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ドラゴニック・マナ  作者: ボケ封じ
第一章
13/65

練習

リアル同様に、物語も少し停滞気味な感じがする。


13話目です。宜しくお願い致します。

 神殿を出て2日目、丁度アルバ共和国首都ソルまでの行程の中間距離で野営を張った直人ら一行は、魔物大量発生(スタンピード)以来日課となっている稽古をしていた。


 神崎流唐手免許皆伝

 直人の背負ったばかりのこの看板は、こちらの世界ではあまり役立たない。いや、これからの直人には。

 何もない相手ならば充分すぎるほどの実力ではある。

 そこらの武装した野党や一般兵士、自然の獣相手ならばだ。

 だが、この1週間ほどの期間だけで、フォルディスを相手にしているとそれがこの先に待ち受けているであろう困難や敵には通用しない事がハッキリとわかってしまった。

 なので旅に出てからはもっぱらティナに師事されている。

 やはりこちらの世界で通用するかは魔力精練、活用に掛かっているからだ。

 幸いティナはこと魔力に関してはプロ中のプロ、魔導士である。これ程の適任は願ってもない。

 隣に銀髪の少女がいなければ尚集中出来るのだが……。


 もともと師事されていたニースが黙っているわけもなく、当然ティナの講義に参加しているのだが、それは良い、しかしいざ始まった昨日、ことあるごとに、


 「不器用ね」

 「えっ?こんなに簡単なのに?」や

 「結構強いって言ってませんでした?」

と蔑んでくる。ティナも何故かその様子を見守っているだけで注意もしないから、余計に天狗になってるように感じる。

 これがこっちの世界の習得法なのかと我慢したのも1日だけで、今日は文句をつけてやるつもりだったのだが、


 「ん、身体が軽い?」


 気のせいかとも思うほどの、表現しづらい感覚を味わっていた。

 熱を帯びたようでいて、熱くはないが、脳からの身体への信号がダイレクトに感じるような、流れが見えるような不思議な感覚。

 それにティナが気付き


 「ふふ、凄いわね、まだ始めたばかりなのに」


 微笑みを崩さないティナだが、隣ではニースがあわあわしていた。ざまあみろ、だ。


 「ほら、集中を解いては駄目よ、その感覚にもっと集中して、無意識に出来て初めて一人前よ」


 と、チラと離れて野営の準備をしているフォルディスを見やるティナ。

 確かに、乱取り中に見ていた分にはフォルディスはごく自然に身体強化を使っていた。

 しかし、今の直人は集中が切れると、それに合わせて先程感じていた感覚も遠ざかり、幾分身体が重くなったように感じる。

 実際には元に戻っただけなのだが、まるで水の中から上がった時のような気だるさがあった。


 「ふふ、いきなり出来ただけでも抜きん出た才能よ、がっかりする間に修練を重ねなさい、ニースも魔法が使えるだけでは駄目よ、自分を守るためにも身体強化や神経強化は魔法使いには必須の能力よ、魔法を使いながらも攻撃をかわし、攻撃を仕掛けながらも魔法を使うのよ」


 突然向いた矛先に更にアワアワしだしたニースに直人もドヤリ顔を見せる。

 無言の意趣返しだったが、効果は合ったようだ。

 負けないわよ、とニースも右手にシルフを喚び出しながら、身体強化の為に更に集中しだした。

 直人はと言うと、ドヤ顔も忘れてニースの掌の上でヒラヒラと舞う半透明な妖精をマジマジと見ながら、ファンタジーを満喫してしまっていた。


 「あらあら、修練の時間に他に気をやっている暇はないわよ、そんなに魔法が珍しいなら私がお見舞いしましょうか?」


 自分の修練そっちのけでファンタジーの代表に魅入ってしまった直人を戒めるティナは、微笑んではいたが目は笑っていなかった。

 どうやらスパルタ教師のようだ。

 直ぐ様直人は背を正して、馬歩の姿勢になると半眼になると意識を集中させるのだった。


 「そうそう、素直で勤勉な子はお姉さん大好きよ」


 そう言うティナをチラと見ると、やはり目は笑っていなかった……。




 アルバ共和国首都ソルから少し離れた場所にある、小川に設置された古びた水車小屋の中、今はもう使われていないようで、板張りの壁や天井の朽ちて出来た穴や裂け目から、外からの陽の光で舞い踊る埃が光のカーテンのように見える。

 その中で、黒いローブに頭までフードをすっぽりと被った人物が木箱に座って、膝の上に載せた水晶玉を両手で包んでいた。


 「クフフフ、た~のしぃ~た~のしぃ~、脚切って~、腕切って~、お腹開いて、首も切る~」


 木箱に座りながらユラユラと身体を揺らしながら、少女の無邪気な声で物騒な歌声を、小屋の中に響かせていた。


 『機嫌が良さそうだな? 首尾はどうだ?』


 歌を遮って水晶から嗄れた声が響いた。魔法石を通して遠く離れたもの同士で会話を可能にする神器(アーティファクト)だ。


 「クフフフ、暇潰しは順調に進んでるよ~、目当ての子が来るまでに何人殺せるかな~、昨日はね~、少しだけ強いおじ様を、脚の腱を切ってから這いつくばらせてね~、目の前で部下の人達をいっっぱい殺しちゃった。クフフフ、あのおじ様泣きながら、止めてくれ止めてくれ~って言ってたけど、みんなみ~んな殺してあげたよ~」


 その時の光景を思い出しているのか、口の両端を吊り上げながらニマ~っと笑いながら、愉しそうに水晶に話しかける少女。時折おじ様だろうか、しゃべり方を真似するように話していた。


 『事を為す前に注意を引く行動は控えよと申した筈だが? …まあ、良い、少年は何としても手にいれるのだぞ? 魔神もそちらに向かわせる。手足として使うが良い』


 水晶から響く嗄れた声には子供を諭すような感情が乗っているようだ。しょうがない子だな、と。


 『それから~、脚の先から関節毎に~、ザックザック切っていってあげたら~、クフフフフフフ、あぁ、あの顔、あの声、ふぅん、アハぁ、アハ、アハハハハ~」


 少女はユラユラと揺らしていた身体を仰け反らせ、天井を仰ぎ見ながら焦点の合っていない赤い瞳に妖しい光を灯して、笑いながら絶頂に達していた。フードが外れ、隙間からの陽の光を受けて、少女の短く切り揃えられた赤髪がまるで燃えているようにも見えた。


 快楽殺人者は稀に現れるが、少女も正にその代表であった。

 人にとってのSEXへの過程は、少女にとっての殺人への過程と同義なのだ。より激しく、より執拗に、そして残酷であればあるほどに、性への快感へと登り詰めていく。自身への傷さえ愛撫としか感じないだろう。これまで少女に傷をつけ得た者など居はしないのだが……。


 「ハァハァ……まだ来なくて良いんだよ……そしたら、もっともっともっともっと……あぁ、だから……早く来て……そしたら……」


 赤髪の少女は、仰け反ったまま相変わらずブツブツと誰にともなしに呟きながら、そのまま後ろへと倒れこんでしまった。その後も虚ろな赤い瞳でブツブツと何事かを呟いていたが、いつの間にか眠りに落ちた。

 石床の上で、赤子のように身体を丸めて、日が落ちるのを寝て待つのだろう。

 そして、日の入りと共に、サナギから孵化した蝶のように飛び立つのだ。自身の快楽を満たす為だけに……。



 地平に続く草原の中、座禅を組みどこを見るでもなく瞳は半眼、普段の朝の日課ならこのまま夢想へと思念を閉じていくが、今は周囲から魔素を自分の中心に集めることをイメージする。初めての時からは魔素の収集はお手のものになっていた。へその下、丹田に熱い塊が出来上がるのがわかる。収集と魔力への精錬を同時に行い、ロスなくエネルギーとして変換していく。

 これを体外に射出する際に特殊な言霊にのせることで魔術、魔法へと変換するか、体内を駆け巡らせ、純粋な自分のエネルギーとするかで、用途は異なる。

 

 ファンタジーの代表、魔法をぜひ使いたかった直人だったが、言霊に魔力をのせる事が出来ない。

 魔術用に精錬した魔力とは別に、言葉、音の波長に魔力を浸透させ、魔術用魔力と反応させるのだが、魔法使いとしての生まれもっての資質が無ければまず成功しない。というよりも体内で用途の違う二種類のモノを造り上げ、合成することは普通の人間には出来ないだろう。

 これが、こちらの世界でも魔法使いの少ない理由の1つとなっている。


 魔力の無い世界からやってきた直人が、魔力精錬をやってのけるだけでもこちらの世界の住人には有り得ない出来事なのだ。


 そんな数多の事由の中、直人は今体内に精錬した魔力を全身ではなく両腕に集中する。


 熱を持ったかのように両腕の周囲が歪んで見える。

 直人自身も普段の力だけではない、正に漲る力を感じていた。


 「おお……」


 これまでやってきた唐手の修練の中でも感じたことの無い、自分のモノだけではない力を感じ、感嘆を溢す直人。


 腕に漲る力をそのままに、スッとその場に立ち上がり、踵は少し浮かせ、軽く腰を落とした。そのまま左拳を前に出し、それに付き従うように右拳を添える。

 拳は握らず、だらりと下げる。

 空手の夫婦手(めおとで)のように構えたまましばし呼吸を整える。


 少し離れた野営地からニースが夕食の準備が出来たことを伝えにやって来るのを感じとりながらも、神経は自分の中を駆け巡り続ける魔力に向ける。


 一息深目に息を吸い、ゆったりとした動作から腰を更に落とし、視線を地面に向ける。

 脚の先から拳の先に徐々に螺旋を描くイメージで、息を吐くタイミングに右拳を地面に突き刺した。


 自分が向かう先で、上空から岩でも落ちてきたかのような音を聞き、ニースは一瞬身体を硬直させた。

 直ぐに直人が何かをしたのだと思い至り、足早に直人の元に向かった。


 「ち、ちょっと、今のは……」


 なんなのよ、と言い終わらずにその原因を見る事が出来た。


 直人から周囲1m程、地面が放射状にひび割れていた。

 右腕の手首までを地面に埋まらせたまま、直人もニースを見て応えた。


 「や、抜けなくなった……」


 その言葉に気が抜けて、ニースは項垂れてしまった。


 「ホントに何やってんのよ……」


 身体強化をたったの2日で扱えるようになった直人への驚嘆も吹き飛び、目の前で、ウンウン言いながら自分の腕を地面から抜こうとしている異世界の少年に、


 「夕食出来たわよ、先行ってるから」


 至極残念なモノを見るような眼をしながらそう告げると、ニースはクルリと身を翻し、もと来た道をため息混じりに戻っていった。


 「ちょっと待って、ホントに抜けない」

 「身体強化すればすぐ抜けるわよ……」


 1人焦る直人に、チラッと振り返って、それだけ告げるともう何も見なかったとでもいうように、足早に野営地に戻っていった。

 その途中、あ、ほんとだ、という直人の声は聞かなかった事にもした。

 そのあとを駆け足に追い付いてきた直人が


 「や、練習で、やっただけなんだ、力も抜いたし、まさかあんなに刺さるとは、驚きだよな、しかも、何か引っ掛かって、手、抜けないし」


 まだ少したどたどしくも楽しげに話す直人の声はニースには届かなかったが、直人は自身の中で漲った魔力の凄さに興奮気味で、ニースの態度も気にならなかった。


 (何あれ? 本格的に練習始めたの昨日よ? 何であんな……)


 ニースには信じられなかったのだ、いや信じたくなかったのだろう。だからすぐに後ろを向いた。

 自分が幼い頃から、家の手伝いの合間に、たまにやって来るティナに教わりながら修練してきた事を、この異世界の少年は造作もなくやってのける。

 もっと魔力を使えるようになったら?

 魔術の特性があったら?

 それよりも……もし私がこのまま……。

 その先を考えたくなくて、咄嗟にいつの間にか隣を歩きながら、楽しげに話す直人を横目に見た。

 あどけなさをまだまだ残している17才の少年は、今は異国語で話していた。大分興奮しているようだ。

 恨み言の1つも言ってやろうと思っていたニースは、その姿を見て、なんだかどうでもいいか、楽しそうだし、と視線に気付きこちらを向いた笑顔の少年に釣られて、思わず笑顔ではなく、吹き出してしまっていた。

 地面に刺さった手で顔を拭ったのだろう、額やほっぺ、鼻頭に土で黒い線が走り回っていた。

 どうした? という直人の問いに、何でもないわよ、と尚も笑いの吹き出すのを堪えながら目線を逸らすニース。

 なんなんだよ? と詰め寄ろうとする直人をかわしながら、心から笑顔を浮かべながら、何でもないわよ、ホントに、と先に野営地へと駆け出して行くニースの心の中は、もう既に晴れやかなものだった。


 夕陽を浴びてキラキラと光る二人を見送りながら、地平の先に陽は沈んでいく。


そろそろサイドストーリーとか入れてみたいな~。

まあ、ボチボチいきますわ~。

暖かく見守って下さい。

その上で、楽しんで頂ければ最上です。

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