絡まれました。
ヒロインがやらかして生徒会に入ってから早数ヶ月。
俺は何故かミシェリアの従者に絡まれている。
「マーキス様。はっきりして頂いてよろしいですか。」
「……なんの話だ。」
いや、ほんとに何の話なんだ。講義が終わったと同時に呼び出されて、どうなさるおつもりですかって聞かれても。まじで何の話だよ!
目的語はなんなんだよ!
「……しらを切るおつもりですか。」
「しらも何も、何のことかわからないな。」
本気でわからん。何の話が聞きたいんだ……。
「……あんたにはフュルスト侯爵令嬢がいるだろ。お嬢を、ミシェリアをどうするつもりなんだ。」
・・・・は?
「どうするも何もなぜミシェリアとアイリーンが出てくる。」
「しらばっくれるな!!侯爵令嬢がいるのにお嬢に気をかけているのは知っている!」
なるほど、わからん。
つまりはあれか?ミシェリアと共謀してゲームを進めてるのが男女の仲に見えるって事か?ありえん。俺がアイリーン以外を好きになるわけないだろう。
「お嬢を幸せにする気がないなら、これ以上あいつを惑わせるな。」
従者がそう言って離れて行ったところでふと思い出す。
あれ?これ嫉妬イベントじゃね?
好感度第1位のキャラが第2位のキャラに釘を指刺しに来る。そしてそれをヒロインは物陰から目撃してしまい、私はみんなと仲良くしたいだけなのにっ、と心が揺れ動くイベントだ。つまり現在好感度1位はあの従者か。
「ジル?」
テオドールルートならまあ悲惨な結果にもならないし放置で大丈夫だなと考えているとキラキラがやってきた。
「リーンハルトか。どうした。」
「いや、ちょうど君を探していたんだ。……その、ジルは、どう思っているんだい?」
だから何の話だっ!!
「……すまないリーンハルト、なんの話だ。」
「とぼけないでくれ、ミシェリア嬢のことだ。君も少なからずあの子の事を思っているんだろう?」
お前もかっ!!なんなんだよ従者といいお前といい!!
俺はアイリーン一筋だ!!
「……俺には婚約者がいる。」
だからそんな事聞くなよ。
「アイリーン嬢か……。いや、俺はジルがどのような選択をしても友人であり続けるつもりだよ……。」
なぜか寂しげな表情で意味深な言葉を残し立ち去るキラキラ。
あれ?これライバルイベントじゃね?
ゲームの中で希に発生する三角関係イベント。嫉妬イベントが起きた状態で好感度3位の好感度が一定数以上の場合に発生する。
だからなんでキラキラの好感度が上がってるんだ!!!
ミシェリアは最初の講義選択で俺の占星学とマティアスの魔法理論学をとっていたはずだ。従者はどのルートでも入ることができるからわかるが、なぜキラキラの好感度がそんなに高いんだ!!!
もう一度いうぞ、俺はアイリーンが好きだ。彼女以外考えられない。なんて言ったって俺の女神だからな。
ミシェリアに恋する余地なんてこれっぽちもない。
だから、頼むから、俺に嫉妬も敵視もするんじゃない!!
「……とりあえずミシェリアを探すか。」
どうするか対策をたてなければ。
怒涛の展開に気を取られていた俺はヒロインが隠れているはずの物陰から薄桃色の髪が逃げていくのに気がつけなかった。
「アイリーンに会いたい……。」
とりあえず俺を癒してくれ!!




