誤解されました。
俺はすぐに駆け出してアイリーンを探した。やっぱり体力がないのかすぐに見つかったので捕まえて、邪魔が入らないように近くの使われていない教室に転移した。
感動のあまりぎゅっとアイリーンを抱きしめる。嬉しすぎて身体が若干震えてる気がする。ああ可愛い。
先程嫉妬を聞いたせいで余計可愛く思える。
だが、普段手をあげることなんて滅多にない彼女がなぜ嫉妬で(ここ重要)手を出したのか心配になってきた。何か、何かが噛み合っていないような違和感に襲われる。今年に入って急にアイリーンの態度がおかしくなったことと、今回のことは何か関係があったりするのか……?一気に不安が押し寄せてきて、もしこの感覚が間違い出ないならば今アイリーンはこの言い知れぬ恐怖と1人で戦っていることになる。
「アイリーン……、何があったんだ?」
抱きしめたまま問いかけるがアイリーンは何も答えない。
「……なぜ、あんなことをしたのか聞いてもいいか?」
一瞬身体をこわばらせる。
やっぱり何かあるのか。
「アイリーン、教えてくれ。なんで、何があなたにあんな事をさせたんだ。」
そこでアイリーンの手がぎゅっと自分のドレスのスカートを握っているのが見える。
いつも俺が抱きしめた時は控えめながら俺の身体に腕を回したり、そうでなくても俺の服を握っていた。今回のように自分の服を握りしめることは過去1度もない。
「……アイリーン?」
そっと身体を離してアイリーンを見ると、悲しそうな表情でなにかに耐えていた。
「……先程、ミシェリア様の従者の方やリーンハルト王子とお話なさっていたのを聞きましたわ。」
嫌な予感がする。先程の会話というのは三角関係イベントのことだろう。
「ジル様が、ミシェリア様のこと少なからず思っているだなんて気が付きませんでしたわ。」
「違う、違うっ!誤解だアイリーンっ!!」
確かに聞きようによれば俺がミシェリアを好きだが婚約者のせいで思いを隠していると取れなくもない。
「ごめんなさい。貴方が私の婚約者であるうちに、貴方は私の騎士なのよって言ってみたかったんです。」
「アイリーン、聞いてくれ、誤解だ。俺はアイリーンのことが好きなんだっ!」
「私は大丈夫ですわ。貴方にたくさん思い出も、感情もいただきましたもの。……騎士の誓は、お返しいたしますわ。」
そう言ってアイリーンが俺からそっと離れる。
嫌だ。嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっ!!!!
「アイリーンっ!!!」
手を伸ばそうとするとアイリーンが1歩離れた。もう手が届かない。
アイリーンの目に明確な拒絶を感じ、まるでその場に縫い付けられたように足が動かなくなる。
このままじゃアイリーンが離れていくのに、まるで鉛のように身体が動かない。
教室の扉を開けアイリーンが出ていってしまう。
「アイリーン……っ!!」
最後に、懇願するように彼女の名前を呼ぶ。
するとアイリーンが足を止め少し躊躇いを見せた後、意を決したようにこちらを向き美しい笑顔を見せる。
「もし、もしね。貴方の卒業パーティーが終わったあとも私を愛していると言ってくださるなら。その時はまた私に誓いをくださいませ。」
そう言って今度こそ出ていってしまう。
貴女が望むなら誓いどころか俺の命だって惜しくない。貴女を愛しているのに、今すぐにでも抱きしめて己の欲望を全部全部ぶつけてどれほど俺が思っているかを教えてやりたい。きっと貴女はびっくりして怯えて逃げてしまうだろうけど、閉じ込めて逃げられないようにして、ドロドロになるまで愛してあげたい。
こんな汚い感情を抱く俺はそれでもやっぱり貴女に恋してるみたいだ。そんな格好悪い姿を見せたくないんです。
なぜパーティーの後なのか理由はわからないけど、貴女がそれを望むなら、何度でも初めて出会ったあの時みたいに貴女に愛を乞うよ。
あともう少しで完結です。




