表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲームの攻略キャラだけど許嫁を愛でたい。  作者: 籠の中のうさぎ
乙女ゲームの攻略キャラに転生しました。
29/99

プロポーズしました。

「アイリーン。貴女に話がある。」

「……覚悟、しておりますわ。」


痛いくらいの静けさの中俺はそっとアイリーンに歩み寄り、跪く。

え、っとアイリーンが困惑したような顔をする。


「私、ジルベスター・マーキスは騎士の誇りにかけて、我が生涯をアイリーン・フュルストに捧げることを誓う。」

あの日と同じセリフで誓を述べ、俄にざわつき始める大衆を尻目にアイリーンの足に忠誠の口付けを落とす。

「な、んで。なんでまた、私なんかに誓ってくださいますの……。」

泣きそうな顔で彼女が聞いてくる。

「貴女を愛しているから。」

そう笑った俺についにアイリーンは耐えきれず涙を流す。


「よしっ!今この場で騎士の誓がなされたっ!リーンハルト・フォン・ストウハーフェンとこの場にいる諸君らすべてが証人だっ!」

リーンハルトの凛とした声が会場に響き渡る。それを皮切りに大衆から大きな歓声が上がる。


「よし、テオっ!今度は私たちの出番だよっ!!」

「はい、お嬢っ!」

困惑と嬉しさとがまぜこぜになったような表情でボロボロ涙を流すアイリーンにミシェリアとテオドールが近づいてドレスに細工をする。切り返しになっているウエストの部分に着脱式のスカートを取り付ける。薄いレースでできたスカートは、後ろ部分だけ床に引きずるほど長くなっている。後頭部を覆うように付いていた花冠のベールも追加し顔全体を覆うようにしてしまう。

純白のドレスは前世のウェディングドレスを彷彿とさせる。手に小さなブーケを持たせると立派な花嫁姿になった。

「なん、なんで、」

顔を真っ赤に染めて涙を流すアイリーンはとても可愛い。顔に不安の色はなく、ただただ予想外の事態になされるがままになっている。

アイリーンの準備が終わるとマティアスがスっと手をあげる。

歓声をあげる観衆が口を閉じ再び静かになる。



はじめに気づいたのは俺じゃなくミシェリアだった。

アイリーンに拒否さたあの後、恥ずかしながらしばらくの間動けず結局夜になっても帰ってこない俺を心配したおかんに発見、回収された。

うなだれる俺を心配してくれる生徒会メンバーに呆然とアイリーンにふられた事を話した。

ミシェリア以外は俺がアイリーンを本気で愛していると思っていなかったらしくすごく驚かれた。解せぬ。

ミシェリアは少し考える素振りを見せ、

「ねえ、もしかしたらなんだけど、アイリーンって記憶があるんじゃない?そうじゃなかったら、ピンポイントでイベントを見てそこまで不安にならないでしょ。」

そこからの行動は早かった。テオドールとリーンハルトはまず自分たちの思い込みでアイリーンに勘違いをさせてしまったことを詫び、ミシェリアとマティアスとギデオンはすぐにどうやって寄りを戻すかの案を立て始めた。

そうして全校生徒を巻き込んでの一大プロポーズ大作戦が出来上がった。

ミシェリアの意見を元に前世での結婚式に見立てたプロポーズが決まった。



「アイリーン。私、ジルベスター・マーキスは健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、貴女を愛し、敬い、慰め、助け、この命ある限り真心を尽くすことを誓います。だから……。」

柄にもなく声が震える。アイリーンの顔はベール隠れてよく見えないけど、ちゃんと俺の気持ちが伝わるようにしっかり目を見つめ、

「だから。アイリーン嬢、僕と結婚してください。」

十二年前、初めて貴女にあった時と同じ言葉でもう1度プロポーズする。

「はいっ。こち、こちらこそ、よろしくお願いいたしますっ。ジルベスターさまっ!!」

「それでは誓のキスを、お願いします。」

マティアスが神父の真似事をする。

そっとアイリーンの顔を隠すベールをとる。

十二年前よりずっともっと大人になったアイリーンが笑っている。

涙でぐちゃぐちゃになった顔だけど、今まで見てきたどの表情よりも1番綺麗で可愛かった。

「愛してるよ、誰よりも。」

「私も愛しています。誰よりも。」

そうしてそっと誓のキスを交わす。

名残惜しさを感じながら唇を離して顔を見合わせて笑い合う。

ああやっぱり、アイリーンは俺の女神だ。笑い合うだけでこんなにも幸せをくれるんだ。

これ以上可愛いアイリーンの姿を見せたくなくて邪魔なブーケをミシェリアの方にほり投げる。

「ミシェリア!今度はあんたの番だぞっ!!」

そう言ってアイリーンを横抱きにして会場をかけ抜ける。


会場を抜け出して月明かりの下アイリーンをお姫様抱っこしたまま歩く。パーティーは終わるどころか始まってすらいないので時間はたっぷりある。

「アイリーンが足りない。補充させて。」

「私も、ジル様が足りませんの。いっぱい、愛して、貴方の色に染めてくださいませ。」

そう言って俺たちはどちらからともなく唇を寄せ合い、啄むようなキスをする。

「だめだ……ぜんぜん足りる気がしない。」

「時間はたっぷりありますわ。もっと、貴方をくださいませ。」

ああ、頬が緩む。

「貴女にはきっと一生適わない。」

あと、あともう1話(´・ω・`)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ