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挨拶

 翌日。


「……さん! 上野さん!」


 誰かが俺の名前を呼ぶ声がする。


「……んっ……もう朝か……今何時だ……」


 癖で携帯の時計を確認しようとする。携帯がない。


「何か探してるんですか?」


「多分俺はここに来るまでに色々と持ってた気がするんだが……教科書とか携帯とか定期とか……」


「あっ、そういえばここに召喚するときに鞄を持ってましたね! 私の部屋に置いてありますよ」


「そうか……とりあえず携帯を持ってきてくれないか?」


「ケイタイ……? 何ですかそれは」


「あっ」


 そうだ。ここは異世界だったんだ。異世界の人が携帯の存在など知るはずがない。


「まあ……多分元の世界で使ってたものですよね? でももう役に立たないと思いますよ」


「そうだった……異世界だってことを忘れてた……」


 異世界で携帯とかネットとかを使えたら奇跡だ。恐らく元の世界の友達には通じないだろうが。


「そうだ! 今何時だ!?」


「もう8時ですよ? こんな時間まで寝てるなんて、そんなに疲れてたんですか?」


 普段は6時起きだ。元の世界では携帯のアラームに起こされていたのだが、アラームがないとここまで人は寝られるものなのか……


「今日こそ私のお父様にご挨拶しますよ!」


「そうだったな……しかしもし交際を反対されたらどうするんだ?」


「それはご安心ください、交際を反対しないことは私が保証します」


 シーラちゃんは相当のヤンデレだ、恐らく反対なんてしようものなら父でも殺すだろうな……と思いながら、シーラちゃんに連れられ執務室らしき場所にやってくる。


 シーラちゃんが執務室をノックすると、中から「入れ」との声。


 そこにいたのは、かなり年老いたまさに教皇とも言うべき人物。


「お父様! ようやく私が娶られるべき男性を見つけましたよ!」


「それは真か!? その男がか!」


「そうなんですよ! 私はこの方と生涯を共にします!」


「……君がシーラを娶ってくれるのか?」


「はい……私は異世界から来た上野龍と言います、しかし元の……!」


 突然声を出せなくなってしまう。


「どうした?」


「いえ……何でもありません……異世界から来たのですが行くあてもないところをシーラ様に見初められたのです」


「そうか……しかしシーラは聖女としては優秀なのだがこの性格なので男性には縁がなかったのだよ、しかし本当に君はシーラに相応しい男性なのか?」


「ご心配には及びません、これをご覧ください」


 シーラちゃんがそう言うと石のようなものを取り出す。


 石を俺に近づけると、その石は強く光を放ち始めた。


「これは私の心と共鳴する者を探すための石です、この石がここまで光る男性は彼が初めてです」


「そうか! この石が反応する男性は異世界にいたということだったのか!」


「お父様に作っていただいたこの石はとても役立っています、こうして私が娶られるべき男性も見つかったことですしね!」


「聖女たるシーラ様に相応しい男性と認めていただいて光栄です、これからもよろしくお願いします」


 元の世界の礼儀作法が通じるかどうかわからなかったが、何とか今は通じているようだ。


 しかしどうやらこの教皇のシーラちゃんのお父さんは異世界の存在を知っているようで助かった。


「上野君と言ったか、私はアルバート・セイクライズだ。これからシーラを頼んだぞ。教会の皆には私から伝えておく」


「ありがとうございます」


 なんとかスムーズに挨拶は進み、2人は執務室を後にする。





「よかった……もう心臓の鼓動が止まらないよ」


「だから大丈夫ですって! 私は聖女ですよ? 聖女が認めた男性なのですから安心してくださいよ」


 ひとまず最初の難関を抜け、これからシーラちゃんとの新しい生活が始まる。


 元の世界における存在を消されてしまったこともあり、もう後には引けない。

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