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第1話 警部がロボット

最初の舞台は2018年だけど、現在とは異なる世界です。

この当時では、まだ開業していない施設や路線なども出てくる予定です。

長くゆっくりと進めていきますので、よろしくお願いします。

 2018年12月。世の中では、クリスマスソングが流れ始めるころだ。警察学校の教養などで、警察官にはすぐなれない。厳密的に言うと、何年とか何ヶ月とか決まりはあるが、彼女の場合は、上層部の考えで通常とは異なる道を歩むため、このような時期になったのか。とはいえ、あくまでも推測でしかない。

 佐倉(さくら) 悠夏(ゆうか)。彼女は、今年で25歳だ。大学卒業し、警察官となった。警視庁にて、働くにあたり、第一志望は捜査一課であった。志望動機は、面接の時に何度も聞かれた。「私怨があるか」とか、「事件の被害者、もしくは被害者と知り合いではないか」とか聞かれたが、警察なら、裏でそれぐらい調べているのでは無いだろうか。

 この東京都には、4年前まで警視庁と警察庁が存在した。ドラマでは、よく2つの対立が描かれることが多く、そのフィクションと現実をまぜこぜにしてしまった一般の方々が、騒動を起こした結果、警視庁と警察庁、さらに警察署は事実上の縮小を余儀なくされた。そして、未解決の事件を棚に上げて、警察が非難され、警察のイメージはかなり下がった。しかし、昨年、とある海外にて日本の警察官が活躍したことにより、海外から感謝状を受け取った。これにより、警察のイメージは多少回復しただろう。というか、非難しているのは一部の人だけで、他の人はイメージがアップダウンしていないのではと思うが、思い込みは厳禁である。

 そこで、今年警視庁がとんでもないことを発表した。イメージ戦略。いや、むしろ、マイナスでは……?

 私の異動先は、捜査一課ではなく、”特課(とっか)”という組織変更でできた新しい部署であった。最初、”とくか”と読んだが、正式には”とっか”らしい。しかも、所属は2人である。

 デスクに座った私は、周りを見渡す。某ドラマみたいに、ここから捜査一課は見えない。広い元会議室に、デスクが2つあるだけだ。部屋の端っこには、ロボット掃除機がある。近づいて確認すると、偶然にも、自分の部屋にいるロボット掃除機と同じ機種だ。すると、音が鳴って、掃除を始める。近づきすぎた悠夏は、すぐに避ける。

「なんで、人のいる時間にスケジュールされてるの……?」

 時刻は、お昼の3時である。すると、ドアがノックされる。

「はい」

 誰か分からないけれど、お偉いさんかもしれない。髪を整え、姿勢を正すと、扉から出てきたのは、

倉知(くらち)副総監……」

 まさかの上層部の人が直々に訪問し、これには驚きである。さらに、モーター音を唸らせながら歩いてくるロボット。その後ろには、同年代っぽい若手の兄ちゃんがいる。

「佐倉巡査。君には、警視庁の顔になってもらおうと、このような人事命令を下した。12月より新設された、この通称”特課”を存分に活躍の場にして、精進してもらいたい。いや、あまり時間をかけてゆっくりとするつもりはない。結果が出なければ、この課は4月末をもって、解体される」

「えっ……」

 副総監の説明に思わず声が出た。解体されたら、私はクビになるのだろうか……? すると、心の声が聞こえたのか、倉知副総監は

「心配しなくていい。少なくとも、ここが解体されれば、君は捜査一課への異動を考えている。ただ、そのときに、警察という組織が継続されていればの話だが……」

「えっと……、どういうことでしょうか?」

 話が見えない。特課が活躍しなければ、警察がなくなる? そんな馬鹿な話があるのだろうか。

「これは、警察として威信をかけた一大プロジェクトだ。メンバーは、佐倉巡査とこのロボットである警部だ。2人には、4月までの5ヶ月弱。さまざまな事件を解決……、ではなく、その捜査にて活躍して欲しい」

「私とそのロボット1台で……ですか?」

 人手が足りないですよとまでは、さすがに言えなかったが。

「何か勘違いをしていないか? これは、警察の威信をかけたプロジェクトだ。他の部署と連携して進めて欲しい」

 そう言われて、すこしホッとした。人材の墓場とか窓際部署ではないようだ。周りに頼れる。マイナスのイメージは、刑事ドラマの見過ぎか。

「しかし、倉知副総監。活躍とは一体……」

「市民の安全や生活を守ること。これ以上のことがあるか? 犯人の逮捕は、確かにそれに直結するが、他の部署と連携すれば良い。特課は、すべての事件に関われる部署だ。ただ、余程の事案になると、話は別だがな……」

 おそらく、国レベルの話だろう。そんな部署のお仕事まで出来てしまうのか……。末恐ろしい……。

「さて、彼の紹介をしようか」

 そう言われて、悠夏の視線は同年代の兄ちゃんに行ったが、副総監は

「彼は、ロボットでありながら」と話始めたため、視線をロボットへ修正。注目対象が違ったようだ。

「これまで、いくつかの事件にて活躍している。ただ、奇抜な発想により、その逆になった事件もある……。諸刃の剣とでも、言えようか」

 フォルムは、高さが120センチぐらいでそんなに丸っこくはない。かといって、かっこいいかどうかは不明。

「名前は……、君が付けていい。我々は鐃警(どらけい)と呼んでいたが、彼は気にくわないらしい」

 すると、先ほどまで黙っていた警部が

「嫌ですよ。もっとかっこいい名前がいいです」

「一応、未来性や国民に親しまれているから、その名前にしたのだが……」

 そう言われて、悠夏も分かった。未来から来た青いロボットだ。確かに、知名度は高い。

 副総監から、A4の紙を一枚渡された。何が書かれているのか気になり、すぐに見てみると、特課の名簿であった。記載は、顔写真付きで2名。警部の名前には、”鐃”という漢字が使われていた。

「何か、いい名前はあるか? 上層部だと、どうしてもネーミングセンスが、何々"くん"だとか、昔の作品から取った名前になってしまって……」

「そうですね……、例えば、ペッ」

「嫌です。その名前になると、紛らわしいですよ。そこら中の店頭にいる白いロボットが、一斉にこっち向きますよ」

 警部の指摘通り、確かに同じ名前にすると、ややこしい。某携帯会社の商標にも引っかかりそうだ。

「ちなみに、会議でも同じ名前があったが、我々が出したのは警部の方だな」

 そう言われて、頭に音楽が流れた。確かに、同じ名前だ。

 悠夏は、先ほどの名簿をもう一回見ると、警部の名前にもう一つ書かれているのが気になった。

「この名前……、泥沼 太郎ですか?」

「開発者が泥沼という名字だったから、フルネームはそれだが、専らその名前は、表に出ていない」

 つまり、泥沼警部と呼ぶのがいいのだろうが、何も知らない人が耳にすると、名字では無く、嫌みとして関連付けるおそれがある。確かに、あまり表に出さない方が、良いのかもしれない。

 ところで、先ほどから一言も発しない若手の兄ちゃんは何者なんだろうか。聞いてみようかと思ったら、どこからか物の当たる音がする。勢いが強い。ふと警部の足下を見ると、ロボット掃除機が回避せずに何度も衝突していた。ロボット掃除機よ、それはゴミじゃないぞ。悠夏は必死に笑いを堪える。

 結局、名前の話は放置され、私はこの特課において、1台のロボット、警部とのお仕事が始まったのです。しかも、警察の命運に関わると言われ、一体どうなるのでしょうか。


To be continued…

すでに、12月から連載している『路地裏の圏外 龍淵島の財宝』にて、悠夏と警部が先行して登場しています。そちらも楽しみ頂ければ、と思います。

第2話以降も、よろしくお願いします。

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