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乙女ゲームの攻略キャラだけど許嫁を愛でたい。  作者: 籠の中のうさぎ
未回収イベントを男の俺が回収する。

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帰還したそうです。

魔王ことマルシベーラを連れ、魔物を狩りながら王都へと戻ると、先触れを出していたこともあり街の門から城に続く道にはかなり多くの民衆が一目俺たちを見ようと集まっていた。


魔物狩りが幸をなしたのか実際に王都付近に行くにつれ魔物の数は減り、平素と変わらぬほどに減っていた。

マルシベーラ曰く、マルシベーラの命令で彼女の配下の魔族達が魔物を狩っていたのも理由の一つだろう。


街を抜け城に入っても、ギデオンが黒髪を靡かせて歩いているのをみんなが勇者として当たり前の様に歓迎している光景に嬉しくなる。



「これを足がけに黒髪に対する偏見がなくなったらいいんだがな。」


王や俺たちを魔王討伐に送った張本人である第一王子が待つ謁見の間の前で入室を促されるまで待っている間、ボソリと思ったことをつぶやく。


「その為に、今度は僕が頑張ります。」

「あ、あたしも協力するよ!」


今回俺たちのことを巻き込んだと責任を感じているギデオンがぎゅっと手を握ってそう言った。

それに対し少し頬を染めたマリアも同じように気合十分といった様子でガッツポーズをしているのに苦笑いをし、ぽんと二人の頭を撫でてやる。


「今度があったらまたみんなで協力するさ。お前達だけで頑張る必要ない。」


「そうだ。私たちが必ず助けになる。」

「そうですよ。頼ってください。」

「次からは妾もおるぞ!!」


全員ギデオンの肩や頭や背中に手を添えて宣言し、ちょうどタイミングよく開いた謁見の間へと続く扉へと足を進めた。




謁見の間には王や第一王子の他に公爵や宰相など国の有力者達が勢ぞろいしていた。

相変わらず第一王子は何を考えているのかわからない表情でニヤニヤと俺たちを見つめている。


失礼にならないように注意しながらすっと目線を宰相に向けると、マティアスの無事をやっと確認出来てほっと表情を緩めていた。

ただそのあと俺と目線を合わせて顔を赤らめるのはやめて欲しい。切実に。


思わず宰相の視線から逃れるように視線をずらすと、あの豚野郎が悔しそうな表情を浮かべていた。

俺の留守中にアイリーンに会いに行っていた事は知っているのでありったけの威嚇を込めてニッコリと微笑んでやったらあからさまに顔を背けた。



「リーンハルトよ、大義であった。魔王討伐の知らせが届いたあと王都の周りで確認される魔物の数も減ってきておる。…………よく帰った、我が息子よ。」


一国の王らしく堂々とした態度で話していた王も、息子の無事と活躍が嬉しいらしく目元を優しげに緩めてそういった。


「ありがたき幸せです、父上。」


王とリーンハルトの間に流れる穏やかな空気が流れる。

傍に使えている国の重鎮たちもどこかほっとした表情でその様子を眺めていた。


「ところで、」


しかし、その空気をものともしないで第一王子が肘置きに置いた腕に寄りかかりながら口を開く。


「そこの女は?見慣れん顔だな。」


ニヤリと口を歪めて鋭くマルシベーラを射抜く第一王子に一同緊張が走るが、意外なことにマルシベーラ本人は臆せず一歩前に出るとその場に跪いた。


「初めてお目にかかります、マルシベーラ・エルルケーニッヒと申します。わら、……わたくしはこの髪の色が理由で人里離れた場所に暮らしていたのですが、この高い魔力を認めていただき勇者様ご一行にご同行させていただきました。」


思った以上にスラスラと予め考えていた設定をのべるマルシベーラにちょっと感心する。


「今回の功労者でもありますので王都に足を運んでいただきました。」


リーンハルトが続けてそう言うと、第一王子がマルシベーラの足先から頭の天辺までを舐めるように観察し、興味がなくなったのかつっと視線を外した。

俺たち全員が気づかれないようにふっと詰めていた息を吐くと、第一王子がおもむろに俺をその視界に収めた。



「何はともあれ、この国に有能な者がいることは素晴らしいな……。今後の活躍にも期待しているぞ。」


「精進致します。兄上。」


俺たちはその言葉にその場で跪き、代表してリーンハルトがそう答えた。

しかし依然として第一王子の視線は俺に注がれており、生きた心地がしない。


まあこれがホモ的な視線でなければ構わないんだが、どうにも俺の立場的に油断がならない。






「まあ、大変でしたのね。」


「ととしゃまー!!」


久しぶりの我が家に帰り、女神と天使に癒される。

マルシベーラのことや、今回の事の顛末を話すと随分お腹が大きくなったアイリーンが俺を労わってくれた。

正直これだけでも行ってきた価値がある。


「でも、マルシベーラ……。女魔王……。どこかで聞き覚えがある気がしますわ。」


どこで聞いたのかしら、と口元に手を当てて考え込む様子のアイリーン。

ヴィルは相変わらず俺の膝の上ではしゃいでいる。可愛い。


「確か、日本で聞いたと思ったんだけど……。」


「……ゲームに関することか?」


日本と聞いて少し嫌な予感がする。

また面倒なことが起こりそうな予感……。


「はぁ……。一難去ってまた一難か。まだリーンハルトルートのフラグも回収してないのに……。」


こめかみを指で抑えてそう言うと、アイリーンが申し訳なさそうな顔をする。

アイリーンを不安にさせるのは本意ではないので、そっとアイリーンの細い肩を抱き寄せてその額にキスをする。


「ゲームに関してなら俺たちよりもミシェリアの方が詳しいだろう。またアイリーンの体調のいい日に遊びに行くか来てもらうかすればいい。」


「みしぇーあ?ておとあうー?」


もう人の区別がついているヴィルが嬉しそうにそう尋ねてくるのにふっと笑を浮かべてアイリーンを抱き寄せた手とは逆の腕でぎゅっとヴィルを抱きしめる。



どんな面倒事が起ころうとも、この二人に危害がいかなければまあいいかと自分の中で折り合いをつけ、いつミシェリアを呼び出すかに考えを巡らせた。

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