従者の記録:ミシェリアという子供
ヒロインの従者、テオドール目線のお話です。
俺の名前はテオドール・バロン。バロン男爵家の5男坊だ。男爵という爵位は正直金さえあれば買えてしまう様な地位なので長男以外に相続権は認められず、大人になれば自分たちで職を見つけて働くしかない。他のお貴族様みたいに実家で、国から金をもらい悠々自適に暮らすことができないのだ。
それは俺にも当てはまり、俺は父のコネでアール伯爵家というそこそこ大きな伯爵家に奉公することが出来た。普通の下働きとして働いていたのだが、ある日他でもない当主様からお呼びがかかった。
「ご主人様、御用は何でしょうか?」
「うむ、テオドールくんには私の娘の護衛の任についてもらいたいんだ。」
「は?ご、ご息女様ですか?」
思わず素で答えてしまったので慌てて取り繕おうとしたのだがご主人様は全く気にかけた様子もない。
「そうだ。私が昔平民の女性を孕ませてしまった時にできた子供でね。今は平民街で暮らしているんだ。平民街でもしぶとくやっていけそうなのはテオドールくんくらいしかいないからねぇ。」
「しょ、承知いたしました。」
随分と明け透けにものを言うご主人様に一言断ってから準備のために部屋を出る。
「はぁ。随分と面倒くさそうな職務を押し付けられたなぁ。」
思わずため息が漏れる。
「子供ってうるさいし我儘だし、あんま好きじゃないんだよなぁ。」
思わず自分の四人いる兄たちの子供を思い浮かべる。どの子供も一様に俺の都合などお構い無しに構え構えと宣ってくる。
「君がミシェリアちゃん?俺はテオ、よろしくね。」
数日後、ご主人様からの司令通り俺は平民街に赴きアール伯爵家の庶子であるミシェリア嬢と対面した。
キャロットオレンジのさらさらの髪にパッチリとしたピンクの瞳が可愛らしい。ミシェリア嬢は子供ながらにとても綺麗な顔立ちをしていた。きっと甘やかされて育った我儘な子供なんだろうと決めつけていた。
しかしミシェリア嬢はポカンとした表情でこちらを見てくる。
「ミシェリアちゃん?ボーッとしてるけど大丈夫?」
思わず伺うように聞いてしまう。
「ふえ!あ、あの!だい、大丈夫です!!」
ものすごい勢いで否定されてしまったが全く大丈夫に見えない。顔をほんのりとピンクに染めて照れているようだ。甥や姪とは違ってミシェリア嬢は随分と控えめな性格らしく視線をキョロキョロとさ迷わせ、たまにちらっと俺を見る。
「どうした?」
そう聞いてやるとますます顔を色づかせ、決心ししたように口を開いた。
「テオさま!ミシェリアとけっこんしてください!」
今度は俺がポカンとする番だった。いっぽうミシェリア嬢は自分で言って自分でびっくりしたようにワタワタしている。その姿が可愛くて笑いがこみ上げてくる。
「ありがとう、ミシェリアちゃん。でもそういう言葉は将来君が本当に好きな人に言わなきゃだめだよ?じゃないと何をされるかわかったものじゃないからね。」
慌てるミシェリア嬢が可愛くてついついいたずらごころが芽生えてしまい、
ちゅっ
「今回は、これだけもらっておくね。」
そう言ってかわいいほっぺにキスをした。
今度こそ顔を真っ赤にしたミシェリア嬢はほっぺたを手で押さえて走り去って行った。
「やばいな、子供とか煩いだけだと思ってたけど…可愛い。」
自分でも思わず顔がニヤけるのがわかる。ほんの少しこれからの生活が楽しみになった。
次の日から俺はミシェリア嬢についてまわり護衛をしていたのだが、ミシェリア嬢がすごく可愛い。
我儘だと勝手に思っていたけど実際はすごく控えめだし、甘やかされることに慣れていないみたいだった。少し優しくしてあげるだけで顔を染めて遠慮がちに恥ずかしがる姿が可愛くてついつい構ってしまう。
……断じて幼児趣味ではない。単純に子供として可愛がってるだけだ、多分。
そんなふうにミシェリア嬢を構い倒す日々も気がつけば5年目。できればずっとこのままミシェリア嬢の従者にでもなれないものかと思っている今日この頃。
最近はミシェリア嬢も俺に慣れてきたのか以前ほどの反応は示さなくなったが、それでも不意に触れたら顔をさっと朱に染める反応が可愛い。
このところ護衛だと自分を偽ってミシェリア嬢の家を度々訪れてはまったりとすることが多くなった。
そんなある日、
「テオテオテオー!私ちょっとその辺ぶらっとしてくるから!!!」
「え?あ、ちょっとミシェリア!!?」
いつもの調子でミシェリア嬢の家でまったりしていると、当のミシェリア嬢が俺の横を走り抜けていく。
たまにこうやって俺を撒いて1人で遊びに行こうとするのだ。まあご主人様からの命令もあるしこっそりついて行くんだけどな。そういえば俺の事をテオって呼ぶミシェリア可愛くないか?本当に癒される。
まあそんなに遠くには行っていないだろうとゆっくりとミシェリアを追いかけた自分を殴ってやりたい。俺がミシェリアを見つけた時、彼女は明らかに下心がある気色の悪い笑顔を浮かべた男達に囲まれ、さらに腕まで掴まれていた。
は?なにミシェリアの腕つかんでんの?それは俺だけの特権だろうが??
自分の中で黒い感情が渦巻くのがわかる。その時、
「や、テオ、テオ!!助けてっ!!!!」
ミシェリアが俺の名前を呼んだ。この極限状態の中でほかの誰でもない俺に助けを求めたのだ。
そこからは早かった、とりあえずミシェリアから男達を引き剥がし完膚なきまでにぼこぼこにしてやる。
男達がなにか喋っているけど気にしない。ミシェリアを怖がらせたんだ、当然の報いだろ?
「て、テオ??」
「っ!ミシェリアっ!!!無事か!?怪我はないか!!?」
しばらくほんとに無我夢中で男達を痛めつけていたのだが、ミシェリア嬢に名前を呼ばれてふと我に返る。急いでミシェリア嬢の元に行き怪我の有無を確かめる。大丈夫そうだ。
でも心の方は大丈夫じゃなかったみたいでミシェリア嬢は目に涙をため俺に抱きついてきた。
「テオ、テオっ!!」
「怖かったな…助けるのが遅くなってごめんな……。」
ここまでミシェリア嬢が心を痛めることになるなんて、数十分前の俺を殴ってやりたい。
「……離れたくない。」
そんな可愛い事を言うミシェリア嬢がとても可愛らしくて、愛おしくて、
「、ああ。これからはずっと一緒にいるよ。」
もう俺は幼児趣味でもいいと思ったんだ。
はい、ここにロリコンが生まれましたー。
おかしいな、こんなはずじゃなかったんだけど……。
テオさんは一応ちゃんと見た目も中身もイケメン設定だったはずなんだけど……。
ちなみにテオとミシェリアの年の差はきっかり10歳差です。




