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9話

つい先程息子と最後の別れをした。

最後は愛する人と一緒にいたいと言っていた。


私は彼に愛を見せてあげたかった。

生命の奇跡を見せてあげたかった。

その名前のように、この宇宙で最後輝けるように。

私と妻が必死に生きたように、君たちも必死に生きてくれた。

それがすごく嬉しかった。




息子が家を出たあと移民団に最後のメッセージを送ったが結局返信はなかった。

予想通りの結果ではあったがどうしても期待してしまう自分がいる。まだ宇宙に生存者がいるということを。






太陽フレアの活性化により、地球に異変が起こったのは今からおよそ200年前。

地球は急激な気候変動に見舞われた。

作物の不作による大飢饉の発生。

すでにで化石燃料は枯渇していたこともあり、人間の主要エネルギーは植物に依存するものだった。

しかしこの気候変動により、多くの緑は失われる。

大陸は砂漠化し、人々は緑を求めて争いあった。

各国は軍事行動に移行し、

自国の利益のため世界は戦争へと突入した。

長く、激しい戦いだった。

激しい爆撃により都市は壊滅、大地は焼け野原となった。

皮肉なことに人類は自然を追い求めた結果、逆に自然を破壊してまう選択をしてしまったのだ。

世界人口は激減した。

ついには戦争もできないほど消耗しきり、文明は衰退する。

そのような状況が変わったのがちょうど100年前。

次第に巨大になる太陽フレア。

その規則性が解明され、地球滅亡の年が導き出される。

それが今年の冬であった。


これを契機にようやく人類は力を合わせるようになる。

当時かろうじて国家の体を成していたアメリカを主導に科学者機関による研究が行われ、

惑星移住計画は急ピッチに進められた。

世界中の天才たちが集まり生存可能な惑星の探索、長期の生命維持活動が可能な宇宙船の開発が行われる。

残りある資源を最大限に活用して、出来るだけ多くの人口が乗せられるよう巨大な船団が形成された。


25年前、数千万人を乗せたこの大移民団がこの地を去った。


しかし私はそれに乗らなかった。

信用できなかったのだ。

もともと計画が成功する確率は高くなかった。

だが一部の声の大きな科学者と政治家たちがその確実性を民衆に広く訴えた。

調査隊の生存を広く訴えた。

その結果、このような大規模な移民計画となってしまったのだ。


彼らの経過を待ってからでも遅くはない。

私はそう思った。


計画は順調に思えた。

着々とコロニーの建設が進んでいるという情報を知り、次は私たちの番かと準備を整えていた矢先の出来事であった。

彼らの通信が途絶えたのは移民団が地球を脱出した7年後のことである。

結果としてその惑星は人間が住めるに適していなかったのだ。


すでに妻のお腹の中には子どもがいた。


私はなんとかして生き残るすべを探した。

移住可能な惑星の模索。

地下シェルターへの避難。

だがそれら全てが不可能だと悟るのに時間はかからなかった。


私は地球で死ぬ覚悟ができた。


もとよりどうせ死ぬのなら宇宙船の中よりも地球の方がいいと考えていたから腹をくくるのも早かった。


しかし残っている人たち、そして産まれてくる子供たちには本当のことは告げないと決めた。

それは、彼らには希望を失って欲しくなかったからだ。

最後その死ぬ時まで、人類の歴史に夢を膨らませて欲しいと思ったからだ。


だから私は他の惑星に人類が住んでいるど嘘をついた。

それが例え彼らを傷つけることになろうとも、子供たちはきっと人類の希望を夢に死んでいくのだろうと思った。


だから、忘れちゃいけない。

お前たちが生きていた記憶を。

俺たちが生きていた記憶を。

この生命の生きていた記憶を。




私は妻や息子に感謝したい。

地球でお前たちと出会えて本当に良かった。

今まで本当にありがとう。



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