉じる。することが違うと感じた。彪牙という配信者を調べることではない。単純に、遙華に声をかければ良い。何も知らないフリをして、個人メッセージを送る。

悠夏:{お母さんから 遙華のことを心配するようなメッセージが来たんやけど なんかあったん? 姉ちゃんでよければ 相談にのるけど)

 メッセージを送って、しばらくは既読も返事もない。悠夏は、お昼ご飯の準備をしに、キッチンへ。キッチンと言っても、1Kのキッチンは廊下にあり、何かと小さい。IHクッキングヒーターを最近購入し、部屋で料理することが増えつつある。その際、部屋の煙感知器には注意しつつ。ただ、昨夜の残ったカレーを温める程度なら、広さは関係ない。ガスの元栓を開き、点火してカレーを温める。

 白米は、昨日炊いた残りをラップに包んで冷蔵庫に入れていた。白米を電子レンジで温めて、カレー皿を準備する。

 そろそろ温まったかなと火を弱めると、スマホの通知音が鳴る。遙華からの返信だ。

遙華:{なんでもない。もう大丈夫)

 大丈夫と言われると、それ以上返す言葉はないが、念のため

悠夏:{わかった。けど、なにかあったら相談して)

遙華:{うん。ありがと)

 本人は大丈夫そうだ。一過性によるもので、今は気持ちを整理したいだろうし、こちらからこれ以上聞くのは野暮だろう。

 芸能人や配信者、作家や絵師、その他諸々、今活動している人がいても、いつか別れが来るだろう。その人がいつまでそれを続けるかは分からない。生涯現役の人がいても、その人が生きている間だけ。引退について、ファンならまだしも、外野がとやかく言ったところで、決めるのは本人だ。ただ、温かい声援でその人の続けるモチベーションが上がるかもしれない。

「別れ……か」

 悠夏はそう呟いて、コンロの火を止めた。カレー皿に白米を載せ、カレーを掬う。残っていた分を全部入れたが、丁度良いぐらいの量だった。

 部屋に戻って、牛乳をコップに注ぎ、中辛のカレーを食べる。カレーを食べるときは、なんとなくお茶よりも牛乳とかお水のイメージがあり、なんとなく。

 半分ぐらい黙々と食べていると、スマホから通知音がした。遙真からだった。

遙真:{あんまりこういうの信じないけど)

 と、URLのリンクが送られてきた。『彪牙 琉偉の引退理由とは!?』というタイトルのまとめ記事だった。長い前置きはすっ飛ばして、一気にスクロールして結論まで読まずに流す。この記事によると、ホントかどうか分からないが、書き手の臆測の可能性もあるが、彪牙の親が急病で入院し、今後の配信が難しいためらしい。 定額料金を必要とするサブスクリプション方式で視聴可能な限定配信で、親の病状が悪化していることを示唆するような発言があったらしい。サブスクの限定配信の内容は、口外しないように企業側や配信者からお願い事や決め事として禁止していることが多いそうだ。つまり、この記事はホントか嘘か知らないが、マナー違反だろう。月々の定額料金を支払って視聴している人だけに公開しているのであって、その内容を口外するのは……。

 ただ、今の問題はそこではない。遙華から相談も特にないし、母親からの連絡も無い。この件はここまで。

 悠夏は深入りせずに、調べることをやめた。序盤で、そこそこ調べていたが目的がすり替わっていることに気付き、やめた。気になったことをとことん調べるのは、仕事のときだけでいい。

悠夏:{遙華がもう大丈夫って返事したけど なにかあったら知らせて)

遙真:{何かあってからだと遅いと思うけど)

悠夏:{じゃあ 事が起きる前に)

遙真:{エスパーじゃないとムリ)

悠夏:{遙華は問題ないと思うけど)

 母親は心配してそうだが、悠夏と遙真はすぐに調子を取り戻すだろうと、あまり干渉せずにいる。

 実際、3時間ほど経つと、遙華はいつも通りに戻った。母親から「ありがとう」とお礼のメッセージが来たが、悠夏と遙真は「何もしてないよ」と返信した。母親からは「それでもありがとう」と。


    *


 翌14日。遙真から、またURLのリンクが送られてきた。

遙真:{トレンドになってた。遙華は機嫌良さげ)

 リンクは、ブイラバ株式会社が公表した文書だった。内容は、昨日引退を表明した彪牙 琉偉について、本人の家庭事情により配信活動を継続することが困難になり。と理由を書きつつ、会社としては引退ではなく活動休止として、継続できないかどうか調整中であるとも書かれており、引退は決定事項ではないらしい。本人の考えを尊重しつつ、会社としてバックアップできないか模索しており、正式なご報告はしばらくお待ちくださいと、締めくくられていた。

 家庭事情とだけ表記されており、例の情報が本当かどうかは、分からない。あまり踏み込んだ表現をしていると、名誉毀損や業務妨害に当たるだろうか。

 さて、トレンドはいつの間にか別の話題になっていた。野球選手の引退と人気アイドル歌手の卒業だった。


To be continued…


今までで一番当日ギリギリの予約投稿。眠たいなか書いたので、後日見直すかもしれないです。

今回、珍しく思ったように書けなかったなぁ。そんなときもあるか。

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