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ドラゴニック・マナ  作者: ボケ封じ
第一章
33/65

荊棘

ちょっと短いけど……。


33話目です。宜しくお願い致します。

 部屋に入ると正面の窓には木窓がはまっている。外側のガラスが割れただけなのだろう、つまり直人は嵌められたのだ。

 窓から襲撃をかけた訳ではなく、ガラスを割る音で直人の意識を逸らしただけだった。


 自分の不甲斐なさに頭をポリポリと掻きながら苦笑するが、一先ずは皆が無事だった事を心から喜んだ。


 「解呪には成功したと思うわ。呪いの残存魔力も消えてるし、凄い疲れたけどね」


 ソファに寝そべりながら手をヒラヒラとさせて、ベッドを指し示すアンナに礼を伝えて、安らかな寝顔のニースを見ながらベッド脇に腰掛ける。


 「向こうから退いたみたいだけど、また来るかな?」

 

 ソファの前のテーブルにティーセットを持ってきたランスに訊ねる。ランスは険しい顔で紅茶を注ぎながら、間違いなく、と返した。


 「あの吸血鬼(ヴァンパイア)といい、今の襲撃といい、今一つ狙いが読めないな」

 「吸血鬼(ヴァンパイア)は俺達を、さっきのはアンナ達を狙ってじゃないのかな? 俺達を狙う奴らなら今更只の人間を寄越すとも思えないしね」


 紅茶に誘われ直人もソファに腰掛ける。アンナが横になりながら紅茶に手を伸ばそうとしてその手をランスに叩かれる。


 「姫、はしたないですぞ。そうか、どちらにせよ、共に行動すれば共通の敵となるな。しかしあの吸血鬼(ヴァンパイア)は厄介だな」

 「あぁ、前に戦ったヤツは呪いなんて使わなかったぞ。しかもあんな、エ、エロ……」


 若干顔が赤くなるのを自覚して下を向く直人にアンナが目敏くその反応を拾い上げる。


 「あら? 貴族の間ではあんなのよくあるわよ。妾や愛人にするときに呪いをかけるのよ。ま、重罪だけどね。それでも強欲なヤツは館に秘密部屋を作ってそこに愛娼を囲うのよねぇ」

 「そ、そうなのか? 凄いな貴族って」


 座り直して紅茶を飲むアンナがさらっと答えるが、ランスが何やら、貴族とは高尚なる……云々と説教めいて語っているがアンナには聞こえていないようだ。


 「で? 話の続きだけど、良いわよね? 私達も行っても。私の神聖魔法とランスの執事ぶりは証明済みだし。旅は道連れってね」

 「いや、それはやっぱりティナに聞いてみないと。遅いなティナ? まだかなぁ」


 立ち上がってわざとらしく窓に向かい外を確認しようと木窓を開けようとした時に、ランスが素早く立ち上がりアンナの前で身構えた。


 「ふふふ、不用心ね? 入ってこられてから気付くなんて遅すぎるわ。御免なさい直人、大変だったみたいね? ニースは無事かしら?」

 「ティナ?」


 ランスは腰の剣を既に抜いている。直人も振り替えって身構える。


 「私を敵だと思うような事があったと言うことかしら?」

 「ティナ、なのか?」

 「まだ、わからん。済まんが警戒は解けぬ」


 それでもティナは微笑を崩さずに一言呟いた。


 『これでもダメかしら? 思念での会話には偽りを持ち込めないわ。寧ろそういった敵がいたのなら私にとってはあなた方も怪しいのだけれども』

 『なるほど。古代語が使えるのか? 見た目だけではなく素晴らしい才覚もお持ちのようだ』

 

 ランスが剣をしまいティナに握手を求めた、が、ティナはそれを一瞥しただけで応じず、直人とアンナに目線を移す。

 確認を取りたい事を汲み取って直人もアンナも思念での会話に応えた。


 『遅いよティナ、本当に大変だったよ』

 『話は伺いましたわ、魔導士様、私は』 


 ティナはアンナの念話を手で制した。


 「存じておりますわ、殿下。仲間(パーティー)へのご助力も感謝申し上げます。ただ、もう少しご自身の立場を考えられたが宜しかろうと具申致します。大陸を渡れば無事とはあまりにも安直ですわ。現に殿下の身代金誘拐計画までこの街で練られておりますわよ」


 アンナがあんぐりといった感じでティナからの忠告? を受ける。一方のティナは微笑を携えながらも飄々としている。どっちが姫様なのかこの場面を見る限りは誰もアンナとは言わないだろう。


 「そこまで筒抜けでしたか……これは私の考えが足りませんでした。でもこれからは大丈夫なようで一安心ですわ」

 

 そう言い返しながら、暗に連いて行くぞと仄めかしながら直人に近づきその腕に自分の腕を軽く絡める。

 ティナは微笑を崩さない。


 「殿下やそこの騎士様は始まりの神話は御存知ですか?」

 「始まりの神話って、あの幼育課程でのおとぎ話の事?」


 突然替わった会話の内容に今度はキョトンとするアンナ。直人もからめられた腕を解くのも忘れ眉をしかめる。


 「そうです。但し、おとぎ話ではありません。あの神話は伝えやすく出来ている、謂わば簡易版です」


 この世界を創った原初の龍。

 その力は偉大であり、驚異である。

 その力を世界が見失わないようおとぎ話として広められたとティナは言う。


 「原初の龍そのものはもはやこの世界には存在しないと、いえ、この世界が原初の龍であるという学者もいますが、龍そのものはもうおりません。でも力は残っています。それが魔素であると龍の神殿では語り継がれています。そもそも魔素とは何なのか? 魔力へと精錬され、魔術、魔法、と姿を変えてもそれ自体がこの世界から無くなることはありません。しかも、その形造るものは魔力とは限定されてはいません。千数百年前に時の賢者ダイダロスによって編み出された秘法は魔力を結晶化、更に蓄えることにも放出することにも成功しました。魔法石ですね。」


 そこで一旦話を切り見回す。直人、アンナ、ランスはすっかりと聞き入っている。そこでティナは直人を見詰める。


 「ここからは私とマリウス様の憶測ですが」

 「マリウスって龍の巫女の? あなた一体何者なの?」


 アンナが少し興奮気味に口を挟む。ティナはコクリと頷いただけで話を続ける。


 「憶測ではありますが、魔素はあらゆる可能性を秘めています。最近の研究では魔獣化にも多大に魔素が関係していることがわかっています」


 そこでランスが眉間に皺を寄せる。初耳なのだろうか。ティナの話によればこの世からは無くならない魔素。しかし魔素が有る限り魔獣も生まれ続ける事になる。討伐任務の多い騎士でなくても疑りたくもなる。


 「あなた達が連いていこうとしている私達は、いえ、この直人はもしかするとその可能性を秘めています。但し、魔獣如きではおさまりませんが……」


 真顔になったティナの視線はじっと直人に向けられている。恐らくは魔物大量発生(スタンピード)の時に初めて直人が全身で魔素を収集した時に、ティナとマリウスはその可能性に気付いたのだろう。

 再現なく魔素を集める事が出来るかもしれない事が、竜に匹敵する魔化に繋がるだろう事。そして自ら魔素がなくとも無から魔力を産み出す

特異な現象が原初の龍に通じるとティナは考えのだ。


 直人はいまいちピンと来ていないが、どうやら自分が危険な要素を持っていることは解った。

 

 「でも、そんなの、あり得ないでしょ? 人が龍になんて……」

 「そうですとも。姫の仰る通り。確かに直人は武人としても中位くらいには入ると思うが、魔獣や、ましてや龍神と比べるのは些か強引な話ですぞ。我等行動を共にするのが嫌ならば遠回しにではなく率直に言って貰いたいな」


 二人してティナの話は受け入れられない、行動を共にしたくない為の強引な話だとティナに詰めより気味に反論する。

 ティナは一度瞼を閉じて一呼吸置いてから、微笑と共に目を開きアンナとランスを見た。正確にはアンナを見てランスを視野に収めてるといった感じだ。


 「そうね……御免なさい。無駄な話だったわね。あなた達と行動を共にする気は更々無いわ。用心棒が必要では無いし、寧ろそれを求めているのはあなた達の筈でしょ」


 ティナは躊躇なく言い放つ。だがアンナは折れない。


 「なら雇うわ。あなたた……」

 「それもお断り。私達にはそんな暇も無いし、意味も無いわ。縁はあったかも知れないけれどそれこそ私達の旅には関係が無いわ」


 ここで初めてチラリとランスに目を向けるが直ぐにアンナを見据えて、アンナの買い言葉をあっさりと遮断し取り繕う暇も与えない。

 流石にアンナも唸るばかりだった。


 「ま、まあまあ、ニースもまだ目を覚まさないし、陽も落ちた。それに色々あって疲れたよ。先ずは休みたいよ」


 険悪になりそうな空気を読んで直人がお開きを提案すると、アンナはフンと直人の腕を絡め取ったままそっぽを向く。


 ティナがではそうしましょうとニースの寝るベッドへと歩を進めると、ランスも進み出て私が運びましょうというのを、ティナに即答で断られた。


 「直人、旅程の話もあるから部屋で待っているわ」


 とティナは直人に告げ、身体強化を使いベッドからニースを軽々と抱き上げるとそのまま平然と部屋を出ていった。


 部屋にはニースを抱えたティナを見送った呆然とした三人だけが残った。

  


 

少し短くすると週2投下いけるか?


まあ、何となくやれる限りのほほんとやっていきますわ。


次回は/21 0時を予定してます。


こんな話ですが、楽しんで頂ければ最上です。

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