第8話「洞穴の幻」
こんにちは、オロボ46です。
今回は線路を渡っている所から始まります。
それでは、どうぞ。
線路をひたすら歩いていると、目の前に光る何かを見つけた。
それをを握ろうとすると、フワッと消えてしまった。
だけど、しばらくするとまた光が現れた。
私はこの光がどこからやって来るのか疑問に思っていると、
今度は光が一人で消えた。
確か......あっちの方からやって来た......?
私は光がやって来た方に向かって進んで行った。
かなり長い距離を歩いた気がする。
周りを見渡すと、森の中にいることがわかる。
普通の人間ならとっくに疲れてしまっている距離だけど、
マボロシである私には疲れることなんてなかった。
今までもこうして、長い距離を歩いて来たのだから......
やがて、洞穴のような場所が見えてきた。
洞穴の前に大きな人影があると思ったら、なんと赤い皮膚を持った鬼だった。
鬼は金槌片手に眉間を寄せて何かを念じており、力よく目を開いたかと思うと......
光が生まれた。
その光も、幻なの?
近くまで来た私は鬼に尋ねてみた。
「......!!」
鬼は鋭い目付きで私を見た。
私の予想通り、この鬼も意思を持ったマボロシのようだった。
鬼は私を見下ろしてこう言った。
「俺の姿が見えるのかい? お嬢ちゃん?」
鬼のマボロシは先ほどの光の幻について教えてくれた。
「人間は想像することで幻を産み出す。
それなら意思を持ったマボロシでも産み出せるのではないかなと思ってな」
そうなんだ......
「そういえば、お嬢ちゃんはなぜこんなところにいるのかな?」
私はいつものように旅をしているのだと答えた。
「そうか......旅......ん? まさかこの子があの男の言っていた......」
鬼のマボロシの表情が少し険しくなった。
「......」
しばらく鬼のマボロシの表情は変わらなかった。
口も少しも開かず、まるで何かに悩んでいる様子だった。
私は鬼のマボロシの顔を覗きこんでどうしたのと聞いた。
「え......? ああ、ちょっとな......ごめんな、怖がらせてしまって」
鬼のマボロシは私に向かって頭を下げた。
私は全然気にしていないというと、鬼のマボロシは安心したように笑顔を見せた。
「そうか......お嬢ちゃんは俺のことは怖く思わないのかい?」
私は首を振ると、鬼のマボロシはこう説明してくれた。
「実はな、お嬢ちゃんがくるずっと前に白衣を着た男のマボロシがやって来たんだ。
ところが、俺の姿を見て一目散に逃げてしまったんだ。
無理もないと思っているのだが......」
鬼のマボロシはどこか悲しげに言っていた。
私は白衣を着た男のマボロシの言葉に少し引っ掛かった。
そのマボロシの特徴を聞くと、
幻研究所で出会った研究者のマボロシに違いなかった。
でも......もしかして、私に頼んだのって......
あの研究者のそばに居たいんじゃなくて、怖かったから......?
そこまで考えて、私は研究者のマボロシに頼まれたことを思い出した。
少なくとも研究者のマボロシはこの近くまで来ていた......
それなら、目的の遺跡ってもしかして......!?
私は鬼のマボロシに聞いた。
「そうか、その男に頼まれてか......
それならちょうどいい、俺は今からお嬢ちゃんにこの奥を見せる所だったんだ」
そう言って、鬼のマボロシは洞穴の奥を見つめた。
「お嬢ちゃん......本当に優しいんだな......」
私は、少し照れ臭くなった。
洞穴の中で、私は見せてくれる物について鬼の幻に聞いてみた。
「実を言うと、この奥はなにもない」
......え?
「実際には、何もないということだ。
ただ、不思議なことに意思を持ったマボロシが奥にいるのだ」
もしかして、物?
「そんなところだ......でも、よくわかったな」
私は背中のバックパックからハンバーガーを取り出した。
都会で、旅人の男性が産み出したマボロシだ。
食べ物なのに、消えない何かしらの意思を持っていた。
「......なるほどな」
鬼のマボロシは納得した様子だった。
私たちは、ついに洞穴の奥まで来ていた。
「ついたぞ、ここだ」
鬼のマボロシが指差す方向には、壁画のようなものが浮かんでいた。
そこには優しそうなおじいさんに、執事が......
私は声が出なかった。
その執事の顔に見覚えがあったからだ。
忘れもしない......意思を持ったばかりの私の目の前に現れたあの男だったからだ。
"それでは、私はこの位で失礼させていただきます。
今度お会い出来るときを......楽しみにしております......"
あの時の言葉が、頭を過った。
「あの白衣の男の前に、そいつが俺の元に来たんだ」
鬼のマボロシが横から説明してくれた。
「その男は俺にこう言ったんだ。
"旅でこの地に訪れたマボロシが訪れたら、この紙を渡してください"とな」
そう言いながら鬼のマボロシは私に紙を渡した。
その紙のマボロシは、地図のようだった。
地図のマボロシに示された印、
あの男のマボロシは、私がその場所へ行くことを望んでいるようだった。
いかがでしたか?
次回で最終回にしたいと思います。
12月16日(日)11時15分~15時投稿予定です。
ぜひ見てくださいね。