パーティーに出ました。
なんかひたすら服装の話しかしてない。
学年末テストも終わり、今日は1年を締めくくるプロムナードの日だ。最高学年を見送るための比較的カジュアルな舞踏会なのだが、さすがは貴族。全員ばっちりめかし込んで結婚相手を探しに来ているようだ。
この日の俺は多分人生で1番浮かれていた。なぜなら幼い頃からの夢であるアイリーンを着飾る事ができるからだ。
幼い時は純粋に俺がアイリーンに一番似合うドレスを着せてやりたいと思っていたのだが、今は違う。
前世の記憶を持つ俺からするとこの世界の正装は控えめに言ってクソダサい。
まず女性のドレスだがお前らはどこのエリザベス女王だと言いたくなるほど過剰なまでにつけられたフリルやリボン。その配置に規則性はなく、できるだけ多く置いた方がいいと言わんばかりの飾りだ。
さらにパニエも大きすぎる。成人男性が二人並んでもまだパニエの方がでかいとか一体なんなんだ。何になりたいんだ。
まだあるぞ、肩パッドもすごい。隣に並び立とうものならしょっちゅう肩パッドで攻撃される。
男の服装もなかなかだ。大きく膨らんだパフスリーブに太ももあたりまでしかない膨らんだ半ズボン。まるでかぼちゃパンツじゃないか。それに白タイツ。
ただの半ズボンなら……まだ許せるんだ。ただしコッドピース、お前はダメだ。受け付けない。
原作の時のスチルだともっと近代的だっただろ!男は騎士服みたいな正装だったし、女性はそんな砂時計じゃなくてS字シルエットのドレスだっただろ!
というわけで今日から俺が、俺とアイリーンがファッションマスターだ。せめて学園内の流行だけでも変えたい。
というわけで今日のアイリーンは俺のデザインしたドレスを着ている。V字に開いた胸元から見える美しい刺繍の施された胸当て。肩パッドはなくスラッとしたアイリーンの腕に沿った袖で、袖口のみふんだんにレースをあしらった。
空いた首元には中心に紅玉をあしらい、それを葉や蔦の金細工で囲む。前の飾り部分とは対象的に首後ろにまわす部分のチェーンは細くしてある。
ウエストで切り返しのあるスカート部分は軽く薄い布を重ねボリュームを出し、一番上のスカートの前にスリットを入れることで、中に着たドレスが見えるようになっている。
髪は俺が空間魔法と維持魔法を駆使して作った温室で育てた色とりどりの花を編み込んである。
文句無しに可愛い。
俺はまあベルばらのアンドレイみたいな服装だ。コッドピースがなければそれでいいっ!!
「あの、ジル様は今までにもこのようにドレスをデザインしたことがあるのでしょうか……。」
少し怪訝な顔をするアイリーンの空いた胸元にツッと指をすべらせる。
「貴女にだけだ。」
そう言うとほっと安堵した表情で可愛らしく笑うから、今日は貴女が他の男と踊るのを許せそうにありません。
その後アイリーンの足腰が立たなくなるまでホールで踊り続けた。俺を支えにしながら怒る彼女は世界で一番綺麗だと思う。
この日を境に肥大化し続けていた女性のドレスはしぼみ、男のコッドピース文化も廃れ始めた。
色んな時代のドレスの特色が混ざっていますが、そういう世界観なのだと軽くスルーしてください。




