=ある女の貴族生活=
さて、私はあの後すくすく成長しついにアール伯爵、つまり私のお父様に再会したわ。
原作通り私はアール伯爵家の令嬢として正式に迎え入れられることになった。それはつまりもう少しで私が『王立学園の貴公子 〜恋は戦争!障害物などぶっとばせ!!〜』の舞台となる王立リベクリーク魔術学院に編入することを意味している。
ついに!ついによ!!ヒロインポジに生まれた私ってばもうほんと可愛く成長してもう人生KA・CHI・GU・MI☆ってかんじ!昔の私とは違うのよ!原作知識チートでいい男達を侍らせてやるわ!!ファイトよ、私!
ふふふっ、と怪しい笑顔を浮かべているとふと横からテオが覗き込んできた。
「ミシェリア?どうかしたか?」
「ひぃっ!?な、なんでもないです!」
つい悲鳴を上げてしまう。え?昔と何が違うって?イケメンと恋愛してやろうって本気で決意したことよ。この間お父様の二人のご友人に会ったの。その人物はなんと私がバッドエンドに進んだ場合に結婚することになる蛙似のおっさんと豚似のおっさんだった。誰とも恋人関係にならなかった場合このおっさんのどっちかとランダムで結婚することになるのだ。改めてみて思ったけど、あれは、ない…。正直テオドールっていう一級品のイケメンと10年以上一緒にいたから余計…きついです……。
さらに言うと、この10年イケメンテオと一番近い距離で過ごしていたのに全く接近しませんでした!何度か勇気を出して好きだって伝えたけど子供の冗談ってとられたわよ!私のリアルでの恋愛耐性の低さが憎い!!!!これがリア充ならもっとうまく立ち回ってたはずよ…。
なんなの!?せっかく若くてぴちぴちな身体と誰も彼もが振り向く可愛らしさなのに!
中身なの?中身が喪女じゃリアル乙女ゲームは楽しめないの!!?
確かに人生で一度も彼氏のひとりもいなかったけどねっ!!
「ミシェリア。やっぱり調子が悪そうだぞ。俺から伯爵様には話を通しておくから休んだらどうだ?急に環境が変わって疲れているだろ?」
「、、、だ、大丈夫ですよ。ありがとうございます、テオ。」
なんとか悲鳴は気合で飲み込んだ。
さっきから横でチラチラ私を気にしてくれるテオ。わたしの従者であり、攻略キャラの1人。そんなに私を心配しないで、惚れるわよ!!?もうほとんど惚れてるけどね!!あなたも私に惚れてくれていいのよ!?
ほんとに…そしたらこんなに悩む必要もないもの…。
明日、私は物語の舞台である王立リべクリーク魔術学院の2年に編入する。王立学園なのか王立魔術学院なのかはっきりして欲しい。設定甘すぎない?
まあそれはともかく、長年一緒にいるテオにも未だ緊張するのに初対面のイケメンと恋愛なんて私に出来る訳ないじゃない。
恋愛力たったの5よ?恋愛力53万くらいあるイケメン達と渡り合えるとでも思ってるの?
はぁ……
可愛くなっても頭の中は喪女のままなのよ……すぐには変わらないのよ……。
せめてテオにはそばにいてほしい。ひとりでイケメンと渡り合うなんて、無理。
「あのテオ?できればでいいのだけれど、その、できうる限り私と一緒にいてくれない?」
「お嬢がそう望むなら、いつでもそばにいるよ。」
「ありがとう。」
テオはすっかり従者らしくなった。私のことをミシェリアと呼ばなくなりお嬢と呼ぶようになった。
公の場では敬語で話すようになった。それがほんの少し寂しくて、最高に萌える。
お兄さんキャラの敬語とかヤバくない?いや、ヤバいよね??
お嬢って呼び方もかなり来るものがあるけど、気を抜いたときに今までと同じようにミシェリアって呼び捨てにされた時が最高にくる。
ほんとに惚れるよ?これ惚れてもいいのかな??
しょっちゅうそんな風に考えるけど、結局テオにとっての私は姪のような妹の存在なのだと思ってブレーキをかける。しかもテオドールルートの問題は確か身分差だったはずだ。伯爵なんて後付けの地位でテオに告白を断られ続けるのを考えるだけで心が折れそうになる。
いやもうほんとに、喪女にヒロインは荷が重すぎません?
もうちょっとで第一部と絡みます。




