面倒事が起こりそうです。
長らくお待たせ致しました。
生活が落ち着いたので投稿を再開いたします。
魔物の発生からしばらくたち、特に不穏な動きも今のところない。
マティアスの所に滞在しているマルちゃんことマルシベーラは、非番のマティアスを連れ出しては人間の暮らしを満喫しているらしい。
今のところ逆ハーレムの要素はかけらも見られず、先日ギデオンとマリアが正式に付き合ったと報告を受けた。
よくやったっ!!
思わずギデオンとマリアまとめて抱きしめて盛大にうろたえられたのはいい思い出だ。
「ジル様?どうかなさいましたの?」
「ん?いや、なんでもない。ただ……、感慨深いと思ってな。」
今俺とアイリーンはダンスフロアのそばにある休憩用の小部屋にいる。
ちらりと裾からダンスフロアの真ん中に目をやると、白いウエディングドレスを着たミシェリアが、白い騎士服を着たテオドールと幸せそうに踊っている。
「ふふっ。ほんとにそうですわね。ミシェリアさんも、まさかこんなにテオさんのことを待たせるなんて思っていませんでしたわ。」
ふわりと笑うアイリーンの腕の中にはすやすやと眠る愛娘がおり、そのアイリーンの膝を枕にするようにヴィルが眠っている。
幸せ家族を体現したような光景に思わず笑みが漏れる。
「お姫様は夢の中か……。あらかじめ個室の準備をしてもらって正解だな。」
まだ生まれて数か月の愛娘のソフィアの頭を優しく撫でてやると、ふにゃりと顔を緩めた。
あの魔物の大量発生事件のすぐあと、アイリーンは無事に娘となる第二子を出産した。
そしてそれのさらに数か月後、ついにミシェリアとテオドールが結婚したのだ。
男爵家の末の息子が伯爵家に婿入りするということで規模は比較的小規模ながらにかなりの人数がパーティーに来ており、公爵家子息のマティアスや第二王子のリーンハルトなど学園時代のミシェリアの友人がなかなかに有力貴族ぞろいのせいでテオドール側の招待客がかなりビビっていた。
そして流石はミシェリアというべきか、産後間もないアイリーンとソフィアのことを気遣い、今回のように小部屋を用意してくれていたりとなかなかに気が利いている。
「アイリーン。俺もそろそろほかの貴族と同じように交流とやらをしてくる。何かあったらすぐに呼んでくれ。」
「ありがとうございます。」
ちゅっとアイリーンの額にキスをして、眠る我が子たちの頭をなでてダンスフロアに出た。
「む?もうアイリーン嬢のそばにいなくていいのか?」
俺がダンスフロアに帰ってきたことに気付いたリーンハルトがそう声をかけてくれる。
「ああ。何かあればすぐに戻るけどな。」
「全く……ジルらしいですね。」
「むしろそのくらいじゃないとマーキス先輩らしくないです。」
一緒にいたマティアスとギデオンも口々にそう言ってくる。
否定は………できないな。
「おお!やっと戻て来たか!妾は待ちくたびれたぞ。」
「そうですよ!奥さんに構いすぎてもう帰ってこないかと思いました。」
山盛りに積まれた料理片手に元気よくそういうマルちゃんと、ぷくっと頬を膨らませたマリアはそれぞれマティアスとギデオンのパートナーとしてミシェリアの結婚式に出ている。
ミシェリアの友人が友人を呼び、非常ににぎやかなパーティーなのだが………、たまにこの幸せな空間に似つかわしくない者たちもいた。
「マルちゃんもマリアも楽しんでくれ。ミシェリアと直接かかわりはないが、お前たちが楽しんだらミシェリアもきっと喜ぶ。………俺は、ちょっと他の客と話してくる。」
ぽすりと二人の頭をなでて、リーンハルトたちにアイコンタクトを送り、この祝いの席にふさわしくない客の所に行く。
「あなたは確かピーホッグ公爵子息でしたかな?」
「ひぃ!?ぁ、あぁ……。き、君は確かマーキス公爵家の………?」
父親そっくりのでっぷりとした体形のピーホッグ公爵子息はたらたらと額を流れる汗を必死にぬぐっている。
しかし、俺がピーホッグ公爵子息に声をかけると、そばにいたもう一人の男がすかさず割り込んできた。
「はぁん?なんだ。負け犬王子の狗がボクたちに何の用だ?はぁん?」
「あぁ、ブロスカ公爵子息も来ておられたのですが。いえ、今宵は友人のミシェリアの結婚パーティーですので友人代表として皆様にご挨拶しているだですよ。」
にこりと営業スマイルを浮かべてそう言うと、ブロスカ公爵子息は不躾に俺のことをつま先から頭の天辺までじろじろと見てきた。
最もおれのほうが身長は高いのでどれほど見下すように見てきたところで実際に見下ろしているのは俺なんだがな。
「はぁん……?キミがカール様の言ってた使える狗ねぇ?ま、ボクのほうが有能だけど?」
気に喰わなさそうに顔をゆがめるブロスカ公爵子息の顔がつぶれたガマガエルのようにしか見えない。
まあこの男の父親がミシェリアのバッドエンドの相手の内の一人のなんだがな。
豚野郎と言い蛙野郎といい後妻に若くて美しい妻をと望んでいるらしいが、貴族連中からは忌み嫌われてるらしい。
「カール様、とはカール=ハインツ第一王子のことですか?彼が私について何を?」
聞き捨てならないセリフにそう尋ねると、ブロスカ公爵子息が得意げに爆弾発言をした。
「はぁんっ!そんなのカール様即位後の側付きの話に決まってるだろっ?」
「あ゛?」
思わず不機嫌そうな低い声を出すと、さっきまで強がっていたブロスカ公爵子息も、おどついていたピーホッグ公爵子息もびたりと身体を固まらせた。




