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第一話:おっさん、幼女になったった

 幼女になった。


「天使かよ……」


 俺は幼女になったのだ。


「ああああ! 俺様は天使かよぅぅぅぅぅぅ!!」


 予め数週間分の予約を確保していた王都の最高級ホテル。

 そのスイートルーム。

 フロア丸々一つを利用した豪勢な部屋の一角に誂えた大鏡の前で、俺は歓喜に震え叫んでいた。


「くっくっく! 勇者の阿呆ぅめ! 俺様を追放なんてするから幼女になるのだ!」


 歴史に残る魔王討伐。

 その偉業を成し遂げた勇者パーティー。

 彼らの中で近接担当として多大なる貢献をしてきた無双の戦士バルザック=ドールコーギー。

 彼は勇者の謀略によって魔王討伐にパーティーを追放される。

 失意の中、歴史に埋もれんとする偉大なる英雄が見つけた道は――幼女になることだった。


「まぁ確かにー。俺様ってば魔法使いちゃんとか僧侶ちゃんにはちょっとフレンドリーにしすぎた感があったけどー。それってあれやん? パーティーの盛り上げ役としての役目やん? 許されるべき所業やん?」


 思わず漏れ出た独り言の通りである。

 俺がパーティーのムードメーカーとして様々なギャグを披露してきたからこそ、あのパーティーも過酷な戦いにメンタルをやられることなく無事魔王を倒せることが出来たのだ。

 にもかかわらず追放とは!

 魔法使いちゃんも僧侶ちゃんもなんで俺をかばってくれないんだ!

 それに勇者だ! おのれあのイケメン爽やか系め!

 今頃奴はイケメンスマイルで貴族の淑女たちを虜にしているところだろう。なんて裏山けしからん奴だ! 夜の戦闘力も勇者ですってか!

 けどまぁ、幼女になれたし許そう。許しは大事よね。


 くるりと鏡の前でターンし、ふふりと微笑む。

 しかし紆余曲折合っての念願幼女である。

 オッサンである俺はいろいろ非合法な手段を使って絶世の美幼女になることに成功した。

 あらためてその容姿に見惚れる。

 見た目は10歳くらいのロリぼでー。

 ぷにぷにほっぺにくりくりお目々!

 窓から差し込む光を受けて輝く金色のさらさらへあ~。

 予め購入しておいた服のサイズもバッチリだ。下着のサイズもね!

 もちろんその容貌は美しいの一言! 完璧! 完璧幼女!


 ……ふぅ。少し幼女となった俺への愛が溢れてしまった。

 落ち着かねば。

 俺が幼女になった経緯は今は置いておこう。

 大切なのは魔王討伐によって世界は平和になったということだ。

 封印された魔王もしばらくは大丈夫だろうし、魔王領の魔物も王宮の魔法師団が上手に調理してくれるに違いない。

 なんやかんやで世界に平和が訪れたのだ。

 つまり俺が幼女になっても、好き勝手生きても問題無いってこと。


 それに俺がいなくても、もう勇者たちだけで世界の平和を守れるだろうさ……。

 へへっ、元気でな、勇者、魔法使いちゃん、僧侶ちゃん。

 パーティー追放されたけど、お前達のこと嫌いじゃなかったぜ。


 ……さて、俺を追放したミラクル阿呆どものことはすっぱり忘れてだ。

 何をしようかな?

 今までむさ苦しいオッサンだったのだ。

 三十も後半になったぶよぶよのオッサン体型、ひげもじゃの油肌。

 もはや戦士と言うよりオークといった方が正しかった以前の俺とは違って今はこの愛らしさ。持てあますぅ。

 まぁ魔王討伐によって国から支給された金も大量にある。

 いわゆる一生遊んで暮らせる金額だ。

 力も――変わらず戦士だった頃のぱわ~があるようなので問題無い。

 ドラゴンくらいなら素手でも殺せるだろう。

 先ほど述べたとおり世界も平和になった。これで悠々自適にスローライフを送ろうかな。幼女スローライフだ。


「その前にこの身体が持つポテンシャルを測る必要があるか……」


 少々冷静になる。

 俺が可愛すぎるのは間違いないが、それでもその可愛さを見誤っては問題だ。

 体型すら変わっているのだ、変化をしっかりと把握しておかないと万が一の時に致命的なミスを犯す。

 幼女になったとしても戦士の心忘れず。

 未だ魂は無双なり。

 故に……。

 胸元で両手のお手々をぎゅっとを握りしめ、眉を困った様子で顰め首を傾げる!

 そして!


「ふぇぇ……あたちモンスターなんかと戦えないよぅ」


「…………」


「可愛すぎだろ守ってやりたいこの笑顔」


 脳に刻みつける。

 もはやこの仕草だけで一生食っていけそうだ。

 むしろオッサンの頃の俺がこんな幼女を見つけたのなら、間違いなく全財産を貢いでいただろう。


 俺は可愛すぎた。

 可愛すぎてもはや罪レベルで可愛すぎて可愛すぎた。

 天使ですら頬を朱に染めるこの笑顔。切り取って額縁に入れて飾りたいこの瞬間。

 なんてことだろう。もっと可愛くなりたい。

 あたち、もっと輝きたい!!

 ヒラヒラのお洋服着ておめかししたい!


 だからこそ決まる次の行動!


「お洋服を買いに行くぞオラァァァァァ!!!!」


 幼女らしい可愛らしい叫びがスイートルームにこだます。

 めっちゃ楽しくなってきた。

 めちゃくちゃ楽しくなってきた。

 こうして魔王討伐を成し遂げたオッサン戦士のバルザック=ドールコーギーによる、幼女としての第二の人生が始まったのであった!!!!!

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