第6話「研究者の幻」
こんにちは、オロボ46です。
最近、なぜかやる気が少なくなってきております。
(ウォームスの時もこんな感じだったな......)
ただ、最終話までは頑張るつもりです。
今回はとある研究所の前から始まります。
それでは、どうぞ。
その建物は、非常に興味をそそらせる建物だった。
人通りが少ない場所にあるこの建物の看板にはこう書かれていた。
"幻研究所"
正直、病院で出会ったマボロシの男性の話はよくわからない部分もあった。
マボロシはなぜ意思を持っているのか......
私もその一人であるのに、いまだによくわからない......
この建物の中で、それについてわかるかもしれない。
私は建物の看板に書かれていることを信じて、中へと足を進めた。
......でも、まさか名前だけ......ってないよね?
中はよくわからない機械が半分以上占めていた。
この建物に入ってからまだ人と出会ったことがない。
私はこの前のような廃墟ではないことを祈りつつ、足を進めた。
やがて、一人の男性の姿が目に入った。
ボロボロの白衣姿男性は何かに夢中のようで、
机に向かってなにやら楽しそうに笑っていた。
私は何をしているのかが気になって横から覗いてみたくなった。
「何をしているんだい?」
後ろから声をかけられて、私は後ろを振り向いた。
そこには、先ほどの男性がいた。
ただ違うのは、ボロボロの白衣じゃなくて綺麗なタキシード姿だったけど。
「なるほど......君は旅をしているのか......」
男性の言葉に私は頷いた。
「先ほどは驚かせてすまなかったね。
私は先ほどの研究者の男が産み出したマボロシだ。
どうやら、世間に実力を認めてもらえた自分を想像した姿が元らしい」
私は、研究者のマボロシの話を聞いて少し親近感が沸いた。
産み出した人間の自分の姿が元になっている......
旅に出たいと願った少女と同じ姿をしている私も、
似たような存在だと思ったからかな?
「もしよかったら、旅の出来事をすべて話してくれないかい?」
私は、この研究者のマボロシに今までの出来事を話した。
「そうか......ありがとう。実に興味深かったよ」
そういえば、あの人間は何を研究しているんだろう......
私は男性に尋ねてみた。
「ああ......彼は幻について研究しているんだ。
どうやら、幻に感情があると主張しているみたいだ」
人間にもそう考えている人がいるの!?
私は驚いて大声で言ってしまった。
「まあそうなるが......でも、世間は誰も彼を相手にしないんだ」
みんな信じてくれないの?
「ああ、誰もが彼を幻想に囚われた変わり者と噂しているよ。
彼はこの研究所の名前すら、"幻研究所"と大真面目につけてしまうから
この研究所に訪れる者はほとんどいない。
たまに洒落た名前だと思って足を運ぶ者もいるけど、
みんな彼の説を聞くとすぐに帰ってしまうんだ」
研究者のマボロシを聞いて私は建物に入る前の看板を思い出した。
一瞬だけ名前だけだと疑ってしまったが、
話を聞いていると幻の研究に没頭しているのは事実だった。
今のところ研究はほとんど進んでいないみたいだけど......
研究が進んだら、みんな信じてくれるかな......
私は研究者のマボロシに尋ねてみた。
「その可能性は極めて少ないだろう......
マボロシである我々にすらよくわからないのだから......」
だよね......でも、どうして幻を研究しているんだろう......
「そうだな......口で説明するよりあれを見せた方が早いかな」
そう言って研究者の男は黙りこんだ。
......あれって、なに?
「ごめん、あれはこの部屋の引き出しに入っているんだ。
マボロシである我々には開けられないから彼が開けるまで待つしかないね」
「ふふふふ......まだできないか......だが、私はまだ諦めないぞ!!」
不気味な笑いを浮かべながら言っているのは、マボロシではなく研究者本人だった。
「熱中することはいいけど、そろそろ体にも気をつけてほしいものだけどね......」
研究者のマボロシの呟きを聞いて、私は歌手を目指す女性のマボロシを思い出した。
やがて、研究者本人は棚の引き出しを開け、何かの資料を取り出した。
引き出しは開いたままだった。
「よし、これで見えるな......これ見てみて」
私は研究者のマボロシに言われた通りに引き出しの中を覗いた。
中には古ぼけた文字が書かれた一枚の用紙が書かれていた。
「これは彼の祖先がある人物にもらったとされる手紙だ。
この手紙は彼が研究に没頭するようになった......きっかけだ」
私は、手紙に書かれている内容を目で追っていきながら確認した。
その中でも興味深い部分は、以下の部分だった。
"......例の遺跡から見つかった幻についての資料の解読が
ついに終わったのだが......
とても信じられないことに、幻は意思を持たせることが
可能だということがわかった。
私はさらに研究を続けるが、もしこれが可能だとすれば......
自分がこの世で成したいことを託すことが......"
私は研究者のマボロシに遺跡について尋ねた。
「それなら、彼の机の上に遺跡の場所を示す地図が置かれている。
だが、彼が直接確かめに行ったときはただの洞穴でしかなかった......
私も行きたいが......どちらかといえば彼のそばに居てやりたいという
思いが強いようだ......」
そう言いながら、研究者のマボロシは私を見つめた。
「......すまないが、君、頼めるか?」
私はこっくりと頷いた。
私も、幻に関する遺跡について興味が沸いた。
今まで行く宛もなく旅してきだたけど......
ちょっとした旅の理由が、欲しかった所だった......
いかがでしたか?
次回は12月12日(水)16時半~18時投稿予定です。
お楽しみに!