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第五話:魔王、パフェを勧められる

「お待たせしました~、苺のパフェですー」


「わぁ! とっても美味しそうなのですっ♪」


 はいっ! 今日はあたしお友達の魔王ちゃんと喫茶店に来ています。

 そしてそして! なんとっ、前から食べたかった苺のパフェを注文しちゃいました♪

 はわわ……とっても素敵。

 んしょんしょ、じゃあ頂きますっ!


「ふわぁ……とっても甘くて、最高です!」


「なぁ、バルザック」


「えへへ、あっ、ほっぺにクリームつけちゃいました。あたしったら、お転婆さん」


「ワガハイの話を聞くのだおっさん」


「やめろ」


 おっさん言うのはやめろ。

 折角幼女フィオナちゃんとしてパフェに舌鼓を打っていたのにとたんに冷や水を浴びせられた気分だわ。

 テーブルの前から俺に無粋な言葉を投げかけるのは魔王デスドーラの精神体。

 ……ったく。幼女がパフェ食べている姿を邪魔しやがって!


「なんだよ! いいから黙って俺様がパフェを食う様を見ていろよ」


「ワガハイ凄く凄く暇なのだが……」


「そりゃあパフェ食ってねぇからな」


「ワガハイ、パフェに興味は無いぞ。食べたいとも思わぬ」


「だから幼女になったら美味しく感じるんだって! ほら、俺なんて今至福の時を感じている……ぜ」


 パクリとスプーンを咥える。

 その瞬間口に広がる甘いハーモニ。いやぁ、素敵……。

 だがこの感覚は! あっ、あれあれ!?

 ま、まじで……!?


「む? ど、どうしたバルザック?」


「うう、ううう……」


 思わず涙がこぼれる。

 マジかよ……こんなのってありかよ。

 突然ポロポロと泣き出してしまったフィオナちゃんに魔王も驚いた様子。

 だが悪い魔王。今の俺は胸を包み込むこの感情で、それどころじゃねぇんだよ……。


「な、何を泣いておるバルザ――いや、フィオナだったか? さっきまであんなに喜んでおったではないか? ワガハイ何か気づかずに失礼な事でも言ったのか!?」


「いや、パフェ……もう食えない。お腹いっぱい」


「は?」


「あたし、お腹いっぱいでパフェ食べられないのです……」


 そう、幼女フィオナちゃんはもうパフェが食べれないのだ!

 確かに調子にのって大人サイズを頼んでしまった。

 イケるかな? と思ったが、まさか半分程度でギブとは……。

 そっか、そうなんだ。幼女って、そうなんだ……。


「それは残念だったな……で、なぜ泣いた?」


「いやな。こんな小さなパフェ一個食えないなんて、幼女の胃ってなんて小さいんだろうって。昔の俺だったら毎回最低10個は食ってたのに、今じゃ半分くらいでギブアップだ……」


「むしろ昔の貴様は何を考えてパフェを10個も食ったのだ?」


「美味しいパフェも満足に食べられない。ほんと幼女って全てがちっちゃいんだなって。このちっちゃいボディに、この世全ての愛らしさが詰まってるんだなって。そう考えるとさ……うう、感動と、愛しさで、涙が!!」


「情緒不安定か貴様は」


「俺様、こんなにも自分のことが好きだったんだなって。このちっちゃくて愛らしい俺様のこと、ほんと好きだったんだなって……。自分に対する愛おしさが、爆発しちまってよぅ!」


「貴様ほんと人生楽しそうだな……」


 ダラダラと滝のように流れ落ちる幼女涙。

 うう、俺好き。俺大好き……。

 俺は今、猛烈に感動しているぞぉ!

 だがこのまま泣いていても始まらない。

 何より魔王を心配させてしまう!


「すまん、泣くなんて俺様らしくないよな。笑ってる君が好きって言ってくれたのは、他ならぬ魔王だもんな……」


「勝手に過去を捏造するな」


「笑うよ魔王。俺様、これからも笑うよ。――というわけで残ったパフェもったいないから食ってくれ」


 流石にパフェを残すのはもったいない。

 おっさんの時は出されたものは全部食べていたからな。

 もったいないは許しません。されど幼女のお腹はいっぱいなのです♪


「勝手に笑ってろ。そもそもワガハイ精神体だから食えん」


「は? 幼女のパフェが食えねぇのか? なんでだよ! もったいないだろ!」


 そこは根性でなんとかしろよ!

 折角幼女が食べかけのパフェを差し出してるんだぞ! 普通それだけで鼻血大噴出の昇天ものじゃねぇか!

 ったく……この魔王は全然自分の幸福を理解していないな。

 幼女にパフェを貰うなんて、俺だったら器とスプーンごと食ってるぞ?


「というかさっきから言おうと思っていたのだが、あまり大きい声を出すな。周りの客に迷惑だろう」


「はっ! 他人の視線が怖くて幼女やってられるか!」


「あとだ、ワガハイ精神体で一般の人間には見えない。これでは折角の幼女も一人でブツブツ文句を言う可哀想な子供だぞ?」


「…………ん?」


「ほらみたことか、他の客の注目を一心に浴びておる。くっくっく」


 周りに見えない?

 ということはフィオナちゃん一人芝居?

 くりくりお目々でくるりと店内を見回す。

 するとなにやら怪訝な表情でこちらを見つめる善良なる一般市民の方々と目があった。

 ……あらやだ!!


「見世物じゃねぇぞ! コラァァァァ!!」


「あっ! や、やめろバルザック! 周りの人が困っておるではないか!」


「俺はフィオナちゃんだオラァァァ! やんのかぁぁぁ!!」


「だからうるさいぞ! ワガハイが悪かったから静かにしろ!」


 激おこ! フィオナちゃん激おこ!!


 もうっ! みんなであたしを見つめるなんて、いじわるっ!

 恥ずかしすぎて思わず大きな声出しちゃったゾ♪

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