挨拶を終えて
しばらく隔週連載とさせていただきます。
申し訳ございませんがご了承ください……!
シーラちゃんの父への挨拶を終えて。
「すごく緊張した……」
「大丈夫ですか? 私は聖女ですからこれから地位の高い人と何度も会うことになります、私の父程度でここまで緊張されては困ります」
そもそも異世界に連れてこられるという展開がすでに異常なんだが。
「国王とかとも会うのか? 緊張で頭がおかしくなりそうだ」
「そうですよ! ようやく私を娶る方が現れたと報告しなければなりませんからね!」
「しかし本当に俺でよかったのか? 俺よりもっといい人がいるはずだろ?」
「あなたじゃないとダメなんです! それとも何ですか? 私を拒絶してるんですか……?」
シーラちゃんの目が虚ろになる。やばい。
「いや違う違う! もしかしたら俺とシーラちゃんじゃ釣り合わないんじゃないかなって思ってさ……」
「私にはあなたしかいないんですよ……? それに元の世界に戻ったところでもうあなたの居場所はありませんよ……?」
「そうだよ! しかもこの世界ではシーラちゃんしか頼れる人がいない……だからシーラちゃんも他の男に目移りするなよ……?」
「わかってますよ! 私も鬼じゃありません、上野さんと添い遂げることを誓いますよ!」
ヤンデレは面倒だと思っていたが、案外悪くないかもな……それにここまでの美女と来た。
「ところで、俺とシーラちゃんはいずれ結婚……するんだよな?」
「何を言ってるんですか? 当たり前ですよ! いずれ私と上野さんは結婚するんです!」
聞くだけ野暮だった。
「私と上野さんの婚礼の儀は……1ヶ月後ぐらいですね! それまでに上野さんにはこの世界に慣れてもらいます」
「はぁー!? 1ヶ月後って、早すぎるだろ!」
会って間もない人に惚れてヤンデレを発動する時点で破天荒な聖女だとは思っていたが。
「大丈夫ですよ、すぐに慣れます!」
「言葉とか大丈夫なのかよ! シーラちゃんには通じるかもしれないけどこの世界の他の人に通じるとは限らないだろ!?」
「安心してください、召喚する時にあなたの言葉がこの世界の言葉に聞こえ、私の言葉もあなたの言葉に聞こえるようにしてありますから!」
「それで解決するのかよ!」
準備は万全だったようだ。
こうして、俺とシーラちゃんのいわば"異世界のオリエンテーション"が始まるのであった。