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第二話:幼女、お洋服を買う

「ふわぁっ……可愛いお洋服がいっぱいです♪」


 完璧だ。

 俺の幼女プレイは完璧であった。

 もはやどこからどう見ても綺麗なお洋服に瞳を輝かせる幼女である。

 うふふ、可愛いよ俺!


 さて、やって来たるは王都にある服飾店だ。

 中流階級向けの店で、リーズナブルながら質の良い服を多数そろえていることで有名な場所だ。

 もちろん俺が着るに相応しい可愛い可愛いお洋服も多数揃えている。

 嬉しい事に平日の朝方ということで客もまばら。選び放題だな。

 くっくっく。金は沢山ある。思う存分買うぞ!!


「いらっしゃいませ~。どうぞごゆっくり~」


 やる気のなさそうな店員のおじちゃんを尻目に、俺は数々並ぶ魅惑的な服に心を躍らせる。

 おっさんの時は着ることが出来なかったチャーミングなお洋服。

 ついに俺の手に入るのだ!

 どれがいいかな~? フリフリが沢山ついた奴がいいな。

 露出度は控えめで。幼女は存在だけで魅力的なので下手に肌を露出する必要はないからな。

 おっ、これもいいな! あっ、あっちのも捨てがたい!

 んんむ。金はある! 全部買うか!


「あれ? お嬢ちゃん。ご家族の方は?」


 む? 急に店員のおじちゃんが話しかけてきた。

 俺は服屋で店員に話しかけられるのが何よりも嫌いなので、早速ぶちキレそうになる。

 だが……、だがしかしだ! いまの俺は幼女なのだ!

 幼女は怒らない。幼女はいつも笑顔。幼女はいつだってチャーミングなのだ。

 そうだろバルザック。なら答えは決まってるさ。


「えとえと……今日は一人でお買い物に来ました! えへへ」


 ああああああ! チャーミングぅぅぅぅぅ!

 俺! めっちゃキュウウウトォォォォ!

 もはやその愛らしさは世界の隅々まで満ち渡っただろう。

 初めて経験する一人のお使い、ドキドキと胸を高鳴らせながらお洋服を選ぶ幼女。

 キラキラした瞳は純粋無垢の一言!

 今の俺、輝いている! めっちゃいいよ! 最高だよ!


「最近の子供は賢いなぁ……お嬢ちゃん。ちなみにお名前はなんて言うんだい?」


「お名前ですか?」


 一瞬"バルザック"と答えそうになり口を閉ざす。

 危ない。流石に幼女の姿でバルザックはないわな。

 んんんむ。名前、名前、名前……。何がいいかな?

 ――はっ!!


「えっと、フィオナ=ドールコーギーって言います!」


 フィオナ! いいぞフィオナ!

 パッと思いついた名前だったが凄く可愛らしくて俺の琴線に触れた!

 よし、今日から俺はフィオナちゃんだ。可愛い可愛い幼女のフィオナちゃんだ!

 さようならバルザック。もはやおっさんとしての俺は遠く過去に捨て去ったよ。


「ド、ドールコーギー……!?」


 コクリと頷く。

 このコクリが重要だ。可愛らしさをこれ見よがしにアピール。

 そして驚くなかれ。俺が考えた最強の設定を今披露して見せよう。


「も、もしかして魔王を討伐したパーティーの?」


「はいっ! バルザック=ドールコーギーはあたしのパパなんです!」


 ここでにっこりスマイル!

 そうなのだ! 俺ことフィオナちゃんは魔王を倒した英雄バルザックの娘なのだ!

 どうよこの完璧な設定!

 俺の名声と地位を利用しつつ幼女を楽しめる一石二鳥の妙案だ!

 どやどや店員くん? 驚いたかね? さぁ崇め讃えよ!


「ひいっ! わ、悪いが帰ってくれ! あのドールコーギーの娘なんて! 関わっちゃろくな事にならねぇ!」


「あ゛?」


 お? 早速ぶち切れたゾ♪

 幼女こめかみにビキビキと青筋が走るのを感じる俺。


「勇者パーティーの戦士ドールコーギーと言えば、迷惑千万な傍若無人野郎って有名じゃないか! アイツのせいで酷い目にあったって奴が何人もいるんだよ!!」


 なるほどちょっと教育が必要かもしれない。

 幼女に意地悪する大人は全員死刑。コレは古来より伝わりし絶対不変の掟だからだ。


 ドンッ!

 強烈な音が店内に鳴り響き、店員のおじちゃんがビクリと震える。

 俺がカウンターに蹴りを入れた音だ。


「ひっ!! な、なにするんだ!」


「あのね、おじちゃん。お客様って何かな??」


「な、なにをいきなり!」


 ドンッ!

 再度カウンターに蹴りを入れる。

 ビシリと、重厚な木製カウンターにヒビが入る。


「お客様って、な・に・か・な?」


「そ、そんなもん! 客は客に決まってるだろ!」


「お客様はぁっ! 神様だろうがぁぁぁ!!!」


「ギャアアアア!!」


 ドカァン!

 俺の全力幼女キックによってカウンターが粉々に砕ける。

 腰を抜かしたおじちゃんに社会の厳しさを教えてあげるため、俺はズンズンと歩み行くとその両足を掴み関節技をキメる。


「調子に乗りやがって! 幼女のお仕置きを食らえ!」


「助けて!! 助けて! やっぱり奴の娘だ! 間違いなくドールコーギーの娘だこれ!!」


「うっせぇ! いいから黙ってあたしに似合うヒラヒラのお洋服を用意しろ! 殺すぞ!」


「痛い痛い! 関節が折れる! 助けて!! 命だけは! 命だけはぁぁぁぁ!!」


 こうして、幼女の真摯な願いによって彼が抱く誤解は解けた。

 やっぱり話し合うって大事だよな。分かり合えるって、素敵やん?

 あっ、もちろんお金は払ったよ。ちゃんと買い物したらお金払わないとだからね♪

 カウンターの代金? なんだそれ。


 ほくほく顔で洋服が大量に詰まった紙袋を抱えてホテルへの道を行く。

 お洋服もちゃんと選べたし、ちょっとしたトラブルもあったけど無事解決。

 ふふふ、あたし頑張りました。

 初めてのお洋服お買い物ミッション。

 大・成・功――だゾ♪

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