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ドラゴニック・マナ  作者: ボケ封じ
第一章
41/65

復原

お久しぶりです。。


投稿するの忘れてました。。


41話目です。宜しくお願い致します。

 石壁に囲まれた小さな部屋。

 灯りは点けられてはいないのか一筋の光もなく、目を開けているのかさえ分からない暗闇が充満している。

 時折何かが擦れるようなゾゾッという音以外には、自分の心音と耳をつく静寂の耳鳴りだけがあった。

 

 何日が経ったのか?

 私は生きているのか?

 

 時折浮かび上がるそんな疑問も、何故か暗闇の中でハッキリと見える笑顔の二人の少年が掻き消してくれる。

 彼女にとっては、常に側にいて成長を見守るべき少年達。

 隔絶されたこの世界とは違い、柔らかな陽の光、夏に向かう暖かな風、自然の中にあっても整えられたアスファルトの道を行く車の音や、林から聴こえる自然の声。

 その全てが目の前で繰り広げられているようでもあり、儚い夢幻の彼方にも感じられる。

 

 四十を越えた年ではあっても、その外見は若く、溢れる活力はその姿を二十代に保っていた。

 しかし今はそんな面影はない。

 髪は乱れ、痩せこけた身体は皺が寄り、生気も虚ろな瞳は暗い夜を写したように黒く濁っていた。


 そうなっても、現か幻か、目の前に愛しい少年が写ると


 「……和馬……直人……えぇ……そうよ……今日は唐揚げよ……ふふふ……さあ、手を洗ってきなさい……ふふふふ…………」


 二人の少年に語りかけるが、少年達は笑顔のままそこに居続けた。

 だが、当然のようにあるべきはずの、笑顔の少年達を焦点の合わない暗い瞳で眺めながら、壊れたように小さく笑い続ける。

 終わることの無い理想の現実を瞳に写して。



 玉座に肘をつきながら項垂れる様に座り込んだ青年の前には、四人の膝まづく姿があった。

 一人は全身を黒いローブですっぽりと覆った老人。僅かに見える顔には深い皺が走って入るが眼光は鋭く、見た目程には老いてはいないように見える。

 隣に並ぶ男も全身を黒色に染めている。がこちらは、全身を金属鎧で覆っている。鎧の重厚さもさることながら、それらを内側から張ち切らんばかりの巨躯は、膝まついた姿であっても他を圧倒するようだ。

 その隣には、同じ鎧姿であっても見るからに軽量化されており、胴体の一部、手甲、足甲以外には金属の使われていない鎧を纏った背の高いひょろっとした男が跪く。余分な肉は纏わず、編み込まれた綱の様な筋肉に身を包む。

 最後の女は、華やかなドレスに身を包む。大きめな胸を半分ほど露出させ、それを強調するように胸元には幾つもの宝石を散りばめたネックレスと、キュッと腰は絞り、跪く周囲に遠慮もなく大きく裾を拡げている。他の三人とは違い、鮮烈に目に映える赤黒い色のドレスだ。


 凡そ玉座の間に相応しくない部屋の暗さと這うような雰囲気の中で、こちらも質素な何の飾りつけもない玉座とはいえ、人の上に立つべき威厳も尊厳も見せない座すだけのみすぼらしく伸ばした黒髪の男は、まるで眠っているようだ。

 その身に一切の衣類を纏わず、ふと見る薄汚れた裸身は、しかし鍛え込まれ引き締まり、無駄な贅肉をつけておらず張り積めた筋肉に浮き立つ血管が力強く脈打つように見える。

 その身体には四方の壁から無数の生物の管ような物が繋がっていた。

 時折僅かにびくりと蠢きながら青年を縛るように、また何かを与えるようにも見てとれた。


 四人は待っていた。

 地を統べ、天を駆ける、幽処、獄処を問わずにあまねく命と言う檻を開放せしむモノの目覚めを。


 「しかし、本当に成功したと言えるのかしら? 妾の目には只のみすぼらしい下男に写るがのう」


 皆が一様に押し黙りただその時を待っていた時に、唐突に赤黒いドレスの女が口を開いた。

 しかし誰もその問いには答えない。


 「ふん、良かろう。待てと言うならば待つとしよう。妾にとっては悠久の時の戯れでしかないしの。じゃが……」


 一度言葉を切り横目に黒いローブに身を包む老人に殺気を込めて続ける。


 「妾を跪かせる行為に値しない場合は、お主らの生はここで尽きると思うことじゃ」

 「待つがよい。貴様は確かに死の王、いや女王か、しかしここに在らせられるこのお方は、これより真の命の王となる。生も死もこの世の悉くはこの方の前に平伏すしか無くなるわ」


 女の挑発めいた物言いに黒いローブの老人は応えた。

 普段であればこんな不死者(アンデッド)ごときの戯れ言に付き合いはしないが、今はそんな老人も目の前に在るモノのお陰で高揚を隠し切れない。

 女は、ふん、と鼻を鳴らし老人から視線を反らす。

 挑発はするが、女にしてもこの場でこの三人を相手に無事ではすまない事は理解しているのだ。特に老人の古代語魔法は一つ間違えばこちらの存在自体を消されかねない。

 それが解るから女は今は大人しくこの場に留まる。


 (遂に来たぞこの時が! 過去幾星霜誰も為し得なかった、世界の理を儂は手にする)


 そんな女の心情を知ってか知らずか老人は皺深い顔に笑みを浮かべ更に皺を増やす。


 四人の真ん中に跪く二人は終始無言だが、体格のいい男からは時折小さく舌打ちが聴こえる。


 突然だった。青年の首元に繋がった管を残して、全身の管が剥がれ落ちた。傷跡も何も残さず綺麗に剥がれた管は、それぞれが暫く生物のように蠢き灰のように粉状に崩れていった。

 一つ残った最後の管が大きく蠢く。それに合わせて青年の身体もビクビクと小刻みに跳ねた。


 跪いていた四人はその気配に一様に顔を上げ様子を伺う。

 青年の身体がまた項垂れると、首元の管も先に剥がれた物と同様に、剥がれ粉状に崩れていった。


 青年が間をおかず俯いたまま目を開いた。

 何年も眠っていたかの様に久方ぶりに見る現実の光景は、焦点の合わない自分自身の太股だ。

 長く、とても永い時間夢を見ていた気がする。

 地球という星の日本。そのまたごく平凡な暮らし、だった気がする。あまり思い出せず頭を軽く振ると顔を上げ、正面を見据える。

 今だ整わない視界の中、更に暗さが追い討ちを掛けて見るものを阻害するが、こちらに畏まる数人が見える。

 

 何かを話そうとするが喉が閉じて上手く言葉を吐き出せない。

 あぁあぁと呻きをあげるのが精一杯だった。


 「これはこれは……確かに龍の瞳を持っておるが……妾には人間にしか見えないが……如何かな?」


 女か、いや違うな……。


 「早まるでない、目覚めたばかりなのだ。次第に世界と己を認識すれば自ずと力も開放しようぞ」


 この老人は知っている。


 「チッ……アホくさ……まだ力が使えないなら俺は行くぜ? 身体慣らしにもなりゃしねぇ」


 粗野な男だ、だが言うだけはあるようだ。


 「妾もじゃ、子供の世話はじい様に任せる。妾は女子(おなご)と強者にしか興味はないゆえな。そなたはどうするのじゃ?」

 「………………見定める……」


 痩せてはいるが、何だ? そうか、ここにいる者は凡そ人ではないのか……。


 「良かろう。儂としても逸る気が無いではないが、500年待ったのだ。今更慌てることも無かろう」


 大柄な男が先に部屋を出る。出る前に一度青年を肩越しに睨み付けるが、小さく舌打ちをするだけだった。

 続いて豪華なドレスを纏った女が部屋を出る。ドレスに動きが出たせいか、部屋の中を瞬く間に血の匂いが駆け巡る。


 

 痩せた男は顔を上げ青年を見据えるが、それだけで動こうとはしない。

 

 「さてさて、龍王よ。先ずは身を清めましょうぞ。湯に浸かれば身も解れるでしょう」


 立ち上がり青年の前で恭しく頭を垂れながら、老人が進言するのを青年は無表情に見つめていた。

 その瞳は黒く淀みながらも紅々と燃えるように輝いていた。


 


 海風が心地良い。

 潮の香りを乗せてはいるが、街中を通り抜ける間に程よい湿度に落ち着いた風が直人を包む。


 ニースを助け出してから宿に戻り、目を覚ました時には昼前だった。

 質素に見えるベッドは目の端に入る部分や、見えない部分に意匠が凝らされ、玄人の仕事を思わせる。そのベッドではアンナとニースが寄り添ってまだ眠っている。

 直人が起きた時にはティナとランスロットは部屋にはいなかった。

 ランスロットは窓を開けると直ぐに見つかった。宿の小さな庭園で剣を振るっていたのだ。

 昨夜の事を気に病んでいるのだろう。国を離れたとは言え、王女付きの近衛騎士が守るべき王女の盾になることもなく倒されたと聞いた。直人にとっては歴史や物語の世界ではあるが、騎士の誇りというものは何となく解る。親が子を、子が親を守るのと同じなのだ。

 守りたいや守らなければ、ではない。

 守るから守るのだ。


 「ティナはどうしたんだろう……」


 思えばティナの負担を減らしたいと思いながらも、殆どの事柄がティナに頼りきりになってしまっている。

 恐らくは今もまた旅の準備や吸血鬼ヴァンパイア対策に奔走しているはずだ。

 そう考えると先程の心地好い気分もどことやら、直人は苦虫を噛み潰したような表情になった。


 「どうしたの? 苦虫噛み潰したような顔して」


 不意に部屋の入り口から声がした。ティナだ。魔導士というのは気配を消すものなのだろうか?


 「いや、ティナさんにばかり苦労をかけるな、と思って……」


 それを聞いてティナは肩を竦める。


 「またさん付けね。あなた達には旅の準備わからないでしょう? 必要な時には声を掛けるわよ」


 ティナはやれやれと首を振りながら、抱えてきた荷物を床に降ろす。何が入っているのか子供大の大きさの荷袋はパンパンに膨れている。

 身体強化の出来るティナには軽いものだ。


 「何を買ってきたんだ?」

 「色々よ。女には色々必要なのよ。それと疲労回復の薬草ね、魔法石にも限りがあるから、気休めにしかならないけどね」


 へぇと気の無い相槌を打ちながら直人はソファに腰掛けた。

 程よく身体を支えながらも優しい座り心地だ。こういうところにも匠な技が光っている。


 「何だか心ここに非ず、ね。どうかしたのかしら?」


 ニースを助け出してから気が抜けたのか、吸血鬼ヴァンパイアの存在が疎ましいのか、直人にもピンとは来ていないが、恐らくは両方だろう。どうも昨日の晩から身体がモヤモヤとするのだ。


 「さてね。俺は自主練でもしてくるよ。足手まといは御免だしね」

 「ふふふ、そぉ、せいぜい頑張って貰わないとね」


 座り心地の良いソファの感触を惜しまずに、スッと立ち上がり直人はランスロットがいる宿の庭へと向かった。


 庭に出ると丁度ランスロットは座り込み休憩を取っているところだった。

 布製の膝丈のズボンだけを身に付けて、全身に吹き出た汗を拭っていた。


 「あぁ、直人、どうしたのだ? ひ……アンナは目を覚ましたかな?」


 直人よりも二回りは大きな上半身は戦士の身体だ。無数にある傷痕も戦士の証に見える。


 「いや、俺も鍛練だよ。アンナはまだニースと寝ているよ。戦いで疲れてるんだろ」

 「そうだな、昨夜の姫……アンナは勇猛だった。それだけに俺は自分の不甲斐なさをまざまざと思い知ったよ……」


 汗を拭く手を止め空を仰ぐランスロットに直人は何も言えなかった。

 守るべき人を守れず、逆に助けられたのだ。仲間とは言っても主従の関係にあるのだ。直人には想像もつかない。

 黙る直人を見てランスロットは意外にも笑顔を向けた。


 「そなたが落ち込むことは無い。寧ろ私は嬉しいのだ。幼き頃より見てきた姫様が……本当に立派になられた」


 立派になる方向が違う気もしたがランスロットがそれで納得しているなら直人は何も言わない。ただ国は大丈夫なのか、それで、とは思うがこれも心に留めておく。


 「この世界の人達は本当に逞しいな。俺も負けてられないな」

 「ああ逞しいさ。そうでなくては生きてはいけまい。形はどうあれ人は皆何かと戦っているものさ」


 そうだなと直人は相槌を打つ。自分も自分の戦いの為に強くなると改めて思わせる言葉だった。



 あは、あは、あは、見ぃぃいいつけたぁぁああ……あは、あはははは。


 夜に潜み、地に伏せ、幾人の血肉を貪って身体を回復させ、広い港街の中で漸く見つけた、私の獲物……。

 大陸を渡ったかと半ば諦めていたが、昨夜覚えのある魔力を探知した。けしかけた眷族の一人と戦い消耗もしているはずだ。

 身体の傷は癒えても、あの時の心の傷は埋められない。

 餌であるはずの獲物に手を噛まれ、不死である自分に忌々しい死の恐怖を思い出させた(・・・・・・)奴等……。


 「引きちぎり噛み砕き、血肉で一面を染め抜かねば気が収まらん……殺してやる……あは、あはははは、殺して……壊して……はぁあ、ぐちゃぐちゃに……してやる……」


 街を望む高台でボサボサな赤い髪を振り乱しながら虚空に叫びをあげる異様な少女は、周囲の目を気にすることもなく、高台から身を投げた。

 景色を楽しみに来ていた周囲の人間からは悲鳴が上がり、一人の若者が高台の柵から下を除いたが、下には小さく街の屋根と路地が見えるだけで赤髪の少女の姿は見えなかった。

 この昼前の出来事は警備隊も出動し、少女の安否が心配されたが、身を投げた少女が見つかることはなかった。

 

 この日は宿に籠りっきりとなった直人ら一行にもこの珍事が伝わることもなかった。


 

  


 

 


 

 

週一投稿するって決めてたのにぃぃいい


今回は、「置き」的な話ですが、次話から……止めとこ。


最低週一更新!


来週も見てかれるかなっ?


こんな話ですが、楽しんで頂ければ最上です。

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