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乙女ゲームの攻略キャラだけど許嫁を愛でたい。  作者: 籠の中のうさぎ
喪女にヒロインは荷が重すぎない?
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第二王子の初恋の話

私には好きな人がいる。初めて好きになった愛しい人……。

初めて彼女に相談を持ちかけられた時、こんなにも一途に人を想うことができるのかという単純な興味だったのが徐々に相談に乗るうちにいつの間にか好きになっていた。だが彼女の目には私などみじんも写っていないことも知っていた……。恋を自覚すると当時に私はこの恋が叶わぬものだということも自覚したのだ。

相手が誰かはわからないがきっとこんな素直な少女が好きになる人なのだから素敵な男性なのだろう。

その相手が誰なのか皆目見当もつかなかったのだが、それが誰なのかようやく察しがついた。


今日生徒会室でジルを除くメンバーで交流を深めていたのだが、ふとミシェリアに聞きたいことがあってジルの婚約者であるアイリーン嬢について質問した時のことだ。

私とマティアスのアイリーン嬢への評価は一つ、婚約者の立場を利用してジルの行動に制限をかける束縛女。実際アイリーン嬢が入学する前はジルは私やマティアスと過ごす時間が長かったのにアイリーン嬢が入学した途端休み時間のたびにアイリーン嬢の教室に足を運んでいた。あんなに真剣に取り組んでいた空間転移の魔法もアイリーン嬢が入学してからは伸び悩んでいたようだし、今年はさらに今まで全く興味のなかった占星学の講義をアイリーン嬢と一緒にとっている。


「?そのアイリーンって人、なんかあるんですか?」

ギデオン・バイカウントにそう質問されあまり悪口は言いたくないのだが私の親友のジルの今後に関わるかもしれない事柄なので正直にいうことにする。

「……あまり女性を悪く言うのは好きではないが、アイリーン嬢が入学してからジルの様子がおかしくてな。」

「…まあ、簡単に言ってしまえばジルベスターの行動がアイリーンさんに制限されているのではないかと、考えているんですよ。

「は?……何それ、マーキス先輩の行動制限してるってなんでそう思うんですか。」

私とマティアスの言葉に信じられないといった表情をしたミシェリアがそう聞いてくる。

「アイリーン嬢が入学してからは空き時間があればいつもアイリーン嬢に会いに行っているらしい。」

「さらには今年占星学なんて興味のない授業をアイリーンさんと取ってますね。」

そう説明するのだがミシェリアはどうしても釈然としないようで眉を寄せて困ったような顔をする。

「それ、単純にジルベスター先輩がアイリーンさんのこと好きってだけなんじゃないんですか?」

まさかそんなふうに言われるとは思っておらずつい言葉に詰まるものの、それについても思うところがあるのだ。

「確かに、ジルベスターは何かあるたびにアイリーンさんが好きだとは言ってはいますが…。」

「言ってしまえばそれすらもアイリーン嬢の指示なんじゃないかと私たちは考えているんだよ。そうじゃなかったらあの寡黙でストイックなジルがそんなに誰かを好きだのなんだの言うとは考えにくいからな。」

「で、でも、ジルベスター先輩ってしょっちゅうアイリーンさんのことのろけてますよね!?」

それでもなお言い募るミシェリアにほんの少し違和感を抱く。なぜミシェリアはこんなにもジルとアイリーン嬢のことについて食いかかってくるんだ?

「……お嬢は、よくマーキス様のことを見ていらっしゃるんですね。」

そういったミシェリアの従者の言葉を聞いてハッとする。確かにミシェリアは私からジルを紹介する前にジルのことを知っていた様子だった。占星学で同じ講義をとっているにしたってそこまで仲良くない人を名前で呼ぶか?ましてやジルはミシェリアよりも爵位が上だ、つまりミシェリアが勝手に読んでいるんじゃなくてジルからの合意があった上で名前で読んでいるはずだ。

「え!?ち、違うって!たまたま話す機会があった時は大体アイリーンさんののろけ聞かされるからっ!」

ミシェリアは慌てたようにそう言うがその慌てふためく様子すら怪しく見える。

「そうなんですか?だとしたらジルベスターはミシェリアさんにずいぶん心を開いているようですね。私たちでさえジルベスターと色恋の話はあまりしませんから。」

心を開いている、そう聞いて思い当たることがある。もしかして、ミシェリアが私に相談していたあの恋人の相手というのはジルのことなのか…?自分より爵位の低い女性を妾として囲うことは何も珍しいことではない。ジルがミシェリアを好きで将来妾にするつもりなら今アイリーン嬢にミシェリアのことを知らせるとフュルスト侯爵家からの暗殺もあり得る。そのためにミシェリアがジルの名前を隠し、今アイリーン嬢とジルの仲をいいように見せようとしているのだとしたら?ありえなくはない……。

「…、そうかミシェリアはジルと仲が良いのだな。もしかして、この間の相談の相手はまさかジルベスターか…?」

「違いますって!」

まさかと思いカマをかけてみたのだが、ミシェリアは手をぶんぶんと顔の前でふって必死に否定している。ここまで否定されると逆に怪しくないか?私の思い違いならいいのだが、もしも本当にミシェリアの恋の相手がジルだとすると少々厄介だな…。これが本当にしろ思い違いにせよミシェリアを悲しませる結果にならぬように一度ジルに話を聞く必要がありそうだ。


そう思いジルを探していると、人気のない廊下にぽつんと立たずむジルを見つけた。

「ジル?」

こんなところでいったい何をしているのだろうと訝し気に思いながら声をかけるとハッとしたようにこちらを振り向くジル。いつも気配に敏いジルには珍しいなと思う。まさか今までここで誰かと会っていたのではないだろうか、その相手がもしミシェリアとしたら?嫌な予感がふつふつと芽生えてくる。ミシェリアとの関係を聞くなら今しかないだろう。

「リーンハルトか。どうした。」

「いや、ちょうど君を探していたんだ。……その、ジルは、どう思っているんだい?」

「……すまないリーンハルト、なんの話だ。」

ジルが呆れたようにそう言った。さすがに誰が来るかもわからない廊下で名前を出すのははばかられるがジルには友人として、恋のライバルとして真正面から直球で話し合いたい。

「とぼけないでくれ、ミシェリア嬢のことだ。君も少なからずあの子の事を思っているんだろう?」

「……俺には婚約者がいる。」

こめかみに手を当ててそういうジル。普段表情をあらわにしないジルがここまで感情を表に出しているのは、まさかとは思うが、本気でミシェリアと恋をしているのではないだろうか……。いや、もしそうなのだとしたら私はジルの友人として応援するべきか、ミシェリアの友人…彼女を愛する者として止めるべきか……。今ここで決められない時点で私はミシェリアにはふさわしくないのだろう。きっと、ここでジルを止めたとしても私は将来きっとミシェリアと何かを再び天秤にかけてしまう……。それよりは当人同士ジルとミシェリアに任せたほうが互いに納得のいく結果になるだろう。

「アイリーン嬢か……。いや、俺はジルがどのような選択をしても友人であり続けるつもりだよ……。」

今の私にはこれしかいうことができない。思わず自嘲的な笑みを浮かべそれを悟られないように足早にその場を去る。もとより実ることがないとわかっていた私の初恋は何とも締まらない終わり方になる。


きっとこの先誰かに恋をするたびにこの日のことを思い出すだろう。願わくば、また次に恋をするときは相手を天秤にかけるまでもなく選べるような、そんな恋がしてみたい。

「ははっ。なんて、自分のことながら少し女々しすぎるな…。」

あと4話くらいで2部が終わります\( 'ω')/

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