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第七話:おっさん、企む

 こんにちは! とっても可愛いピュア幼女、フィオナちゃんだよ!

 本日フィオナちゃんは凄い作戦を思いついちゃったのです♪

 けれどもこの作戦は一人じゃ難しいの……。

 だから共犯者――じゃなかった、一緒に頑張ってくれるお友達を募集しちゃうゾ♪


「あのねあのね。魔王ちゃんに聞きたいことがあるの♪」


「何だ藪から棒に。貴様がそうやってぶりっ子してる時はろくなことを考えておらんと相場が決まっているのだが、話だけは聞いてやろう」


 お友達その一! 魔王ちゃん。

 フィオナちゃんってば悪の首領とも仲良くなっちゃう超絶コミュ力♪

 ほんとその可愛さには魔王もイチコロで友達になっちゃうってことだよね。

 ちなみにお友達二号以降はいないのでなんとしてでもコイツを誑かさねばならん。


「魔王ちゃんって普通の人には見つからないんだよね」


「む? そうだが。まぁ勇者パーティークラスや、上位の魔術師クラスなら流石にバレるがな」


 現在魔王は精神体。緩んだ封印からこうやって精神だけを寄越している脆弱な存在だ。

 だからこそよほどの者でない限り発見は困難となっている。

 つまりはあれだよ、幽霊みたいなもの。


「一般の人には見えない?」


「んむ。万が一にも見えまい。貴様も前回の喫茶店で理解したろう?」


「そっか……」


「む? どうしたのだ?」


 なるほどなるほど。

 どうやら作戦の第一段階は成功。コイツが実行に足る能力を有していることは判明した。

 あとはウンと言わせるだけだ。

 さて――俺が考えついた偉大なる作戦だが、そろそろコイツにも教えてやらないとダメだろう。

 なぁに、フィオナちゃんがお願いするんだ。二つ返事で了承してくれるだろう。

 つまりはだな――。


「女湯行こうぜ魔王!!」


「おっとワガハイ早速ドン引き……」


 ふっふっふ。まぁまてまて魔王。そうビビるんじゃねぇ。

 可愛らしくくねくねしながら、フィオナちゃんは魔王を誘う。


「なんだかフィオナちゃんお風呂に入りたくなっちゃった♪ ふぇぇ、でも一人だと寂しいから、一緒に銭湯ついてきて~」


「貴様毎日ここで風呂に入ってるではないか」


 ばっか! 馬鹿だよコイツは!

 それじゃあ意味ねぇだろ! それじゃあ意味ねぇだろ!

 意外にもドン引きしたまま一向に返事をよこさない魔王に流石の俺もプッツンと来る。

 魔王の近くまで寄るとその耳にふっと息を吹きかけそっと囁きかける。


「黙っていてやるから……な?」


「いやそういう問題ではないし、そもそも貴様一人で行けばよいだろう」


 それはダメだ。

 万が一誰かにこの作戦がバレてフィオナちゃんの中身がバルザックだと露呈してしまった場合、魔王の誘惑によって致し方無しにやってしまったと言い訳するのだから!

 ふっふっふ! 貴様はスケープゴートなのだよ魔王!

 さぁさっさとイエスと言え! そして銭湯に行くのだ!


「王都の銭湯はな、そりゃあもう若いおなごが沢山くるって有名なんだ! ウハウハだよ!」


 ドキドキとワクワクが待ってるよ!


「馬鹿か。ワガハイ女の裸になぞ興味はないわ。それに……」


「それに?」


「一緒に女湯入るとなると、ワガハイ貴様の裸も見てしまうことになるのだぞ?」



「………………作戦中止ぃぃぃぃぃぃぃぃ!! この変態ぃぃぃぃぃぃぃ!」



「さては自分が幼女だと忘れておったな貴様……」


 な、なんてことです! ハレンチ! ハレンチです!

 まさか魔王ちゃんがあたしの裸体を狙っていたなんて!

 さっと距離をとり、自らを抱きしめるよう縮こまり震える。


「やだぁぁぁぁ!! フィオナちゃんの裸は俺だけのものだぁぁぁ! 誰にも見せねぇよぉぉぉ!!」


 脱兎のごとく逃げるフィオナちゃん。

 うぇぇ……。世の中には怖いおぢさんがいっぱいだよぅ。


「と言うかそんなに女の裸が好きなら、そもそも銭湯などと言わずに自分の裸体を見ておけばよかろうて」


「あ……」


 そう言われればそうだわ。

 ってかよく考えれば別に銭湯行かなくても完璧完全なる幼女がここにいるではないか!!

 なんたる失態! 俺が、俺こそが求める理想の幼女だった!

 ふふふ、どうやらはじめから徒労だったようだ。

 本当に大切なものは、案外身近にある……。

 俺達は、忙殺される毎日に押しつぶされその大切なものを見失っているだけなんだ。


 魔王はそれを俺に教えてくれた。

 ありがとう魔王、サンキューマイフレンド。ずっと友達だょ。


 フィオナちゃんはこうして一つ大人になったのであった!!!!

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