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ドラゴニック・マナ  作者: ボケ封じ
第一章
8/65

異形

思いの外休みを満喫し過ぎて筆を取り忘れてました…


8話目です、宜しくお願い致します。

 あれ程の魔獣群を全て倒しきるとは予想外ではあった。

 今蹂躙したこの人間共に魔獣を殲滅しうる実力はなかった。

 ならばこちらに向かってきているあの人間か、向こうで気力の果てた魔法を使う人間かで殲滅したのであろう。魔法の使えない人間など蹂躙するのは容易い。我が肉体に傷一つつけさせずに殲滅してくれる。

 この人間はどうだろうか?

 人間のくせに我に向かってくる。

 人間ごときが……。

 わからせてやろう。

 この世に魔神に勝るものの無いことを。

 こいつを手始めに…そして、人の世を蹂躙し、我を使役するあの人間も喰ろうてくれる……。



 村の整地された中央通りを進む。

 焼け爛れた昆虫型の魔獣の死骸が目立つ、獣型よりも先行していたのだろう。罠にかかり、後続に踏み潰され形容しがたい臭いを放っている。

 足の踏み場もほぼほぼなく、それでも肉を踏み潰す音を最小限に、部下の姿を探すが見当たらない。

 北と南を一直線に結ぶ通りに姿が確認できず、通りの中央を東に折れる。

 その先に小さいながらも村の全員が入れる集会所があるのだ。


 その集会所への道に入った時、フォルディスは直ぐ様、右手で遊ばせながら持っていたブロードソードを前に突きだして身構えた。

 視線の先、集会所の前には、座っているにも関わらず成人男性くらいは有りそうな、全身に褐色の体毛を生やした人型の魔獣がこちらに背を向けていた。立ち上がれば成人の二人分にはなるだろうか。


 距離は凡そ100歩、それでも構えずには居られない禍々しさをフォルディスは感じ取っていた。


 過去のどんな難敵、魔獣や人殺しとの戦闘よりも、この距離でただ背中を向け座り込んでいるだけの魔獣が放つ、ギラギラとした殺気が上回っている。


 (なんだアイツは?オーラは?ジェイクは?クルーソーは?)


 これまで感じたことのない殺気に動揺を迫られ、先駆けの部下を探すが、集会所迄の道程上にいるのは魔獣一匹のみ、その事実にまたも動揺を積もらせるフォルディス。


 ジリジリと50歩の距離まで来たところで、フォルディスはようやく部下達を見つけることが出来た。いや、見つけてはいた、この距離まで来て確信できたのだ。

 褐色の魔獣の前にひしゃげ、千切れ、血糊で光沢の無くなった鎧の残骸が散らばっている。

 そして、魔獣の肩と頭の動きが物語っている。


 あぁ、何て事だ…奴は喰ってやがる……。


 陽の光を受けて所々がキラキラと輝いて見える体毛が無ければ、まるで人が人を食べているようにも見えるその光景に、フォルディスは嫌悪感と少しの嗚咽を漏らしてしまった。


 ここまで、鎧を着ているにも関わらず音を立てず、気配を抑えていたが、理性ではわかっていても、本能がこの光景を受け付けなかった。


 

 我が前に向かってくるのか?人間ごときが?

 矮小なる虫けらごときが、王たる力を持つ魔神である我の前に?

 魔神ネクタールは我慢出来なかった。


 始め、魔獣を幽処から引き連れ、異界より召喚し、憎々しい人間に受けた指令により、龍神の依代となるべき人間を連れさるために、小物共ではあるが、これだけの数を揃えれば、とけしかけたが、それを阻まれた。だけではなく、しょうがなく嫌々自身で人間ごときを捕まえに出てきて見れば、多少の恐れは抱いていたのであろうが、平伏すでも、その場から逃げ出すでもなく、奇怪な音を出して仲間を呼び、虫けらが使うに相応しいが、魔神である我に向けるには分不相応な下等な魔法もどきを放ち、さらには棒切れに等しいもので爪を立ててくる。


 憤怒を溢れさせ、ネクタールは、右手を裏拳のように棒切れを使う人間の頭を薙ぎ、そのまま魔力を凝縮した風の刃で、後方の魔法もどきを使う人間の胴を、引きちぎり臓物を撒き散らした。

 返す手でそのまま左側の棒切れ使いの頭を掴み取り、被り物ごと握り潰した。


 全てが瞬きの間に繰り広げられたが、ネクタールは死体を集め、目の前に無造作に積むと、着ていた鎧ごと胸を掻き開き、心臓を取り出し食べ始めた。

 矮小で虫けら程の興味しか湧かない人間への関心は、その心臓が美味い事だ。

 新鮮な香り立つ血を蓄えた、弾力ある肉の歯応えを噛み締めながら、もぎたての果実をかじるように喰らっていた。


 そんな時に、新たなこちらへ向かってくる気配を読み、回復しかけた機嫌がまた傾きつつあった。果実を食べる手は止めないが。


 嗚咽を手で口を塞ぐことで抑え、しばしその場で観察する。

 部下を喰うのに夢中なのか、こちらの様子に気付いた素振りすら見せない。図体と合わせて鈍感な魔獣のようだとフォルディスは思った。

 オーガかミノタウロスの亜種だろうかと分析し、50歩の距離は保ったまま横に滑り込むように動き、家屋の陰に入った。

 魔獣は部下の死体を横に放り投げ、何をするのかと様子を見続けていると、鎧の破砕音と混じり骨の砕ける音を魔獣の肩越しに聞いた。


 (内臓を喰っているのか?なんと下劣で浅ましいヤツだ)


 フォルディスはその光景を想像し、今度は嫌悪を沸々と怒りに変えていた。

 だがしかし、切って掛かるにも魔獣の放つ殺気に異常性を感じ、1歩を出せない。5千のスタンピードを前に堂々と指揮を執った男を、その殺気だけで抑えるあの魔獣は何なのだ?

 嫌悪、憎悪、憤怒、異常…様々な感情の中で悩むが答えは出ない。


 しばらく考え、今から仲間の元に戻り、全力で共和国へ向かうか、引き返し討伐するか……。

 鈍重そうとはいえ、これ程の殺気を放つ魔獣から逃げ切れるか? はても、疲弊した仲間を連れて討伐出来るか?

 二つに絞り考えを巡らせ、そっと身体を反転した。


 (ここは逃げだな) 


 決断したならば、あとは一目散だ。フォルディスは中央通りに出て、気配を抑えたまま急ぎ仲間の元へと向かおうとしたが、断念せざるを得なかった。


 目の前に身の丈3m、全身を褐色の体毛に覆われた、体つきは人型だが腕回りはフォルディスの胴廻りくらいは有りそうな腕を拡げ立ち、顔の上半分には四つの丸い目が放射状に配置され、犬のような鼻面に耳迄裂けた口には何列にも並んだ刺のような歯を生やし、どこに仕舞っているのかわからないくらいの細長い舌をチロチロと遊ばせながら、涎と先程迄食べていたであろう部下達の血をまだ滴らせ、フォルディスを見下ろし立ち塞がっていた。


 部下達への行為に対する怒りや嫌悪よりも、その身から迸らせている殺気よりも、フォルディスはまず驚いた。


 (バカな! 気付いていたのか? いや、それよりもあの距離をどうやって?)


 その驚愕の表情を浮かべたフォルディスを見て、裂けた口を更に歪み吊り上げ、四つの目を若干細めた。笑っているとフォルディスは思った。

 その通りネクタールは笑っていた。


 さっきの人間共は、我に向かってくる愚かな行為に怒りを覚え、あっさりと殺し過ぎて、心臓を食べる以外の楽しみを味わうのを忘れてしまっていた。


 すなわち、恐怖に歪む顔を見ること、絶望の吐息を吐かせること、希望の瞳を失意に染めること、己の無力でその身体をうち震わせることを。

 ネクタールはフォルディスを見下ろしながら思った。

 愚かにも愚かを重ね、虫けらに等しいその身一つで我の前に立ったことを、弄び、いたぶり、苦痛と恐怖で後悔させてやろう、と。

 指令の出ていた人間は今は弱った人間共と一緒にいるようだ。時間はまだまだある。嫌々来させられたのだ、同じ人間への鬱憤は、同じ人間で晴らさせて貰おう、と。


魔神さん現る。魔神ってワードが堪らなく好き!

圧倒的にしてやりたい…


ユニークが100を越えました。ありがとうございます。

ポイントがよくわからんけど、読んでくれてる方がいると嬉しいものです(*´∇`*)

ご意見ご感想も勉強のため欲しいですが、ガラスハートなんでほどほどにお願いします(;・∀・)

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