紹介しました。
「はじめまして、ジル様の婚約者のアイリーン・フュルストと申します。」
「リーンハルト・フォン・ストウハーフェンだよ。よろしくね。」
「マティアス・デュークです。よろしくお願いします。」
今日はアイリーンをリーンハルトとマティアスに紹介するために一緒に昼を食べることになった。2人っきりが良かったのなんて思ってないぞ?嘘だ、2人が良かった。
「すみません、2年に上がってから急にジルベスターの付き合いが悪くなったものでその原因の貴女に会ってみたかったんです。」
おいこらマティアス、アイリーンを威嚇するな。お前は息子の彼女を敵視するおかんか。
「いやまさかジルの婚約者が君みたいな可愛らしい方だとは思わなかったよ。」
キラキラお前は他人の婚約者を口説くな。
「いえ、私もジル様のご学友にお会いしたかったので嬉しいですわ。」
おかんの不躾な物言いにも表情崩さないアイリーンはやっぱり女神だと思う。
「さて、今回は他の誰でもない私の親友のジルの婚約者と一緒の食事だからね。私が昼食の席を用意させてもらったよ。」
リーンハルトが用意したということは恐らく学園のシェフの料理ではなく王宮のシェフを呼び寄せて作らせたのだろう。贅沢だな。
「まあ!リーンハルト王子にご用意していただくなんて、私とっても偉くなった気分ですわ。」
それをきっかけにリーンハルトが移動しようとほんの少し重心を動かしたのを見て俺はアイリーンに手を差し出す。
彼女も何も言わず手を取り俺にリードを任せる。
こういう些細な行動を言葉もなく理解してくれるのはアイリーンだけだろう。それだけ長く彼女と関わってきたのだと思うと嬉しくなる。
あのキラキラはこの食事のために学園の庭園一帯を貸切にしたようだ。
アイリーンが入学してから暫くはマティアスが言ったように俺は常にアイリーンと2人で行動していた。なので今は初夏に差し掛かっているのだが、庭園には美しい花々が咲き誇っている。
「とっても綺麗ですわ。」
うっとりとした声を漏らすアイリーンの目線の先には瑞々しく咲き誇る赤いバラがある。俺は少し考えた後アイリーンのそばを離れ、そっと景観を崩さぬようにそれを1輪手折りアイリーンの髪に挿してやる。
「綺麗だ。」
頬を桃色に染める彼女をを今度こそ席にエスコートする。
アイリーンはリーンハルトやマティアスと会話を楽しみながら食事をしている。こっちを向いて欲しくてテーブルの下で彼女の手を握った俺は子供っぽいと思うが、照れながらも2人にバレないか少し焦る彼女が可愛かったので後悔はしていない。
この小説一人称視点で話を進めているので気づきにくいんですが、ジル様主人公なのにほとんど喋ってない。
ちなみにジル様の表情筋はアイリーンの前でしか動かないので基本無表情です。




