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乙女ゲームの攻略キャラだけど許嫁を愛でたい。  作者: 籠の中のうさぎ
喪女にヒロインは荷が重すぎない?
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=ある女の既視感=

「では、お嬢。俺はここまでしかお供できませんので。お荷物、大丈夫ですか?」

「大丈夫だよーテオ。こう見えて私体力はあるから。」

今日私は占星学の講義を受けるために学園の尖塔に来ている。前にも言ったが、従者は公平を保つために教室には入室できない。それはこの尖塔にも適用され、従者は尖塔の入り口までしかついてくることができない。

正直アイリーンちゃんのこともあるしわざわざイケメンのジル様にかかわりたくないんだけど、とってしまったものはしょうがない。

テオから受け取った大量の教科書類を抱えて塔の長い長い階段を上り始める。

ジルルートでは、たまたま塔の階段でヒロインがジルベスターとアイリーンと会うところから始まる。理想の騎士を体現したようなジルベスターはヒロインの荷物を持とうとするのだがそれに嫉妬したアイリーンがヒロインを階段から突き飛ばし、階段から落ちそうになったヒロインをジルベスターが助けるスチルイベントがある。

麗しのアイリーンちゃんのためにも私はそのイベントを起こさないようにしたい。そのために普通よりも早くきて、アイリーンちゃんとジル様が来る前に階段を登り切ろうと思う。

そう、思ったのだが…。


「このっ!階段っ!!めっちゃ、しんどい!!!!」

思った以上に階段がきっつい!!平民街で鍛えてるからいけるとか思ったけど予想以上だわ。しかも本が重いから重心がぶれる。本を抱えなおそうとした瞬間、私の足がずるっと階段から滑り落ち、エレベーターに乗った時のように内臓からふわりと浮き上がる感覚がする。これは、やばい…。

「きゃあっ!!?」

とっさに手すりをつかもうとするが本を持ってたせいで反応が遅れた。ほんとに落ちる。

そう思ったとき一気に私に重力がかかり誰かに抱き寄せられる。恐る恐るその相手を確認すると、ジルベスター・マーキス、その人だった。

「あ、あ、あ……あり、ありがとう、ございま、す。」

恐怖と驚きから必要以上にどもってしまった。そこでちょっと攻略キャラをじっくり観察してみる。

赤茶色の短く切りそろえられた髪の毛に茶色の鋭い眼光。精悍な顔立ちと服越しでもわかるがっちりとした体形にうっかりドキドキ…………しない、だと…!?

なぜだ?この恋愛力たったの5しかない私がこのイケメンに抱き寄せられてドキドキしない、だと!?

「いや、怪我はないか?」

「あ、だ、大丈夫ですよ!問題ないです!」

おかしい。ついじっとジル様のご尊顔を眺める。うん超絶イケメンでもテオの時みたいに胸がどきどきしたりしない。これは、もしかしてイケメンを克服したのか!!?そうなのか!!?

「すまない。自分で体勢は整えられそうか?」

「へ?あっ!は、はいっ!!」

今のジル様の格好を確認してみると、なるほどジル様が自分で体勢を整えるのは難しそうだ。勢いよく落ちてきた私を受け止めたせいですごい恰好になっている。

あくせくしながらジル様の腕の中で体勢を整え自分で立つ、と同時にジル様が離れていく。

「アイリーン、どうした?」

その言葉に私は初めてその場にアイリーンちゃんがいたことに気が付く。

ちょ、泣きそうな顔してるんだけど!?え、ごめん、ちがうんだよ!ジル様とは何もないんだよ!!

「わ、わたくしは先に行っていますわ。」

「アイリーンっ!!!」

そういって走り去っていくアイリーンちゃんをすぐさまジル様が追いかける。

一人ぽつんと取り残される私。ちょ、ジル様私の教科書も持っていきやがた!!


しょうがないから一人で教室に行くと先に行ったはずのジル様もアイリーンもちゃんもいなかった。

前のほうの席に一人で座っているとふいに声をかけられる。

「ミシェリア・アール。お前の教科書だろう?」

「あ、ああっ!ありがとうございます!助かりました!」

ジル様に声をかけられて思わずドもってしまったが、やっぱりテオの時みたいにドキドキしない。若干呆れられたような視線を向けられているような気がするんだけど。

………。やっぱりジル様って誰かに似てる?ジル様を見てるときゃ!イケメン、どうしよう!?って気持ちよりもあれ、この視線知ってるぞ?みたいな既視感あるんだよね。

そうおもっていると急に大きな音を立てながら教師のアノーイ・ラーラレンが入ってきた。そしてなぜかそのままジル様としょっぱなのペアを組むことになってしまった。

やばいやばいやばいやばい。ジル様の機嫌がすこぶる悪い!!先生に魔法で縛られてるから動けない!!

私の横ですごく先生を威圧するジル様。

先生の長ったらしい演説が終わるや否や後ろを振り返りさらに機嫌を悪化させるジル様の視線をたどってみると、アイリーンちゃんがほかの男子生徒に話しかけられていた。

「あ、あの、話し合い、しません、?」

恐る恐る声をかけると一瞬こちらに視線をやり体をこちらに向ける。…一応話し合いをする気はあるようなのだが顔は依然としてアイリーンちゃんのほうに向けている。

べたぼれじゃないか!!ゲームの時みたいにアイリーンちゃんの一方通行かとも思ったけど、ジル様のほうがべたぼれっぽいぞ!!?これは、これは私の恋愛とかよりもよっぽど面白そうな気がする!!


授業が終わるや否やアイリーンちゃんの所に駆けていき二人で教室を出ていくアイリーンとジル様を見て思わずにやにやしてしまった。

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