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超古代文明も実は結構捨てたもんじゃなかった  作者: 星の王子さま
レムリア大国
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第七幕 牧草地帯の昼餐から

青年は無表情のままフィオナたちを見つめ、背中のリュックから丸い金属の塊のような物体を取り出した。


「あら、エールさんではありませんか。こんな所で再会できるなんて思ってもいませんでした。ご無沙汰しております。」

「エールさんだー!またアレやってくれるのー?」

「はーい。お腹が空いているのですね?では。」


エールと呼ばれた青年は、丸い金属の塊を粘土細工のように器用にこね始めた。


「エールとやら、金属をこね回して何を作ろうというのじゃ。」

「はーい。少しだけお時間くださいねー。すぐ出来上がりますので。」

「フィオナ様ー、じっと待っててくださいっ。」


周囲にムドー民族の人だかりができ、見る見るうちに金属と思われる物体は見慣れた食べ物へ変化し馥郁(ふくいく)とした香りを漂わせた。

そして、目の前に用意されたテーブルに並べられた真四角の白い皿に、色とりどりの食材が並べられた。


「さあどうぞ召し上がれ♪まずはオードブル、トマトのカプレーゼにキャビアオンザエッグ、クリームチーズとエビのムースに生ハムディップでございます。」

「すっごーい!さすがレムリアの食料錬金術師ー!」

「うっ、なんじゃこれは……。」

「フランス料理でございます。先程の果実では物足りないでしょうし、フィオナ様もご一緒に召し上がりませんか?」


フィオナは表情を曇らせ、申し訳なさそうに答えた。


「すまぬ、以前も言ったやもしれぬが……、我は魚介類と果実以外は食せぬのじゃ。いやしかし、このエビだけなら。」


エールはレムリア大陸に存在する錬金術師の一人だった。

アルミや鉄、銅といったベースメタルを錬成し、食事を提供するという職業だ。

金属から錬成された食料を食べるというのは、地球上では想像もつかない事象であるが、ここレムリア大陸ではごく一般的なことであった。


「それではエールさん、いただきます。」

「いっただっきまーす!」

「ほむ、このエビは上質じゃのう。オマールじゃな。大変美味である。」

「そうでしょうそうでしょう。以前ジャンヌさんたちにお会いした時に教えていただいた食材をふんだんに使わせていただきました。あれから更に勉強したので味はより良くなっているはずです。」


盛り付けられたエビのみを摘んで口に運ぶフィオナの横で、ジャンヌとキャサリンは顔を真っ青にしていた。


「エールさんこのトマトは……。」

「生ハム腐ってるよー!」

「ええっ、そんなはずは!できたてホヤホヤですよ!」

「ああ、主ら。死神になっておるからじゃな。フフッ。我の目を見るのじゃ。」


フィオナの眼光に吸い込まれるように再び二人は意識を失った。

慌てふためくエールや他のムドー民族をよそに、フィオナは全ての皿のエビを食べ尽くそうとしていた。


…。


……。


………。


ジャンヌたちが目を覚ますと、テーブルに並んでいた料理は全てきれいに平らげられ、その他にも大皿が何枚も積み上げられていた。

きょとんとするキャサリンに、目を輝かせたフィオナが飛びついてきた。


「のうキャサリンよ!人間はこんなにも美味なものを食べていたのか!なぜもっと早く言わなかったのじゃ!ああ、過去に地上に住んでいた時にもこうしておればよかった!」

「はーい。まだ食べますか?ブロンドヘアのお嬢さん。」

「うむ。我の名はフィオナじゃ。次は何が出てくるのか楽しみじゃのう。」

「これなんていかがです?子牛の肉を煮込んで作られたオッソ・ブーコという料理です。じっくり煮込んでありますので骨まで食べられますよ。」


フィオナはジャンヌたちを人間に戻す際に、興味本位で自分も人間の味覚を試してみたくなったのだ。

半分人間、半分死神というストナと同様の体質になったということになる。


「それにしてもフィオナさんは大食いですね。職業はフードファイターか何かですか?」

「職業?職業か、ふーむ、死神……かのう。」

「へえ、死神ですか。聞いたことがありませんが、おそらく大変なお仕事をされているのですね。」


雑談の最中で古代図書館への道のりを聞いた。

ムドー民族の一人が持っていた地図を大きく広げたが、大陸の地形以外は何の名称も記載されていなかった。

五次元移動により街の場所が常々変化するからである。


一つだけ■印で標された唯一の場所があった。

全ての歴史が記されあらゆる種族が出入りする場所、それが古代図書館である。


現在の位置から遥か彼方にそれはあり、到底徒歩でたどり着ける距離ではないことを知ったフィオナは肩を落とした。

しかし、キャサリンはすっくと立ち上がり腕をぶんぶんと振り回した。


「じゃ、ここまで行こっかー!」

「えっ、キャサリンお主。ああ、そういうことか。」

「キャサリン。座標はこちらで。」


キャサリンに耳打ちするジャンヌにフィオナは驚嘆し声を上げた。


「お主ら、この何もない地図で座標なんて解るのか?」

「はい、私の能力で大体の位置は把握できますので。」


遠くに小さく見えるムドー民族に何度も頭を下げ、大きくゆっくり手を振るエールに手を振り返し、キャサリンは指を鳴らした。


「エールさん、また腕を上げていましたね。次にお会いするのが楽しみです。」

「フフッ、あやつは内面に秘めた能力(もの)を持っておるようじゃのう。」

「フィオナ様があんなに笑ったところ、初めて見ました!」

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