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小さな写真集

秋の終わりに

作者: 空乃 千尋

挿絵(By みてみん)

 まだ幼い頃、よく籔で遊んだ記憶があります。

 近所のお兄さんに連れられて虫を探したり。

 学校の友達と一緒に秘密基地を創ったり。

 振り返れば、沢山の思い出が蘇ります。

挿絵(By みてみん)

 折り重なる緑は眩しい位でした。

 ここは、一番近所の籔です。

 もう、こんな場所もかなり減ってしまいました。

 宅地の裏手にひっそりとあるこの空間が好きだったんです。

 自分が住む世界とは違う何処かへ通じている様な気がして……。

 ほんの狭い空間の中で、そこへの抜け道がないか探しまわった覚えがあります。

 もっとも、その何処かへ行かれたことはなかったのですが。

挿絵(By みてみん)

 随分と冷えた空気の中、背の高い木の陰が伸びています。

 枯れ落ちた葉の絨毯が、柔らかく照らされていました。

 そうして、そんな足元から目線を上げると……。

挿絵(By みてみん)

 木漏れ日が溢れていました。

 光は木の葉を透過し、この空間に見事な色彩を与えています。

 冬は近くとも、暖かいまでの日射し。

 太陽の存在の大きさが、文字通り肌で感じられる様でした。

挿絵(By みてみん)

 そう言えば、この辺りには以前、沢山の猫がいたんです。

 最近は、何故かあまり見かけなくなってしまったのですが……。

 そんな猫について、一つ不思議な記憶があります。

 ちょうどこの籔から、子猫を追って人の家に入り込んでしまった時のことです。

 その家の窓から、白い猫がこちらを覗き込んでいました。

 また他の窓にも、何匹かの猫が顔を出していて……。

 ああ、よく見かける猫たちはここに住んでいたんだなぁと、ふと思い当りました。

挿絵(By みてみん)

 その時、この家の方にもお会いしました。

 2、30才位の女性でした。

 何かを話した様な気もするのですが、内容はまでは覚えていません。

 私が追いかけていた子猫を、優しそうに抱きあげている姿が印象的でした。

 未だに、よく覚えている光景です。

 そうしてその後、何度かその家には赴いたのですが……。

挿絵(By みてみん)

 その女性には、それっきりお会いすることはありませんでした。

 近所で、猫たちの姿はちゃんと見かけていました。

 でも、その家の中に猫を見たのも、思えばその時だけだったのです。

 だから実は、夢の中のことだったのかもしれません。

 今となっては、藪からそこへ通じる道も塞がっており、確認すら出来ません。

 もっとも、もう勝手に人の家に入り込めるような歳ですらないのですが……。

 まだ、ほんの子どもだったのです。

 随分と時間が経って、多くのことが変わってしまいました。

 懐かしいこの場所がまだ残っているだけでも、一つの奇跡なのかもしれません。

 そんなこの景色も、廻る季節の中でまた移ろっているのでした。

挿絵(By みてみん)

 秋の終わりに、随分と葉の減った木々もちらほら。

 枝の間から仰げば、抜けるような青空が広がっていました。

挿絵(By みてみん)

撮影日2015年11月28日

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― 新着の感想 ―
[良い点] こんばんは(^-^)/ フォトエッセイ今回もワクワクしながら拝見しました。 緑溢れる木々と文章が合わさってとても魅力的な内容でした。 私も小さい頃、友達と林の中に秘密基地を作ったりしてて、…
[良い点] 眩しいくらいの緑と、木陰の落ち葉模様は季節を惑わすかのような、そんな風にも見えますね。 木漏れ日に映る葉の冬化粧はどこか淋しげで。 昔居た猫たちは、どこへ行ったのでしょうね。 そして知ら…
2015/12/06 17:27 退会済み
管理
[良い点] 秋の日の光と、木々の影と重なり合う葉の色彩が、ステンドグラスのようにも見えて、凄く綺麗で、見とれてしまいました。 文章も優しくて、知らない家のくだりは、不思議で、本当に異世界に通じる場所…
2015/12/06 02:48 退会済み
管理
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