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ドラゴニック・マナ  作者: ボケ封じ
第一章
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軍神

年末なので頑張りましたが、短いです。。

楽しんで頂ければ、最上です。

 軍事国家と呼ばれる国がある。トラキア大陸東部に位置するこの国は、各国への傭兵団の派遣や兵術、兵器を売ることを中心産業としている。

 争い合う国の片側に傭兵を派遣し、劣勢となった国には更なる兵と兵術を、更に兵器を、更に混沌を。

 ファティマ出身の傭兵団がかち合うことも厭わない。むしろそれを迎合し、兵達は傭兵故の激戦区で更に技量を伸ばす。

 出身が同じであっても馴れ合うこともなく、ただ純粋に敵として戦い果てるのだ。

 

 ファティマ国内では数年に一度闘技会が国を挙げて開かれる。この闘技会の覇者はファティマ国王との対戦が認められ、これに勝てば国王の座を受け継ぐ事ができる。

 傭兵として各国へと赴き、過酷な戦争を生き抜く。そこには、単純な闘争のための技能と、生き抜くための技能が求められる。それを体現した強者が闘技会へと出場し、その猛者達を屈した者が国王と合間見える。

 しかし、そんな猛者達の頂点である闘技会優勝者をして、この二十年の間国王は一度も替わってはいない。 

 ここ数十年は北西に広がる大草原の先に位置する帝国との戦争も小康状態であるとはいえ、未だ戦争は続いている。ファティマ国王の姿など見たこともない他国の民達はそれを鑑みてヤラセ(・・・)が行われている。と考えたりする者もいるが、実際に国王に会った者や、剣を交える機会を持った者ならばそのような考えには至るまい。軍事国家ファティマ国王はその名に恥じず、正に軍神として頂点に立っているのだ。

 その軍神の下には常に闘技会上位を占める八人が控える。

 これを世間ではファティマの八騎士と呼んでいる。これら八名も現国王が即位してからは不動であり、その中には元国王も含まれている。

 強さのみが求められ、また、強さのみを求めるのが軍事国家ファティマである。

 しかし、そんな強者の集う国の中に、いや、国外にも数日前に激震が走る。

 八騎士と呼ばれる戦士を代々生み出してきた名家、ビンデンバーグ家が一夜のうちに討ち滅ぼされたからだ。

 当主サリュー・ビンデンバーグには五人の息子と二人の娘がいた。本妻とは死に別れており、いずれも妾の子達ではあるが、家の名に恥じず将来名を馳せるであろう子達だ。

 長男であるアリエルは齢二十二にして、次回闘技会では当主サリューに替わり出場すると目されるほどの剣の腕と、身体強化の強さを見せていた。

 現当主であり、八騎士の代わりを勤めるのだから、その実力は折り紙付きである。

 そんなビンデンバーグ家をある夜悲劇が襲う。

 一夜のうちに家中の者全員の命が奪われた。その死体の悉くは、まるで大型の獣にでも襲われたかのように、食い千切られており、事件発見当初は、ビンデンバーグ家の実力を鑑みて、協力な魔物か竜の仕業にしか見えない程の惨状であった。

 後に死体にわずかに残った剣筋や、歯形の跡から犯人が割り出された。

 割り出された犯人の名は、奇しくもビンデンバーグ家の二人の娘の内の一人で、サリューの本妻が亡くなったときに家出同然に家を飛び出していったフレイヤ・ビンデンバーグであると公表された。

 この公表前には、アルバ共和国首都ソルで謎の魔物が暴れ、騎士団に多数の被害が出たとの噂が立っていた。



 東に延びた岬の先を見据えて、動物の皮を鞣して作った皮のシャツに膝丈の布のズボンを履いた中肉中背の男が歩いている。背中の中程まで延びたくすんだ金髪を紐で一つにまとめており、歩を進める度に左右に揺れている。少し頬骨が張り、鼻も低め、先を見据える茶色の瞳の目は腫れぼったい瞼を乗せて傍目には眠そうにも見える。決してハンサムと言えるような顔立ちではないが、その所作には無駄がなく、体術の錬度の高さを窺わせる。

 目指す岬の先には、銀色に磨き抜かれた全身鎧が何かの石碑の前に鎮座しているようだ。


 程なく中肉中背の男が鎮座する全身鎧まであと数歩の所で、鎮座していた全身鎧が重苦しい金属音をあげて立ち上がった。厳めしい全身鎧だがその頭頂は男とさほどかわらず、鎧を着ている事を考慮しても線は細く見える。

 

 「……首尾は?」


 そして、全身鎧から発せられたその声は、その姿からは想像もつかない少女のような声であった。

 問われた男は答える前に片膝を着き、恭しく頭を下げてから答えた。


 「は、コーネリアで消息を絶った後はリストンにて捕捉、その後餌を補食しながら南西部の港町を転々としており、今朝がたにはパウエル候の漁村にて補食中との報告が入っております」


 リストンはここファティマとアルバ共和国とを海路で繋ぐ港町で、アルバ共和国側の港町コーネリアとは毎日のように交易船が行き来している。また、パウエル候といえばファティマ並びに諸外国にも名を轟かせている武家で、当主パウエル・ド・マルクスは先々代からファティマの八騎士にも名を連ねる名家である。八騎士の中では現在唯一の貴族で、その領地も内地にある首都ファティマに隣接した、南側の海までの地を与えられている。


 「当然マルクスには知らせているな? ならばもはや逃がさぬ……忌々しい吸血鬼(ヴァンパイア)め、その素っ首を塩漬けにし永遠の苦しみをくれてやる」

 「シーマ様ならば容易く成し遂げるでありましょう」


 マルタと呼ばれた全身鎧の少女声は、その可愛らしい声音には似合わぬ怨唆を込めた心情を吐き出した。


 「一位の貴様からの世辞など要らぬ……我が命ずる、八騎士筆頭ナーガよ、これより一軍を率いて魔人フレイヤ・ビンテンバーグの捕縛を為せ」


 崖の上、石碑から振り返ったシーマは兜の中からギラつく眼光をナーガに向けそう命じた。

 こうべを垂れていたナーガも、命令を受け、全身から発気し短く息を吐き出すようにその命令を受けた。


 「はっ、御身とこの拳にかけて必ずや」

 「あたま(・・・)があればよい。委細はカーライルと詰めろ、行け」

 

 シーマに促され、ナーガは返礼をしその場から弾けるように駆けていった。その速さは風を切るようであった。


 その後ろ姿を目で追った後シーマはもう一度石碑に顔を向ける。


 「貴様の無念は我が晴らしてやる。よもや……」


 海から一際強い風が吹き、兜の中でシーマは目を細め口を閉ざした。それが風によるものか、石碑の下に眠る誰かを思ってかは本人にしかわからない。


 「ふ…………まずは千回ぶち殺す」


 口端を吊り上げ、そうはっきりと石碑に宣言し、石碑へと向けていた目線を遠くに見えるファティマの城へと変えるとそのまま悠々と歩を進めていった。

月に一話はいれていきたいかなぁ。

書くのもなかなか体力使うねぇ。

あぁぁ、連休欲しい……。

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