続編だそうです。
「マルシベーラ・エルルケーニッヒ?王立学園の貴公子の続編の主人公じゃない?」
久しぶりに会ったミシェリアに、アイリーンの感じた違和感について聞いてみるととんでもない言葉が返ってきた。
「……は?続編?」
未だにリーンハルトのフラグ回収が終わっていないのに続編の話を出されても困る、というより俺はそんな話聞いたこともない。
「そうそう、なんかヒロインの情報だけ出回ってたよー。世間知らずの女魔王と、貴族とはかけ離れた大家族の長女ヒロインとかだったかなー?なんか追加要素だからそこまで大々的に公開してなかったけど。」
テーブルを挟んで向こう側のソファで、久しぶりにミシェリアと会ってはしゃぐヴィルを相手にしながらミシェリアが事も無げに答える。
「もー!!!ほんとにヴィル君ってば可愛いっ!!あー、お持ち帰りしたいーーっ!!」
「ふざけるな。断る。」
ぎゅうっとヴィルを抱きしめてそう言うミシェリアからヴィルを奪い返すと、ミシェリアが諦め悪くテーブル越しに手を伸ばしてきたのでその手も叩き落とす。
「ジル君のケチ!!子供と戯れたっていいじゃん!!」
「知らん。そういうならさっさとテオドールと結婚してやれ。それで子供を作ればいいだろう。」
いつまで待たせるつもりだ、と文句の一つでも言ってやろうと口を開いたがミシェリアの顔を見てすぐに閉じた。
「ぁ、その……。け、結婚は、することに……なりました…………。」
顔を赤くさせて目を泳がせるミシェリアに、思わず立ち上がり部屋の扉を開け、今まさに不憫代表テオドールと一緒に紅茶を入れているアイリーンに知らせるために大声で叫ぶ。
「アイリーンっっっっ!!!!!ついにミシェリアが折れたぞ!!祝杯だっ!!!」
「え!!?ミシェリアさんついにテオさんとご結婚なさるんですか!!?テオさん、おめでとうございます。」
廊下の中程でテオドールとまったりこちらに歩いてきていたアイリーンが心底嬉しそうな顔でテオドールに祝の言葉を述べる。
「ははっ!本当についに、だよ。ありがとう。」
テオドールもようやく、本当にようやくだ。
学生の時からなのでもう3年以上恋人と結婚できない状態で我慢していたと思うと泣けてくる。
ミスター忍耐の称号をあげたいくらいだ。
「そういえば話し合いはもういいのかい?まだなら俺がヴィルの相手をするよ。」
「ああ、それじゃあ頼む。ヴィル、テオドールと遊んできてくれるか?」
「あい!ておー!!いこ?」
「あぁ。それじゃあ俺たちは外にいるから終わったら呼んでくれ。」
そう言って庭の方に歩いていく二人を見送って、俺とミシェリアとアイリーンの3人で席につく。
「アイリーン、寒くないか?ブランケットは?」
「ありがとうございます。」
身体が冷えないように抱き寄せてブランケットを膝にかけてやる。
柔らかく笑うアイリーンが本当に可愛くて、ここにミシェリアがいなかったらすぐにでも口説きたい。
「アイリーン……。綺麗だよ。」
「はいはいジル君!私いるのに堂々と口説かないでよね!!」
「アイリーンを口説くのにこんな言葉で済むはずがないだろ。」
そう返すと呆れたような表情が返ってきた。
当たり前だろ。アイリーンだぞ?女神だぞ??
綺麗なんて一言で言い表せるわけがないだろう。
「とりあえず話は戻すけど、なんで続編のヒロインの話が今出たの?」
きょとんとした表情のミシェリアにそう聞かれ、今回の魔王討伐であったことを話した。
「うっわぁー。ジル君ってば相変わらずフラグホイホイなのね……。」
そんなホイホイ嬉しくない。
「まあ判断はよかったんじゃない?私は先行配信分の体験版やっただけだけど、確か女魔王の場合は誰の家でお世話になるかでルート分岐あったはずだよ。」
「ということはマティアスルートに入ったってことか?」
ほんの少し期待を込めてそう聞くと、チッチッチッと言いながら指を振るという地味に鬱陶しい仕草をしてきたのでその指を鷲づかんでやる。
「ちょっ!!痛いって!!!!もー……ちょっとふざけただけじゃん……。」
「いや、鬱陶しくて、つい……。」
教えてもらってる立場なのにさすがにやりすぎたかと思い少し反省する。
「まあ言っちゃうとね。今回は逆ハールートがある模様。だから女魔王と長女ヒロインがどう動くかによるよね。あと、これは情報しか知らないけど隠しキャラがいるみたいだよー。」
想像以上にめんどくさそうな状況に思わずこめかみを押さえる。
つまりはリーンハルトのフラグを回収しながら、続編のヒロインの動向を見守りつつ、続編の内容に巻き込まれることを回避しなければならないらしい。
「…………国外逃亡したい。」
ぽそりとつぶやくとミシェリアからは心底同情したような視線を向けられアイリーンからは気遣うような視線をもらった。
前回は普通に投稿忘れてました……。
遅くなりすみません。




