=ある女の計画=
あの後しばらくジル君と二人でアイリーンちゃんの転生者説について話していると、テオとリーンハルトがおずおずと近寄ってきてそれぞれジル君と私に謝ってくれた。
「ジル、すまない。私の勘違いと自分勝手な正義感のせいでアイリーン嬢を傷つけた。そして、ミシェリア。君も、まさか従者と恋人関係とは思わなくてな。ほかの者と噂されるのは不愉快だっただろう、、すまない。」
「マーキス様、自分に自信がないばっかりにお嬢と仲がいいあなたを疑ってしまいました。申し訳ございません。…ミシェリア。ごめんな、ちゃんと、ミシェリアの恋人だって胸張って言えるように頑張るから。これからも俺の恋人でいてくれるか?」
ジルに謝ったあと私の前にひざまずき、まるで結婚のプロポーズをするみたいに私の手を取り甲にキスを一つ落としたテオに顔が真っ赤に染まる。
「そ、そんなこと、断るわけないじゃない!!もうっ!」
「コホン!」
瞬く間にピンクのオーラを放つ私とテオに見かねたマティアスが赤い顔でせき払いをしたことにより私もハッと我に戻る。
「と、とりあえず!!ジル君とアイリーンちゃんの仲を戻すためにリーンハルト先輩とテオは強制で手伝っていただきます!!マティアス先輩とギデオンは自由参加だけど、できれば手伝ってほしい、かな?」
ひとまず私とテオは破局の危機、というほどでもないけど、を脱したので次はジル君とアイリーンちゃんのために動こうと思う!!
「え、ええ。私はジルベスターのためなら尽力いたしますよ。」
「僕もマーキス先輩にはお世話になったから構わない。でも、何をするんだ?」
不思議そうな顔で聞いてくるイケメンたちにちょっとどや顔をする。
「ふふん。ズバリ!公開プロポーズ大作戦!!アイリーンちゃんはいつかジル君が自分から離れるんじゃないかって不安になっているから、いっそのこと離れられないように公開で全校生徒を巻き込んだプロポーズをしちゃえばいいんじゃない!?」
これが漫画なら後ろにばばんっ!とでも効果音が書かれていることだろう。そのくらい自信があったのだが、リーンハルト達の表情は暗い。
「公開…プロポーズ。」
「そ、それはまた思い切ったことをしますねぇ。」
「で、でもマーキス先輩はそういうの苦手なんじゃないか?」
周りは各々不安を口にするのだが、当の本人はきりっとした表情で真面目に私の話を聞いてくれているようだ。
「確かに一理あるな。公開プロポーズというからにはパーティー会場でするんだろう?いつやるんだ。パーティーの前か?後か?」
「え、マーキス先輩本気でやるんですか!?」
「そこにアイリーンとよりをもどす可能性が1%でもあるのであれば俺は構わない。」
「……まさかそこまでジルがアイリーン嬢のことを好いているとは思わなかったな…。」
乗り気のジル君に驚きざわめく男たちにテオがパンパンと手を叩いて静かにさせる。
「とりあえず、お嬢の案を卒業パーティーにするのに異論がないのであれば早く詳細を決めましょう。時間がもったいないですよ。」
その言葉が皮切りとなり私たちは卒業パーティーまでの数週間、私の前世の結婚の知識をベースに着々と準備が進めた。
卒業パーティーが明日に迫った夜、私たちは流れの最終チェックだけ済ませ早々に自室に戻り休息をとることにしたのだが、今日はいつもに増してテオがくっついてくる。
「て、テオ?どうしたの??」
私の背中側から覆いかぶさるように抱きしめてくるテオにドキドキと心臓が高鳴る。いくらだいぶ慣れたからと言ってもまだイケメンに密着されると緊張する。相手がテオならなおさらだ。
「いや……最近二人でまったりする時間がなかっただろう?だから、ちょっと引っ付かさせてくれ。」
そういったっきり余計私を抱きしめる腕に力を入れるテオ。いや、うん、恋人だからいいんだけどさ、いいんだけどさ!なんていうかこう、私だけ手持ち無沙汰感が否めない!!
正面から抱きしめてくれるときは私もテオの背中に腕回したり、その見た目よりも数段たくましい胸筋を堪能したりできるんだけど、背面から抱きしめられると腕の置き所に迷うし、後ろのテオが見えないから耳元から聞こえてくる色っぽい吐息にいつも以上に反応してしまう!!これはだめだ!!
「て、テオ…。これ、やだ。顔みたい。」
しどろもどろそういうとテオは何も言わずに私をひょいっと抱き上げてなぜかベッドに進んでいく。・・・・・。べっどぉっ!!!?!?!?
ちょ、ておさん!!?ておさんっっ!!?!?!?なんでビーストモード入ってるのぉっ!!?それはちょっとダメだって!!前世合わせてもう人には言えない年齢だけども!!私今生ではまだ16歳だよ!!?
ぽすりとベッドにおろされた私は混乱のあまり何も言えずにただただテオを見上げていたのだが、その表情から私の思考を読み取ったのかテオはクスリと苦笑いを浮かべた。
「ミシェリア、安心しろ。さすがに清い結婚は守るよ。」
「ぅえっ!!?あ、いや、うんっ!!それはよかった!!!」
清い結婚とは、まあその言葉の通り清い関係のまま迎える結婚式のことだ。婚前交渉をしないのを意味してるんだけども、それにしたってこの状況はいかがなものだろうか!?そう思っているうちにテオはするりとその身を布団の中に滑り込ませ、私たちの上にきちんと布団をかけてまた私をぎゅっと抱きしめる。
「て、テオ……?え、あの、なに?なに?」
あまりにも予想外の行動にまともに言葉が紡げない。
「……ミシェリアも、ああいうプロポーズがいいのか?」
私を抱きしめたままぽつりと聞いてくるテオの思いがけない言葉に驚く。このプロポーズ大作戦の話をしてるときからずっと何かを考えてるみたいだったけどまさかそのこと考えてたの?もしかしなくとも、私のために?そう思うとうれしさがこみあげてきてぎゅっとテオに抱き着く。
「うーん。確かにさ、あんな風にみんなの前で好きだって言ってもらえるのは恥ずかしいけど、うれしいかな。」
「そうか……。」
「なにー?もしかしてテオも同じように告白してくれるのー?」
冗談半分でそう言ってテオの顔を見上げると思った以上に真剣な顔をしていて思わず息をのむ。
「……はぁ。いや、まあ考えておくよ。さ、もう寝るぞ。」
そういってぎゅっとテオの懐に抱き込まれる。いやいやいや!!こんなの言われて眠れないよ!!?
ドキドキと脈打つ心臓を必死に抑えようと目をつむったらテオの腕の中の安心感がすごくて思いのほか早く眠ってしまった。不覚……っ!!
後少しっ!!!




