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3話

私の生まれ故郷はこの街よりもっともっと山の向こう。

昔は人がいっぱいいたけどみんなそれぞれ自分たちの生きる場所を探した。

宇宙へ行くのか、地球に残るのか選択して私の親は地球に残った。

残ったというより残された。

惑星に行けるのはお金持ちや能力のある人間だけで、そのほかは抽選によって決められた。

私の親はお金持ちでもないし、ただの一般人だったから抽選でしか希望はなかったけど、結局それにも選ばれたりはしなかった。

私のお母さんとお父さんはすごい能天気な人だから地球に残ることが決まった時も仕方ないってすぐに諦めたらしい。

私が産まれたのもそんな両親の性格だったからだと思う。


移民計画に漏れた人はより人のいる街に移住した。

それがこの街。

私と光が出会った街。


家から海が見えて、春になると桜が綺麗に咲く。

荒れた土地が大半の中、この街は他よりも何倍も綺麗な場所。

そこで出会った始めての友達。


何年か昔、光との夢を語り合った。






「光はさぁ、何か将来やりたいこととかあるの?」


「えー、なんだろうなぁ。

もう俺たちあと5年で死ぬんだよ」


「まぁ、そうだよね」


「昔は私たちの年齢になったら中学校っていうところに通ってたんだよ」


「うん、本で読んだことあるよ」


「私たちの一緒の年齢の子たちがいっぱいいて、将来のために勉強したり、夢のために努力したり」


「うん」


「昔はいろんな職業があって、みんないろんなことに夢膨らませてたんだよきっと」

「でも、私たちって何なんだろうね。

将来やりたいことがあるわけでもないし。

あってもやれないし」


桜がぽつぽつと咲いている公園のベンチに腰をかけて何でもないような話をする。

光は私の話を真面目に聞いてるのかわからない調子で、ぼーっと青空を眺めている。


やっと口を開いたと思ったら、

「どうせ死ぬなら最後の最後まで生き残りたいな。

それで地球最後の人として死にたいな」

なんていう突拍子のない言葉だったから思わず吹き出してしまう。

「ふふっ、なにそれ」


「考え出したら夢なんて幾らでも出てくるよ。

いろんなやりたいことだってある。

でも出来ないなら出来ないなりに自分の出来ることをやる。

あと5年で死ぬなら、その中でできることを見つけるよ」


へぇ、たまにはいいことも言うんだなぁ

そんなことを思って一緒に青い空をだらんと見上げた。


「どうせ、昔の人や惑星にいる人たちみたいな夢は見れないんだから、どうせなら俺たちだけしか出来ない夢を見ようぜ。

それが地球で最後の最後まで生き残ることだよ」


「えぇー。じゃあ私も最後まで生き残る!」


「それじゃ俺が最後じゃ無くなっちゃうだろ。美咲は地球で2番目に遅く死んだ人になるんだよ」


「やだよ。光が2番目だよ」


どうでもいいような会話だけど、将来の夢っていうものが何となくわかった気がした。

何年も前に本で読んだ人間の営みっていうやつが私たちには当てはまらないことはわかっている。

学校の先生もいないし、同級生もいない。

だからなにを目標にしていいのかなんてわからないけど、

光の言っていることに乗ってみようかなと思った。




「それにさ」


「うん?」


「人は生まれ変わるんだよ。

だから、出来ないと思ってる夢も持ったっていいんだよ。生まれ変わった時に叶えればいいだけなんだから」


「本当に生まれ変わるのかなぁ?」


「生まれ変わるよ。きっと」


唐突にそんなこと言うから冗談なのか真剣なのかわからなかったけれどすごく落ち着いた雰囲気で言うものだから何故か納得してしまった。

生まれ変わったらそれは嬉しいことだ。

でも私はそんな時のことまで考えられない。

私の今の夢は光とずっと一緒にいることかな。

この街に来て、光と出会って、それがわたしの幸せだから。

だからあと5年、光と一緒にいることがわたしの夢。






ぼーっと空を眺めていたらあの時の記憶が思い出される。

あれからもう4年とちょっとたったのか。

今も光とは相変わらず仲がいいし、ずっとに一緒にいるからもう少しで夢が叶ったことになるのかな。


もうすぐ地球も終わり。

地球の終わりの時が観れるのは私達だけ。

そうやって考えると案外わたし達は不幸な人なんかじゃない気がする。

これも光の考えに染まって来ているだけなのか、それでも昔よりも漫然とした不安は無くなっているのは光のおかげ。

残された地球で光と出会って、そんな奇跡が目の前に起きていること。

それが私の夢そのもの。








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