従者の記録:後日談
お久しぶりの投稿でございますヾ(:3」∠)_
あのプロポーズの日から月日がたち、ついにミシェリアとフュルスト侯爵令嬢が卒業し、フュルスト侯爵令嬢とマーキス侯爵子息が正式に結婚した。
卒業パーティーでの疑似結婚式でもうるんでいたミシェリアの涙腺が実際の結婚式で耐えきれるはずがなく、早々にダムは決壊しボロボロと涙を流していた。貴族の結婚式には珍しく結婚式の後に行われた披露宴のダンスパーティーで友人代表のあいさつを取り入れたらしいマーキス侯爵子息はそのスピーチになぜかミシェリアを指名した。
「ジル君は学生時代から会うたびにいかにアイリーンちゃんがかわいくてきれいで美しいかについて語っていました。表情筋がほとんど動かずアイリーンちゃん以外のことになるとめんどくさがりを発揮し、朴念仁なジル君ですがきっと、いや、絶対にアイリーンちゃん以外に見向きもしない良い旦那様になってくれると思います。むしろならなかったらアイリーンちゃんの友人代表としてこの首をかけてでもジル君をぶん殴ります!!」
身分差などものともせずにシャドーボクシングのようにシュッシュッとパンチを繰り出すミシェリアに頭が痛くなる。何をやっているんだお嬢は。まあマーキス様とフュルスト様が笑っているから大丈夫だとは思うが。お嬢はいつもひやひやとさせてくる。しかしまあ周りの貴族の面々はあっけにとられた表情をしているけどな。
そんな常識破りのスピーチで始まったダンスパーティーで恐れ多くも俺とミシェリアはマーキス様とフュルスト様と一緒にファーストダンスを踊ることになった。ほんとにどうしてだ。
なんでもリーンハルト第二王子に結婚を保証してもらったもの同士だからだそうだ。
本当に今までどうやってこの交友関係を隠してきたのかと問い詰めたいほどにミシェリアとマーキス様、フュルスト様は仲が良く、俺はかつてないほど胃を痛めた。正直公衆の面前でプロポーズをした時よりも断然胃が痛い。この人たちは身分差がいかに重要なのかわかっているのか?わかっていないだろう。はぁ、まあ今更だな。この一年で三人の非常識具合には慣れた。
「ミシェリア、少し抜け出さないか?」
そっとミシェリアの後ろから近づき耳元でささやく。
「ひぁ!もう!もうテオ!!びっくりするからそうやって後ろからささやくのやめてよね!!」
もう!と怒りながらも頬を赤らめて照れるミシェリアが可愛い。
「ごめん。で?一緒に来てくれるのか?」
「……私が断るわけないじゃん。」
俺が差し出した手を、ちょっと頬を膨らませて握ってくるミシェリアに愛おしさが募る。マーキス様とフュルスト様がご結婚なされたということは、今度は俺とミシェリアの番ということだ。この可愛いお嬢が俺のお嫁さんになってくれるのだと思うとそれだけで胸がいっぱいになる。
俺の、俺だけのお嬢。ずっと昔からただこの子だけを思って生きてきた。まさか本当に結ばれるなんて思いもしなかったけど。
ダンスフロアの喧騒を背に最愛の人の手を引いてバルコニーに出る。
「んー!!いい風だねぇ。」
春の柔らかな夜風を浴びてミシェリアがまるで妖精のようにくるくると踊る。
するりと俺の手から抜けていってしまう彼女を後ろから抱きしめた。
「おおう!!?ちょ、テオさん!!?!?」
「ミシェリア、好きだ。」
「ん゛ん゛っ!!え、あの、どうしたの?」
わたわたと腕の中で焦る彼女から身体を離し、こちらを振り返ったミシェリアの目の前に跪く。
「改めて誓わせてくれ。貴女が、ミシェリアが好きだ。愛してる。だから、俺と結婚してくれ。」
真っ赤に熟れた林檎みたいな顔を両手で覆い隠してしまったミシェリアの腕をそっと引くと、大した抵抗もなく俺の手に収まった両手にキスを落とす。
「……テオのお嫁さんにしてくれなきゃ、むしろ私が怒るから。」
恥ずかしさのあまり目に溜まった涙が、ミシェリアのビビッドピンクの瞳をまるで宝石のように輝かせた。
そんな俺にとって世界で一番大切な女の子を独り占めしたくて、立ち上がり今度は正面からミシェリアをきつく抱きしめた。
「で?俺たちの式はいつあげる?夏か秋か、冬でもきっと綺麗だろうな。」
「え??テオ、今年あげるつもりだったの??」
「……ん!?」
まさかの言葉に思わず腕の中のミシェリアを見る。きょとんとした表情でこちらを見上げるミシェリアが可愛い、いやいや、そんなことより、んんん!?
「……今年、挙げないのか?」
そこだ。やっとだぞ、思いが通じて約1年、子供の時から合わせると十何年間我慢して、やっと嫁に出来ると思ったのに!!?
「えっと、今年私が18歳でしょ?でもさ、その、子供とか、産むこと考えたら……ね?もうちょっとやりたい事もあるから後がいいなー、なんて……。ダメ?一応25歳までなら行き遅れって言われないし、そのくらいまでは待ってて欲しいかなって。」
可愛い顔でこてんと首を傾げるミシェリア。
つまりは短くても後7年俺は自分の煩悩と戦わなければならないらしい。
行けるか?無理だろ。恋人だぞ?清い結婚保てるか?夜とか関係なく可愛く甘えて来る恋人を前にして理性が耐えきれるか??
「……テオ、ダメ??」
ああ、そんな目で見るな。
眉尻を下げて悲しそうな表情で聞いてくるミシェリアに勝つ術を俺は持っていなかった。
「お嬢が、望むなら。何年でも待つよ。」
チュッと俺を見上げる彼女の額にキスをする。
「テオ、ありがとう。大好きっ!」
首に手を回してキスをしてくるミシェリアに俺も応えてやる。
でも、頼むから俺をあんまり刺激しないでくれっっ!!!!!
俺の苦難はまだまだこれかららしい、辛いっっ!!!
まあ喪女に我慢する男の辛さはわかんないよねってお話です。
この世界の結婚適齢期は
女:15〜25 男:15〜35
くらいのイメージです。
この後ミシェリアはテオと一緒に服飾系の事業を立ち上げ、微妙にださいこの世界の洋服事情の改善に全力を尽くします。コッドピース、お前だけは認められねぇっっ!!!




