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第124話 引退

 被害女性の樹神(きがみ) 月苗(つきえ)は、下酉(しもとり) 衣世(いよ)と面識があった。下酉 拳丞(けんすけ)がそう証言した。拳丞は、母親の衣世に対して、妻の小蝶(こちょう)へ暴行している件をやめるように言ったが、母親は「あなたのためにやっているの」と言って、やめなかった。それに、毎日のことが筒抜けだった。調べても盗聴器や盗撮の類いは見つからなかった。ある日、母親が隣人の樹神と会っているところを目撃し、情報源が樹神であることを知った。そこで、樹神に嘘を言って接触し、廊下から会うと、誰かに見られるかもしれないと適当なことを言い、ベランダの仕切り板を簡単に外せるようにした。

 そこから拳丞の考えと行動が暴走した。早く何とかしないと焦る気持ちが先行し……

「ベランダの細工したのは、自分です。柵が前後する程度で、驚かせつもりでしたが、まさか落下するなんて……」

「本当にそうか? 驚かせるにしても、なぜ欄干に細工をする必要があった? 最初から殺すつもりじゃなかったのか?」

 末野原(すえのはら)警部が追求すると、拳丞は黙った。すぐに否定しないと言うことは、その可能性も分かっていたということだろうか。

「冷静に考え……。いえ、普通の、あたりまえのことを考えれば、柵が落下して他の人を巻き込む危険性や転落のことも分かっていたはずでした。でも、あの数日の自分は何かに取り憑かれたかのように必死でした。後先も考えずに……」

「樹神さんへの犯行を認めるんだな?」

「はい……」

 拳丞被疑者は、終始下を向いて、その後の聴取にも全て誠実に答えた。その証言からすぐ、小蝶被疑者が新たに証言した。

「ベランダを開けていて、転落の悲鳴はすぐに分かりました。拳丞さんの表情がみるみる曇り、事情を聞きました。パニックになった彼を落ち着かせようとしましたが、その際に2人とも打ち所が悪く、意識を失ったのですが……。彼のためと思い、言うかどうか阻んでいましたが、やはり彼は正直に言ったんですね……」


    *


 2019年7月13日土曜日。

 悠夏が目を覚ますと、目覚まし時計は11時過ぎだった。休日だが、眠くてまだ布団から起き上がりたくないが、この眠気は寝不足なのか寝過ぎなのか。

 スマホに通知が届き、左目は瞑ったまま、右目でスマホの画面を見る。最大手の動画配信共有プラットフォーム”TubeLiving(チューブリビング)”アプリの配信開始通知だった。

「起きるかぁ~……」

 悠夏はゆっくりと起き上がり、先程の通知をタップする。すると、アプリが立ち上がり、ライブ配信が再生される。女性配信者のライバーが有名曲を歌っており、コメントが盛り上がっている。

 悠夏はスマホを持って、洗面所へ。濡れないところにスマホを置いて、歌を聴きながら、まずは寝癖で乱れた髪を直す。

 悠夏は(なが)ら作業として、ライバーの配信を聞くことが多くなっていた。元々は、弟妹の影響だが、事件捜査で所謂実況プレイ動画を見たこともあり、なんとなく見ている。テレビを付けると、ニュースが流れて仕事モードになりそうで、最近はテレビを付けっぱなしにせず、ライバーの配信を見てリラックスしている。特に、雑談や歌の配信が中心だが、そういった配信がなければ、代わりにゲームのプレイ実況を流している。

 身なりを整えていると、コミュニケーションアプリ”トーカー・メッセージ”の通知音が鳴る。悠夏は気になって、ライブ配信の視聴を一旦止めて、メッセージを見る。相手は、母親からの個人メッセージだった。

佳澄(かすみ):{ちょっといい? 遙華(はるか)が)

悠夏:{遙華がどうかしたん?)

佳澄:{なんか元気がないみたいで)

悠夏:{何かあったん?)

佳澄:{わからない。おしがどうこうって)

悠夏:{?)

 悠夏は、なんとなく分かったような、分からないような、微妙な感じになり、弟に聞いた方が早いと思い

悠夏:{遙真(はるま)に聞いてみるね)

 とだけ送って、弟の遙華に個人メッセージを送る。

悠夏:{遙華が元気ないって、お母さんから聞いたんやけど、なんかあったん?)

 すぐに既読になり、返事があった。

遙真:{遙華がよく見とった配信者が引退するけん、泣いとる)

悠夏:{あぁ……なるほど)

遙真:{Vらしいけど)

悠夏:{バーチャルってやつ?)

遙真:{そう)

 動画配信共有プラットフォームで活動する人は、動画を投稿する投稿者と、生放送を主体とする配信者ライバーがいる。さらに、最近では2Dや3Dのキャラクターの姿で配信する”バーチャルライバー”が増えつつある。カメラなどを用いて、配信者の顔の動きをトレースし、キャラクターをリアルタイムで動かしている。バーチャルライバーは、通常のライバーや動画投稿者と同じく、個人で活動するだけでなく、企業に所属して活動していることもある。

 悠夏も有名どころなら、耳にしたりSNSで見たりしたことはあるが、正直そこまで詳しくはない。

悠夏:{誰か分かる?)

遙真:{調べな分からん)

 そういえば似て非なるものかもしれないが、直近のニュースで、有名な俳優が半年前に共演した女優と結婚を発表し、さらにその女優が引退を発表した。そのとき、多くの人が結婚と引退に驚き、ショックで休みますというようなニュースも流れていた。

 悠夏としては、そういった経験はないが、そんな風に受け取る人もいるのだと、肯定的であった。どう思うかやどう受け取るかは、人それぞれである。ただ、それをファンがあれこれ批判的な意見をするのはあまり快く思わない。当事者の問題であり、それをファンとは言え他人がどうこう言うのは、あまり理解できず、できれば目にしたくない。

 自分の妹はどちらに転ぶのだろうかと、心配になってきた。批判的な態度にならなければいいが……。いや、それよりも本人のメンタルも心配だ。

 何年か前に、人気アイドルが引退を発表して、その原因が同じグループに所属するメンバーにあり、双方に殺人予告が出て、問題になったことがあった。当時はまだ警察官になる前のため、ニュースでしか知らないが……。

 5分くらいして、遙真からURLのリンクが送られてきた。どうやら、企業に所属している彪牙(ひゅうが) 琉偉(るい)というバーチャルライバーのようだ。キャラクターとしては、(ひょう)や虎のイメージから擬人化した男子大学生といったところだろうか。所属している企業は、ブイラバ株式会社であり、彪牙の他に10名程度加入しており、新規の募集もしているようだ。

遙真:{深夜から今朝にかけての配信で、引退を(ほの)めかしたとかなんとか)

悠夏:{遙華がどんな様子か分かる?)

遙真:{遙華の部屋を(のぞ)けってこと? そんなんしたら、殺される)

悠夏:{そこまで言ってないけど)


To be continued…


あぶないあぶない。路地裏の圏外のK3を優先してたので、ストックが切りの良い途中までで、残り半分が間に合わないところでした。次の話を何にしようかと考える暇も無く、なぜか引退の話を。

2019年7月時点って、バーチャルライバーが増えていく年ですかね? Vを本当に見始めたのは去年の夏からなので、あまり詳しくはないです。当時は何名か有名な人を知ってはいたけれど、友人から薦められた一部分をたまに見たぐらいでしょうか。気付いたら、普通の動画配信さんも所謂"受肉"ってやつをしてて、明確にバーチャルライバーと一般的なライバーに何かしらの境界はあるとは思いますが、個人的にはあまり切り分けてないですね。結局、演じていようがその人だし。

で、唐突に書いたのでこの先どうなるか今まで以上に不透明です。さて、次回どうしよう。来週の自分に託します。引退とか○○ロス的なのって、ちょくちょく耳にすることが多いですが、そのあたりをなにか書けるかなぁ……。他のネタはあるけど、これは急に始めてしまったので。急いで書かなきゃと思って

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