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ドラゴニック・マナ  作者: ボケ封じ
第一章
53/65

洋上

久々のくせに短めです。


53話目、宜しくお願い致します。

 大海を突き進む船はゆったりとして、まるで別荘で過ごす夏休みだと思っていた自分を責めてやりたい。


 出港直前には色々あったが、いざ海へと帆を向けた「トライデント号」では、日中には遮るものの無い陽射しの中で、船員達が右往左往と駆け巡り、帆に風をはらませ、海中から来る魔獣を警戒したり、船室でも飯の為の食料の状態や、船内部の点検など忙しなく動いていた。


 美女のマスクに戦士を彷彿とする身体を持った、船長パラス率いる「トライデント号」では、風のあるうちは総員で船を走らせ、風が止んだときには魔法士がその魔術で船を走らせる、二段式になっている。


 常に船を進めることで、日数を短縮し、海の魔獣からの襲撃も減らすのだ。

 

 通常の航海では、陸地近くの航路を使うので多少無理をしても、途中途中の港町で休息を取るのだが、今回向かう先は絶海の孤島であり、一応海図には載っているが、訪れるものの少なさから周辺の情報はあまり無い。

 少ないながらも、未踏破の迷宮に挑んだ冒険者や島に住まう水竜を求めてくる冒険者を連れてきた船乗り達の情報を便りに進む。

 

 凡そ十日という、魔法士を連れない船からすれば考えられないスピードでの航海ならば、「トライデント号」は昼夜通してあまり休まずに押し進めていくだけの、経験と体力を兼ね備えている。


 直人は鍛練や島に着いてからの作戦会議で時間を使っていた。ティナやニース、アンナの魔法使いは魔法石への魔力蓄積に時間を費やし、直人とランスロットは乱取りや型取りで自己を高める。特にランスロットは片腕を失った事によるバランスの調整に努めているようだ。

 国に戻れば、神殿の司祭長に欠損した左手を治癒してもらえるらしいが、当然帰る気は無いようだ。

 アンナも一度治療の話をしてからはその事には触れないようにしているようだ。

 今現在国に戻れば腕を治すどころか命が危ういのだ。皆も解っているので話題には出さない。

 ただし、アンナは魔法石への魔力注入と平行して、熱心に魔力の練りかたをティナに教わっているようだ。自分が司祭級の魔力を扱えれるようになればランスロットの腕も治せると考えているのだろう。

 神殿の司祭ともなれば、ティナと同じ魔導士である。ほんの一握りの選ばれた人間であるかを判断するにはアンナはまだ若い。その可能性に掛けているのだろうが、才能が有ったとしても一朝一夕で為れるものでもないのは解っている筈である。

 自分が国を出なければ、と考えるアンナの気持ちも皆は解っている。そうせざるを得なかったとしても、だからと言ってアンナの気が収まる訳でもない。兎に角、好きにやらせるしか気を紛らわせることは今は出来ない。しかも今は洋上なのだ。船脚も速く、海の魔獣も襲っては来ないとあって手持ちぶさたにもなれば尚更である。


 そんな航海も天候と風に恵まれ六日目までを順調に消化した。


 髪飾りを触りながら気持ち悪いにやけ顔のニースを観察したり、只でさえ潮風で喉の調子が悪いのに、やけに塩気の強い船上料理に四苦八苦しながらその日の晩を迎える。


 「そろそろ荒れてきそうだ。揺れてきたらお前達は船室から出るなよ。邪魔になるからな」


 ちょうど晩御飯を食べ終わった時にパラスが各部屋にやって来て忠告してまわった。どうやら嵐とかち合ってしまうらしい。

 

 「荒れるって、どれぐらいの規模で?」


 ランスロットと同部屋の直人が味の薄いスープを皿ごと口に運んで飲み干してから聞き返した。


 「陸の人間からすれば天地が引っくり返るくらいには……な。だから船室からは出るんじゃないよ、何より、邪魔になる」


 船の勝手も何もわからない素人がそんな中を出ようとは思わない。直人とランスロットはパラスの忠告に即座にわかったと答え、お互いに少し血の気の引いた顔を見合った。


 「お嬢ちゃん達もそんな顔をしていたよ。ま、嵐が来ようが海は俺達の庭も同然だ、これまで通り俺達に任しときな」


 綺麗な顔からは想像の出来ない頼りがいのある言葉を残して、パラスは揺れだしている船の中を軽やかに去っていった。


 小さい頃に家族で遊園地に遊びに行った事がある。

 初めて訪れたその場所には、色とりどりな建物、乗り物があったが、中には何回転もするコースターや、フリーフォールと呼ばれるただ高いところから落ちるような乗り物から、定番のコーヒーカップ、メリーゴーラウンドや観覧車と様々だった。


 激しい挙動を見せる乗り物には身長制限がありまだ幼かった直人が乗れるのは地上で廻るコーヒーカップや、線路を只走る機関車のミニチュアなどだったが、それでも当時の直人にはどれもか目新しく、初めての体験で喜んでいた。


 そんな中兄の和馬が唯一怖がった乗り物があり、直人は兄より強いところを両親に見せたいとそれに乗りたがったが、ここも身長制限によりその勇気を示すことは出来なかった。


 その乗り物はまるでドリルのように渦を巻きながら走るのがウリのコースターだったなぁ、と、今直人は部屋の入り口の木の扉の上に立ちながら、自分の真上にある部屋の丸窓に打ち付ける雨とも波しぶきとも見分けのつかない滴を見て思い出していた。


 「そういえば、バイキングって言うただ横に振られるだけのでっかいブランコも楽しかったっけ」


 一人思い出に耽っている間にも船体は振られ、真っ直ぐに戻ったかと思えば、また大きく横を向いていく。

 ミシミシと船体のあちこちから嫌な音が聞こえる。

 

 直人はその中をトーン、トーンと軽くステップを踏むように身体を宙に浮かしながら船体が安定する時をまち、ほぼ真横を向いた時にまた扉の上に立ちバランスをとる。


 普通であれば縦横に揺れる事を想像していたが、どうやらこの船はサーフィンのように波に乗って高波をやり過ごしているようだ。

 魔法と操船の成せる業なのか、真横近くに船体は傾くが、縦揺れはさほど感じない。突発的に加速を体感する事からも直人は、自分の予想が外れていない事を感じていた。


 想像を越える操船技術に思いを馳せる一方では、備え付けられた二段ベッドに四肢を伸ばし必死に身体を支えるランスロットが視界に入る。

 左腕は欠損しているので正確には三肢だが。


 「嵐が過ぎるまでそうしてるんですか?」

 「これも……鍛練の……一つ……だと……思えば……」


 船が本格的に揺れ初めてから二~三時間は経っている。始めこそ、大したこともあるまいとベッドに横になっていただけのランスロットは、揺れの大きさに耐えきれず今や身体強化をしながら身体を支えている。

 本人の言う通り鍛練としてあと何時間かは凌げるのだろうが、この嵐をいつ抜けるのかは定かではないし、何より身体を固定してしまっていることで船酔いにかかる懸念もある。

 実際ランスロットの顔色はお世辞にも優れているとは言えない。彼は自分の体力が尽きた時どうなるのだろうか?

 

 女性陣は大丈夫だろうか?


 自分のように身軽でもなければ、ランスのように忍耐力もなく、魔法使いとはいっても長時間は使ってもいられないだろう、パラスには出歩くなと言われているが、船の揺れにも慣れてきた直人は、様子を見に行くことに決めた。


 「少し様子を見てきます。ニース達も心配ですし」


 直人はそう言うと、船が縦になるのを見計らって部屋を出た。後ろからは苦しそうに呻きとも返事ともとれるような声が返ってきただけだった。

  

2ヶ月ぶりくらい?


長期休暇のくせに短めしかも話も進まずすいません。

また暫くは書けそうにありませんが


楽しんで頂ければ、最上です。

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