お出かけしました。
あの食事会から数日。相変わらずアイリーンと行動しようとしたのだが、アイリーンに友人も大切になさいませと怒られた。
アイリーンと一緒にいれないのは寂しいが、めっ!なんて古典的な怒り方をする彼女が可愛かったので今日も俺は元気です。
結局平日はリーンハルトとマティアスと過ごし、週末の休息日だけアイリーンと過ごすことにしました。
そしたらキラキラとおかん、特におかんがすごく喜んでいた。やめろ、男色エンドはお断りだ。
まあ休み時間の度にアイリーンに会いに行く俺を純粋に心配していたのだろう、少しだけ申し訳なく思った。
それは置いといて、今日は待ちに待った休息日だ。事前に俺とアイリーンの外出届けは出してある。この世界に転生してから初めてデートらしいデートをしてみたいと思う。
貴族らしく遠乗りか城下町ぶらり旅か悩んだが、アイリーンに聞いて決めよう。
「アイリーン。城下町の散策か遠乗りどちらがいい?」
「城下町をジル様と歩いてみたいですわ。」
最近アイリーンは俺の目を見て答えてくれるようになったのだが、潤んだ瞳が身長差のせいで上目遣いのように見えるのでかなり可愛い。
「ならすぐに行こう。早く行けば長く2人で過ごせる。」
「はいっ!」
お忍び風の格好のためアイリーンはいつもより少し動きやすそうなワンピースを着ている。ドレスを着ている時よりも快活な雰囲気を醸し出している。
街についた後もあれこれ質問してははしゃぐアイリーンは少し幼く見えて、でもふとした瞬間に見せるこちらを伺う表情が大人っぽくて、そんな彼女のギャップに思わずドキッとしてしまう。
「アイリーン。そろそろ昼を食べないか?」
「私こちらの店に入ってみたいですわ!」
それは前世でいう定食屋のような店だった。
「ここのおすすめの料理を1つ。」
「私も同じものをお願いします。」
昼を少し過ぎた時間だったので比較的早く席につけたのは幸いだ。
「あいよ!にしてもえらくべっぴんさんなカップルだねぇ!!新婚さんかい?」
「え!?あ、いや、そんな新婚じゃありませんわ!!」
随分溌剌とした女将さんだ。でもアイリーン、そこまで否定されると少し寂しいな。
「そうだな。"まだ"新婚じゃない。だがいつかそうなればいいとは思っている。」
「あ、わ、わたくしも……ですわ……。」
彼女は真っ赤な顔を冷やそうと手を頬に当てたまま俯いてしまった。
「あっはっはっは!!!そうかい、そうかい!そしたらその"いつか"が来たらまたぜひうちに寄っておくれよ!サービスするからね!」
女将さんが立ち去ったあと、ふっとアイリーンを見てみると、まだ赤い顔を今までないくらい幸せそうに緩めてニヤニヤしていた。
俺はアイリーンが気づくまでそんな彼女を眺めてニヤついていた。
しばらくしてそれに気づいたアイリーンが俺をポカポカ殴ってきたのは可愛いだけだからやめた方がいいと思う。逆効果だぞ。




