=ある女の新しい友人=
「おや、君はこの間の子だよね。」
またまたテオを撒いて一人で行動していたある日、リーンハルト様に出会いました。
「そうか、うまくいってよかったよ。」
「はい!リーンハルト様のおかげです!!」
テオの件ではお世話になったので一緒にお茶を飲みながらうまくいったことのご報告をする。
長く美しいおみ足を組んで紅茶を飲むリーンハルト様ってまじで王子様。オーラが違う。
実はこのリーンハルトというキャラはゲームの立ち絵など、どのイラストにおいても必ずキラキラエフェクトと一緒に描かれていたのだ。それがまさかオーラとして再現されてるとは思わなかった。心なしかキラキラしたエフェクトが周りを飛んでいる気さえしてきた。
「でも君みたいにかわいい子から告白させるなんて君の彼氏はよほどいい男なんだろうね。」
少し冗談交じりにそういわれた、しかし私はここぞとばかりに語りたい!どれだけテオがイケメンかを!!
正直伯爵令嬢が自分の従者と、それも男爵家の五男みたいに貴族的には社会的地位が内に等しい人とお付き合いするなど醜聞以外の何物でもないのだ、私は平民上がりだし気にしないんだけど。
私はぜひともお父様におつきあいの報告をしてテオと婚約関係になりたいのだが、ほかでもないテオに止められてしまった。だから、どれだけテオがかっこいいのか、私の恋人が最高なのかを誰にも話せなかったのだ。でもかっこいい恋人がいるなら自慢したくなるのが女ってものなのではないでしょうか。
「ほんとにいい男なんですよ!聞いてくれますか!!!」
思わず前のめりになりそう言っていた。王族にこの態度はダメだろ!と今更ながらに後悔していると、リーンハルト様はくすくす笑ってじゃあ教えて、なんて言ってくださった。何なの、顔のいい人は心までイケメンなの?
そのあと私は思う存分語った。いかにテオが男らしく、気遣いができて、私のことを大切にしてくれているのかを幸せいっぱい語った。たぶん同じような内容を二度三度してしまったかもしれないが、リーンハルト様はにこやかに聞いてくれた。イケメンかよ!イケメンだったわ…。
「ふふっ!君は随分とその彼に愛されているみたいだね。本当にうまくいって本当によかったね。」
「はい!リーンハルト様のおかげです!」
「私は何もしていないさ。君が自分で決めて君が勇気を出して行動した結果だよ。」
確かにそうかもしれないが、私が勇気を出すきっかけになったのはほかでもないリーンハルト様のおかげだ。王族であることを驕るわけでもなく困った人に声をかけられるリーンハルト様はまさしく王様に向いている性格だと思う。
「リーンハルト様がお話を聞いてくれたからですよ。人の心に寄り添えるやさしいリーンハルト様とお話ができたからこそ、私は勇気が出せたんです。ありがとうございました。」
「っ!…うん。こちらこそ、ありがとう。」
「なんでリーンハルト様がお礼いうんですかー。」
なんていうか、テオの時とは違って本当にお兄ちゃんみたいな人だなと思う。話していてもドキドキしないし、やさしいし、何よりもあったかい心を持った人。
「あの、またお話聞いてもらえますか?こういう話をできる人が少なくて。」
だからだろうか、何度でも話を聞いてほしくなってしまう。お兄ちゃん効果かな。
「私でよければいくらでも話を聞くよ。」
でもなぜかそういったお兄ちゃんの顔は少し寂しそうだった。
「そしたら新しいお友達っていうことで!って、ずうずうしすぎます?」
少しでも場の雰囲気を和ませようと図々しいとわかっていながらそんなことを聞いてみると、リーンハルト様は一瞬目を見開いてやさしげに微笑んだ。
「君みたいにかわいらしいご友人なら大歓迎だよ。」
イケメンかよ。イケメンだわ。こんなことリアルにいえる人ってそうそういないでしょ。かっこよすぎか。
そうしてリーンハルト様が次の講義に行かれるまでの間、他愛もないことを話した。
リーンハルト様がいなくなった後、ふと違和感に気づく。今までテオを撒くことは多々あったけど、割とすぐに発見された。でも今回リーンハルト様とお話ししているときは結構時間が経っていたにも関わらず、一向にテオが現れなかったのだ。
しばらく校舎内をうろうろと探してみたけどテオを見つけることはできず、しょうがなく寮の自室に帰った。
「ミシェリア、おかえり。」
「うわ!テオ、ここにいたの!?」
テオは私の自室で待っていたようだ。
「え、珍しいね、どうし、」
「楽しかったですか?」
「え?」
私の言葉にかぶせるようにテオがそういった。
「リーンハルト第二王子と、お話ししていたのでしょう?楽しかったですか?」
それを聞いて少し納得がいった。ゲームの中での設定でもそうだったが、テオは自分の身分の低さをコンプレックスのように思っている。おそらく今回はこの王国の最高権力である王族の人と私が話しているのを見てそのコンプレックスが刺激されたのだろう。でも、私は権力なんていらないし、いくらイケメンに迫られたってテオ以外の人と付き合うつもりもない。
たぶんおそらく不安を抱えているだろうテオにギュッと抱き付いて、頬にキスをしてみる。
「お、お嬢!?」
普段私は恥ずかしがって自分からこういうことはやらないからテオが目に見えて焦っているようだ。慌てるイケメンかわいすぎかよ!!
「リーンハルト様とはテオのこと話してたんだよー。自慢の彼氏ですって。」
だから安心してほしいとう願いを込めてそう言うが顔が熱くて抱き着いたテオの体から離れられない。
世の女性たちは恋人にこういう恥ずかしいことを日常的に言うんでしょ?何それすごい。私はもう頭パンクしそう。
「ミシェリア…。」
一気に甘さを含んだ声になるテオに思わず腰が砕けそうになる。イケメンのささやき声は破壊力がすごいんだよ。でも、いつまでも子供だと思ってほしくないから今日は私から仕掛ける!
覚悟を決めて顔を上げ、幸せそうにゆるんだテオの顔を両手で挟んで、触れ合うだけのキスをする。
予想外の私の行動に目を見開いて固まるテオをから素早く離れ寝室に逃げ込む。
「お休みテオ!!また明日ね!!!!」
まあそのあとすぐ寝室に飛んできたテオに十倍返しどころか百倍返しか千倍返しくらいにされたけどね!!!心臓が持たない!!!
テオとミシェリアがいちゃラブしてるの書いてて私がいたたまれなくなってくる。
なにこのバカップル。ジル編のジルとアイリーンよりもイチャイチャしてない?




