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第三話:幼女、魔王と遭遇する

「うふふ、可愛いのです♪」


 ホテルに戻ってきた超絶かわいいフィオナちゃん。

 早速買ってきたお洋服でファッションショーです!


「わぁ! こっちも素敵!」


 次の服もチェックチェック!

 うふふ、かわいいよ俺。なんだよこれ、最高かよ。

 やべぇ……鼻血でそう。


「えへへ、お着替え楽しいな~」


 はぁ……幸せ。

 いやぁやっぱり幼女っていいよな。

 可愛いとこうやっていろいろ服を買い込むのも楽しくなってくる。

 僧侶ちゃんや魔法使いちゃんが毎回何時間もくっそ長い買い物をしていたのがようやく理解できるわ。

 これくせになるぅ……!


 そんな感じで俺がお着替えを楽しんでいる最中だった。突如背後に邪気が集まるのを感じる。

 …………誰だ? 折角の時間を邪魔するやつは?


「ククク。随分お楽しみのようだな――バルザックよ」


「その声は……魔王!?」


「いかにも、貴様が討ち滅ぼした魔王デスドーラだ!」


 シュウシュウと闇が集まり人影になる。

 それは俺達が苦労して倒したはずの魔王だった。

 さっと振り向き構える俺。実態の無い黒い影状のそれはどうやら精神体らしい。

 いや、精神体とはいえ相手は世界を滅ぼそうとした大魔王だ。

 油断はできない。

 ならばやることは一つだろうバルザック?


「あっ、ちょっと待って魔王」


「ぬ?」


「――ふぇぇ! ま、魔王怖いですぅ」


 そう! 可愛さアピールだ!

 身体を抱くように身を縮こませ、怯えた表情でプルプル震える!

 初めてだったが実に上手に出来たぞ!!

 どうだ魔王! 萌え苦しめ!!


「よし、俺様かわゆし! どうよどうよ?」


「……バルザックよ」


「あたしの名前はフィオナです! バルザックはパパなの! あなたなんか、パパに頼んでやっつけてもらうんだから!」


「医者から貰ったお薬は毎日ちゃんと飲んでいるか?」


「病気じゃねぇよ殺すぞ魔王!」


 早速ブチ切れた俺はノーモーションで魔王に飛び蹴りを食らわせる。

 しかしながらやつは精神体。どうやら物理攻撃ではダメージを与えられないらしい。

 おのれ魔王め卑怯な手を使いやがって!


「しかしだなぁ……まさかワガハイが与えた"転生の秘薬"をそのようなことに使うとはな。驚きだぞ」


 俺の攻撃もなんのその、どうやら奴は話があるらしく呆れた表情でつらつら語り始める。

 なにこれ、そういうターン? 回想シーンみたいな?

 ってか、ん? 転生の秘薬……ああ、思い出した!

 俺が幼女になったのもその転生の秘薬のおかげなのだ。世界に一つしかない肉体を変化させる神の液体によって、幼女として生まれ変わることが出来たのだ。

 フィオナちゃんの秘密。大公開だゾ♪

 ってかそのようなことってどういう意味だよ?


「ねーねー魔王。転生の秘薬って幼女になる以外にどういう使い道あるの?」


「本来なら人間の力を遥かに超えた究極の生命体になれるのだ。生も死も超越した、決して朽ちることない永劫の存在だ……」


「それって幼女ぢゃん」


「幼女ではない」


「ふぇぇ」


「ふぇぇと言うな」


 まったく冗談きついぜ魔王。

 究極生命体といえば幼女しかないだろうが。今の俺は体中に力が満ちているのを感じるぞ。

 肉体の力、魂の力、精神の力、そして第四の力である幼女の力。

 新たな力を手に入れて究極存在となった俺のこの姿こそが正しい進化ではないか。

 まぁいいや。どうせ世界を征服するしかやることない陰険野郎だ。友達もいなさそうだし、こいつに幼女の素晴らしさは一生わからないだろう。

 そうとあればさっさとご退場願いたい。

 俺にはやることが山積みなのだ!


「んで今日はなんの用事なの? 俺様お着替えで忙しいんだけど。あっ、これ似合う?」


「良いのではないか? ――いやなに、別れの挨拶をと思ってな。封印に生じた亀裂によって、なんとか復活できそうだ。ククク」


「え!? 封印解けるの? やべぇじゃん誰のせいだよ」


 よくよく考えれば、精神体とはいえ魔王がここにいるということは重大事件だ。

 俺達が苦労して倒した魔王の封印は三つ。魔王の肉体、魔王の器、そして魔王の精神に分けられている。

 一部とはいえその一つである精神の封印が解けているということは、終わったはずの危機がまだ残っていることの証明でもある。


「ワガハイ、転生の秘薬を与える代わりに、封印に綻びを作るようコッソリ貴様と取引をしたと記憶しているのだが?」


「勇者のせいかよ……最後の最後でトチリやがって! くそがっ!!」


 なんてことだ! あのイケメン、俺があれほど言ったのににしくじりやがって!!

 一体どれだけ迷惑をかければ気が済むんだよ!!

 ぐぬぬーっと幼女らしくプンプン地団駄を踏む俺。

 んむ! この怒った態度も可愛いぞフィオナちゃん! よし、鏡の前でもう一度。

 ……はわわ、やっぱり俺って可愛いわ!


「何やら都合の良い現実逃避をしているようだから改めて言うが、封印が解けるのは完全にお前のせいだ」


「…………」


「…………お前のせいだぞ」


「ふぇぇ!」


「ふぇぇと言うな!」


 こうして魔王デスドーラから驚愕の事実が知らされることになった俺ことフィオナちゃん。

 どうしましょう、大変です!

 このままでは魔王が復活しちゃいます!!


 勇者のせいで、世界がまたまた大ピンチです!!

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