第六話:おっさん、説教を食らう
「ほんとああいうのはやめるのだ」
「えへへ♪」
「わかっておるのか? そういうところがダメなんだぞ!」
「うっせぇ!」
喫茶店でパフェを食ってから意気揚々とホテルへと戻ってきたフィオナちゃんと魔王デスドーラ。
俺は帰宅そうそう始まった説教にうんざりしていた。
魔王が説教なんて、十年早いぜ!
「しかしだ……まぁなかなかよい暇つぶしにはなったぞ」
「良かったね。あたしも嬉しいな♪」
「というわけでだ、しばらくは貴様と行動を共にしてやることにした」
「は? なんでだよ」
どこからそういう風な話になったんだよ。
もう幼女の楽しさはわかっただろ? なら好き勝手に幼女になればいいだろうが。
「いやなに、世界征服よりも貴様を見ているほうが面白いと思ったのでな。くっくっく、喜べ、奇しくも貴様らに平和が訪れたわ」
「す、ストーカー……」
はわわ、ピンチなのです!
突如知らされる驚愕の事実。確かにフィオナちゃんはぎゃんきゃわだ。
だが魔王が一瞬でその魅力にやられストーカー化するとは思いもよらなかった。
「なんでワガハイが貴様をストーカーしないとダメなのだ」
「フィオナちゃんみたいな激かわ幼女がいたらストーカーする気持ちも分かるの。でもその野獣のようなエッチな目はダメなんだぞ!」
「ええい、黙れ! 珍獣扱いだ! フィオナちゃんの身体には興味なぞない!」
「え? フィオナちゃんの身体には興味ない? じゃあもしかしてバルザックの身体に興味があるとか……?」
え? 魔王ってそっちの人?
ドン引きしつつ一歩距離をとるフィオナちゃん。ふぇぇぇ、魔王怖いのです。
「むしろなんで興味があると思った!?」
「た、たしかに戦っている時にいやらしい目で俺のこと見てくるなコイツって思っていたんだ……まさかお前がそんな趣味だったなんて」
「いやちょっと待て。貴様世界を救う大事な戦いの時にそんなことを考えていたのか?」
「でもな魔王。ごめん、俺様お前の想いには応えてやれないよ……」
「話を聞け! あと告白を断る的な雰囲気にもっていくな!」
「いい人見つけろよ!」
魔王に素敵な彼女が出来ますように……ちがった、彼氏が出来ますように。
フィオナちゃんは他人の恋路も応援しちゃう良い子なのだ。えへへ、おませさん。
「アホか! ふざけるのも大概にしろ! ――そうだ、いい人と言えば一つ疑問があったのだが……」
「ふぇ? なんなのです?」
「貴様、幼女になったが恋人はどうするのだ? やっぱり最終的には男と結ばれるのか? 相手がかわいそうだな……」
何かと思ったらそんなことか! 俺は頓珍漢な質問に思わず鼻で笑う。
幼女になった後でも俺のメンタルは変わらねぇ!
答えはこうだ!
イケメン全て死すべし! とくに勇者。爽やかでモテるので腹が立つ!
「いや、男なんて全員死ねばいいと今でも思ってるよ」
「ん? じゃあどうするのだ」
「幼女になったからには幼女と結婚するに決まってんだろうが!!」
「おい、貴様。ほんとそれはダメだぞ。ほんと、ほんとやめろ。犠牲になる娘が哀れでならん」
「幼女同士でいちゃいちゃうふふするんだよ! そして無知ゆえ暴走する欲求に身を任せ、超えちゃいけない一線を超えて無事幸せに結ばれるんだよぉぉぉ!」
くっくっく。フィオナちゃんの大計画をここで発表だ!
幼女になって幼女ハーレム! まさしく天国!
あれだよね、幼女百合が尊すぎて関わるのも憚られるのなら、自らが幼女になって百合百合すればいいってことだよね。
フィオナちゃん天才♪
「貴様魔王でも考えないくらいに残虐な手段を考えるな。それはあれだぞ、単純に犯罪だぞ」
「げっへっへ。バレなきゃいいんだよ。――バレなきゃセーフなのです♪」
「いや、お前の魂胆は今ここで白日の下となった。お前が罪なき幼女を口説こうとしたらワガハイは問答無用で通報する」
「な、なんだと……」
が、しかし!
俺の野望に立ちはだかるは魔王! なんてことだ! 友達だと思って教えてあげた俺が馬鹿だった!
やはりコイツは魔王だったのだ! ぐぬぬぬぅ!
「あと勇者にもチクるぞ。魔法使いと僧侶にも言いつけて、貴様の性根を叩き直してもらうのだ」
「おのれぇぇぇぇ! 悪逆非道なる魔王めぇぇぇ!」
「貴様の野望はここで潰えるのだ! バルザック!」
「くそがぁあぁぁぁ!!」
魔法使いちゃんと僧侶ちゃんはマジギレさせるとほんと怖いのだ。
普段はわりと笑って許してくれるところがあるが、今回のこれはマジギレ案件間違い無し。
絶対いつものように吊るされる。
こ、こんなところで俺の野望が頓挫しようとは……。
ふぇぇ、フィオナちゃん大ピンチ!
でもでも、諦めないゾ!