尻拭いをするそうです。
三部投稿開!!!!!
「ジルベスター。すみません、私はもう…自信がないんです。」
そう言って俺の前で顔を覆い隠したおかん、もといマティアスがその場で泣き崩れた。
うん、何故こうなっているのか話す前に、いくつか情報の共有をする必要がありそうだ。
それではまず初めに問題。
Q,乙女ゲームにおいて、ヒロインはどのように攻略キャラの好感度を上げますか?
A,キャラと一緒に困難を乗り越えて好感度を上げます♡
Q、『王立学園の貴公子~恋は戦争!障害物などぶっとばせ!!~』の世界において、困難とはなんですか?
A,嫌味な継母と兄と熾烈な後継者争いをしたり、凡才に悩むキャラと家族との絡まった糸を解いて家族仲を取り持ったり、許嫁に抑圧されていた感情を取り戻したり、身分違いの恋を成就させたり、時には魔王とバトルをすることです♡
Q,ゲームではヒロインは攻略キャラを一人選び、そのキャラとのみ困難に立ち向かい問題を解決すればいいのですが、現実では放置された残りの問題はどうなりますか?
A,解決されずに残るので、いつか誰かが対処しなければなりません♡
というわけで俺は今非常にめんどくさい状況に陥っている。
事の発端は数時間前にさかのぼる。
あと、最近うちの天使ことヴィルヘルムが俺やアイリーンの事をととしゃま、かーしゃまと呼べるようになり可愛らしさが臨界点を突破したんじゃないかと言いたくなる、超可愛い。
なんで俺を呼ぶ時にとを2回言うのかはわからんがもうそれすらも可愛い。なんだよととしゃまって、すっごい可愛い。
いつも通り俺がリーンハルトの執務室で業務をこなしていた時だ。普段は未来の宰相となるべく、父親について仕事をしているマティアスが執務室に駆け込んできたのだ。
「マティアス?どうかしたのか?」
リーンハルトがきょとんとした表情でマティアスにそう聞くと、入口の扉にもたれ掛かったままズルズルとその場に座り込んだ。
「おい、マティアス、どうした。」
正直こちらも仕事で忙しいんだが、流石におかしな様子で友人が目の前で座り込んでいるのを見て放置するほど薄情ではない。
近づいてみて、マティアスの身体が微かに震えているのに気がついた。なんでだ。ほんとに何があった??
「マティアス??」
ぽんっと手を肩に置くとびくりと身体を大きく跳ねさせた。
「……私は、何の為に、頑張っているのでしょうか……。」
俯いたままのマティアスが震えた声でそう言った。
「わた、私のような、凡人が……父のような宰相になれるはずなどない……。」
そのまま泣き出したマティアスに、俺もリーンハルトもどうしていいのかわからなくなる。
「ジルベスター。すみません、私はもう…自信がないんです。」
と、こういう訳だ。
正直何がどうしてこうなったのか心当たりがないんだが、このセリフには覚えがある。
原作だこれ。
いやいやいや!!なんで今更原作のセリフがここで出てくるんだ!!?ミシェリアはテオドールとハッピーエンドだろ!!?
リーンハルトの執務室にマティアスのすすり泣く声だ響く。
ばっとリーンハルトを振り向いてみるも、リーンハルトも真っ青な顔でぶんぶん首を振っている。これは、俺が対処しなきゃならんのか?俺なのか!?俺だよなぁ……。
そりゃこの状態のマティアスを立ち直らせる方法を知っているのは俺かミシェリアかアイリーンしかいない。まずアイリーンは論外だ。俺以外の男にそんなの優しい言葉かけさせるなんて、いや、女神だからこの状況知ったら声をかけるだろうけど、俺からは意地でも勧めたくないっっ!!!
アイリーンがいかに女神かを知ったらマティアスもぜったいにアイリーンを好きになるだろ。
ダメだ。アイリーンが俺以外の男からそんな目で見られるとか耐えられん。
次にミシェリアだが……さすがにテオドールが不憫だろ。テオドール自身はまだ清い結婚守ってミシェリアに手を出せてないのに、自分の好きな奴がまた別の男に声かけるとか…。同じ男として不憫すぎてそんなことできない。
じゃあ俺しかないよなぁ………。
マティアスは天才と呼ばれた父を持ち、そんな父と自分との才能差に悩むのだ。さらにはマティアスの母親は夫にばかリ夢中で子供のマティアスは常に二の次だった。
しかし、父親は仕事一辺倒で母にもマティアスにも興味を示さなかったという。
マティアスに才能があればそのマティアスを産んだ自分を見てくれる。そんな母親のエゴに振り回されてマティアスは常にいい子である事を求められ、できなければ激しく責め立てられてきたせいで劣等感を抱えて生きていた。
母が自分を怒るのは自分に才能がないから、父が母に冷たいのは自分に才能がないから、父が自分に興味がないのは自分に才能がないから、だからもっともっと頑張らないと。
そんな思いに支配されたマティアスはついに自分が何のために努力しているのかがわからなくなるのだ。
自分のためか、父のためか、母のためか……。
なんとなく、自分の息子に重ねてしまう。
もしヴィルがそんな風になったら俺は何ができるだろうか…。
正直学生時代の俺の優先順位はアイリーンが上位トップ10くらいまで占めていて、リーンハルトやマティアスの事はなんか流れで一緒にいるくらいにしか思っていなかった。
それが、姉のようなミシェリアに出会って、その姉の好きな人と出会い、友が俺とアイリーンのために行動してくれて、……そして結婚して子供が生まれて俺の中の価値観が大きく変わった。
優先順位の同率一位は相変わらずアイリーンとヴィルだけど、トップ10の中にミシェリア、テオドール、マティアスやリーンハルトもランクインしてきた。
俺はたぶんどこかでここがゲームの世界だと思っていた。それがあの一年の間で現実の世界だと思えるようになったおかげでやっとまともに向き合うことができるようになったんだとおもう。
「マティアス、話をしよう。」
泣きはらした目のマティアスが顔をあげた。
本来原作ではヒロインが痛々しいマティアスを抱きしめて「私が認めてあげます!!お父様の分も、お母様の分も、マティアス先輩の分までっ!!」みたいなことを言うんだが、正直男同士で抱き合うのは遠慮したい。
涙で濡れた顔を子供にやるみたいに俺自らハンカチでぬぐってやりマティアスの手を引いて立たせてやる。
「リーンハルト、俺は今日は帰る。すまんがあとは頼んだ。」
「あ、ああ…。」
まあこんな姿のマティアスをそのまま連れて帰るのも酷なので空間転移魔法で飛ぶことにした。
アイリーンがまだ学園に通っていた時にアイリーン会いたすぎて飛距離がぐんぐん伸びたんだよな……。
子供を妊娠したアイリーンの元にすぐに駆け付けられるように、城から自宅までの距離なら飛べるようになった。
愛の力はすばらしいと思わないか?
俺のアイリーンへとヴィルへの愛は語ればとどまることを知らないのでいったん置いておくとしよう。
まあ結局俺が何を言いたいかというと、ミシェリアが回収しなかった乙女ゲームのイベントのしりぬぐいをしなきゃならんらしい。
もう一個の方の連載と同時進行なので、隔日で投稿していきます\( 'ω')/バッ




